第12話

 かなり無茶苦茶な運動をしたはずなのにメテオラは体のどこにも痛みを感じることはありませんでした。それはマグお姉ちゃんがメテオラの体にかかっていた衝撃を浮力の魔法を利用した旋回運動によって辺りの空中に分散して逃がしてくれたおかげでした。


 それはまさに飛行術の天才であるマグお姉ちゃんだからこそ可能だったまさに神業と呼べる技でした。


「あ、ありがとうございます。マグ、お姉ちゃん……」


 メテオラはほっと安心して、それからマグお姉ちゃんにお礼を言いました。


 するとマグお姉ちゃんは返事をする代わりに無言のまま、ぎゅっと力強くメテオラの体を抱きしめてくれました。


 メテオラの顔を挟むようにマグお姉ちゃんの大きくて温かい胸の感触がして、それからとてもいい匂いがしました。


 誰もいない二人だけの空の中で、マグお姉ちゃんはしばらくの間、そうしてメテオラの体を抱きしめ続けていました。


 その間、メテオラは少し曲がったままになっているマグお姉ちゃんのとんがり帽子の角度をじっと見つめていました。


 メテオラはそうしてマグお姉ちゃんに抱きしめられながら、頭の中で先ほどしでかしてしまったばかりの新しい失敗の経験を思い出して、自分の魔法使いとしての才能のなさを改めて実感していました。


 ……僕は魔法使いなのに、九歳にもなって、一人で上手に空も飛べないなんて……、こんなんじゃ魔法学校の卒業試験に合格なんて、できっこないです……。


 そんな凹んだ気持ちでメテオラの心は満たされていきます。


 魔法の森の魔法学校にて、見習い魔法使い卒業試験を受ける年を迎えて、最初の月、最初の日。その初っ端から、未だに空が飛べない落ちこぼれ魔法使いであるメテオラの学校生活には、すでに暗雲が立ち込めていました。

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メテオラ(保留中) 雨世界 @amesekai

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