第16話 反転した教室
また今日も、あの階段で睨まれるのだろうか
そう思いながら足取り重く階段を登った。
けれど、そこにいつも待ち伏せしているはずのちえも他の子たちもいなかった。
不思議に思いながら教室へ入ると、目の前に広がった光景に息をのんだ。
ちえと周りのクラスメイトたちが満面の笑みでこちらを向いていたのだ。
「蘭ちゃん、おはよう!」
一斉に飛んでくる明るい声。
何が起こっているのか理解できず私は一瞬固まった。
それでも反射的に「おはよう」と返した。
まるで違う世界に迷い込んでしまったような、
不思議な感覚。
そこから、クラスの人間関係はガラリと変わっていった。
みほ、なぎ、まい。彼女たちは変わらず自然に接してくれた。
けれど、それまで私をいじめていた子たちまで、
何事もなかったかのように声をかけてきた。
「ノート貸して」
「ここ分からないんだけど教えて」
そんなふうに頼ってくることも増え、笑い合うことさえあった。
私は勉強を続けて成績も上がっていたから、
ノートを貸したり質問に答えたりすることは苦ではなかった。
ただ、心の奥ではどうしても引っかかっていた。
ほんの少し前まで、あんなに私を嫌っていたのに。
複雑な思いを抱えながらも、私は流れに身を任せ、その日々を過ごした。
不思議な空間に変わったけど、
私を受け入れ、私も楽しいからそれでいいと思う様にした。
色のない世界線。 凜果 @malony6272
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