智花と清香

春流乃 丸督

じぃとばあ。

智花さとか清香きよかは双子だ。都内の一軒家。じぃとばぁの家に住んでる。両親はアメリカに単身赴任中。


「じぃ、おはよ!」は智花。

「ばぁ、もおはー」は清香。

なんだか、いつも智花はじぃに挨拶。

清香は、ばぁに挨拶。

そして、じぃとばぁが声を揃えて

「智ちゃん、清ちゃんおはよー」と、言うのが朝の儀式。


お母さんと、お父さんとは2年ほど会っていない。LINEは頻繁だし、誕プレもクリスマスも毎年楽しみだ。

ただ、両親は政府系シンクタンクの職員で、寝る間を惜しんで国内や海外と、やり取りしてる。いまも、日本政府から出向して、アメリカのシンクタンクで、2人とも働いている。

両親は智花にも清香にも、自慢の両親だ。でも、毎日花や野菜を一緒に育てて、作って食べるじぃとばぁとは、違ってすこし、なんだか。そう、なんだか照れくさい。そんな感じ。

だって、2人とも中2だから。厨二病にはことごとくかかっている。メイクだ、アニメだ、映画だ、小説だ!が大好きだ。

最近、悪女系のラノベにハマり「悪役令嬢の矜恃きょうじ」に、どハマりしている、2人。

「聴きましたか清香さん」

「何をデスの?智花さん」

「勿論?Mrsの新譜ですわー」

「ダーリンかしら?その熱量だと」

「そうですわ。智花さん。ダーリンほんと素敵で。私もこんな気持ちになりますわー」と、言いつつ清香は今日は、ピザトーストだ。パンに時短だとトマトケチャップと、コーンを載せた。「あらら。大丈夫?清香さん」と、言いつつ、智花は炊き込みご飯に目玉焼き、味噌汁の ねぎをはむはむしていた。じぃと、ばぁは今日のラジオ体操の出来を2人で讃えあっている。え?と、清香は言うと。トマトケチャップと、コーンが一体で塗り広げるのに難儀していた「うっかりです」「ですねー」と、智花はにっこり。釣られて、清香もにっこり。清香はよく、こーゆーミスをする。ちょっと、雑なのだ。

ドアをピンポンする音がした。

そして、ガタガタっと音がして、

昔ながらの家を引き戸を開ける音?

誰だろう?と、4人はちょっと朝からポカンとした。隣の家の親戚が来るにはちょっと早いし(何かあった時のためにと、合鍵を預けている)、だれ?と、思うと。

パタパタと「智ちゃーん!!清ーちゃーんー!パパだよー」「ママも居るよー」と、お父さんとお母さんの声がした。

え、あれ?

いまは、アメリカじゃないの?

と、見ていると。

赤いチューリップと、黄色のチューリップ、2本の花束。チューリップ以外にも、桃や、かすみ草など、品良く纏まっていると、大きなプレゼントを持っていた。「今日が何の日?」「あ、今年は閏年か」「そうーそうだよ、智ちゃんと清ちゃんの四年に一度の誕生日じゃない」そう、智花と清香は2月29日22時25分生まれ。あと、もう少しで3月1日生まれ。

両親は閏年は最低でも、毎年楽しみにしていてくれ、誕生日がない年でも2月28日にはプレゼントをくれる。

ジャーン、と言いつつ。

取り出したのは「あ、ピカソの万年筆!!」と智花。「わ、100色の色鉛筆2つだー!」と清香。両親は2人で使えるものでも、必ず2つ買ってくる。そーゆー、心配りがこの、両親の善性を表してるなーと、双子はいつも、思う。

万年筆はそこまで。でも、100色の色鉛筆はちょっと高価だ。万年筆は智花はロイヤルブルー、清香はくすみピンク。智花は赤いチューリップ。清香は黄色いチューリップが好きだ。

「お父さんお母さんありがとう」と、2人が感極まって言うと「いつも、寂しい思いさせてるからね。ごめんね」と、智花をパパが。清香をママが。先ず、抱きしめてくれ、順繰りに抱きしめたあと、じぃとばぁを抱きしめた。

「お父さん、お母さんもいつもありがとう。これ、東京土産と、アメリカ土産と、いつもの塩麹漬けの魚だよ」と、おじいちゃんにもお土産渡してた。中には双子の好きなチョコやお菓子もあった。ばぁの好きな、ワカメの煎餅もあった。両親は忙しい中来てくれたらしく、、東京観光を、皆で少しして。

「またね!大好きだよ」と、慌ただしく帰って行った。智花と清香は、貰った万年筆と100色の色鉛筆で、両親の結婚記念日の、アートパネルを作ってアメリカに送ったら。結婚記念日は4月29日なのだ。肉の日。両親はとても喜んでくれて、、万年筆のインクを何色か2つずつ、また、送ってくれた。

じぃとばぁが、居るから寂しくないは双子の共通認識。じぃとばぁもまだ68歳だしね。

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智花と清香 春流乃 丸督 @haruno-marumi

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