第4話

「何ッ!! 祥貴志の!?」

 宇佐が言い終らないうちに公貴怏と名乗った少年は阿修麗に向って再び激しく切り込んだ。

しかし、阿修麗は躰を開いて難なく公貴怏の太刀筋を躱すと、公貴怏を煽るように

「少しは剣の心得もあるようだが、その程度の腕ではまだ私を討つこと叶わぬ」

と言う。

そして尚も執拗に向って来る公貴怏の剣を阿修麗は軽々と躱していく。

それはまるで、どこか楽しんでいるようにもみえた。

「手を貸そうか?」

 脇で見ている宇佐がニヤニヤしながら尋ねた。

「馬鹿なことを、相手はまだ子供、大の大人が二人して掛かったと知れてはいい物笑いの種になる」

阿修麗も苦笑しながら答える。

「バカにしてッ!!」

公貴怏は怒ってこれぞとばかりに阿修麗に向って剣を打ち込んだ。しかしそれも易々と止められてしまった。

そして、公貴怏の剣は阿修麗の次の一振りによって〔ギァン〕という大きな音と共に空中高く弾き飛ばされ、弧をえがくように回りながら大地に音を立てて落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

亢竜の涙(しずく) motomaru @motomaru7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る