できることならオフトゥンで寝ていたい。
新佐名ハローズ
ロッキングチェアってあるじゃないですか。アレって誰が使ってるんでしょうね?
ロッキングチェアってあるじゃないですか。アレって誰が使ってるんでしょうね?
私はできることなら
天下無双の向こう見ず、はっちゃけの八ちゃんたぁオイラの事よ、っていう決めゼリフのドタバタ時代活劇。小さい頃におばあちゃんちで見てた気がする。主演の人は誰だったんだろう? 古くてあまり有名じゃない作品らしくて、使ってたいくつかの配信には無かったっぽい。全部のサービスを確かめられないから確実ではないんだけれど。
私の姉は私と真反対な性格をしていてとにかくアグレッシブ。いつの間にか陽気な外国人のお兄さんと結婚して、その人は私の知る限りではコンテンポラリーダンスの界隈ではちょっとした有名人だったはず。どこでどうやって出会ったんだろうか。私にはとてもじゃないけれど接点が持てそうにない。
弟は弟で小さな頃から音楽三昧で、演奏してみた動画がバズったとかで新しい機材を買ってたなぁ。楽器屋さんで知り合ったらしいベース弾きのヒゲダルマさんと時々コラボ動画で共演していたのは少しだけ見た事がある。何だか身内なのに別世界の誰かさんみたいで不思議な気持ちになったっけ。
こうやってつらつらと取り留めのないことを考えるときは、私の場合繰り返し作業をやっている時の気を紛らわせたり(無意識に体が動くような
ぼへ~っと何もせずだらけているのと、なにかがあるかも知れないと意識を少しでも向けているのとでは気の持ちようが違うよね。ほんの微々たるものでも積み重なればそれなりに疲れるし。人ってそういう場合に自然とストレスを逃がす方向へ、上手いこと息を抜くようにできているのかも知れない。
「……ミドリ~、状況は?」
「変化なし。上からなんか来てる?」
「うんにゃ。相変わらず反応は無いね~」
「そう。じゃあ引き続き準警戒態勢で。今日の調理担当ってカレルエだっけ?」
「そだね~。あの子放っといたらまた肉しか出さないだろうから、こっちでも見とくよ~」
「ありがと。……はぁ」
ひらひらと手を降って離れていく気配が消えてから、私は少しの息を吐いて再び何もない向こう側をなんとなく見つめる。どこか一点を見るというよりも広く遠くまでサーチするように、動きや違和感がないかを気を飛ばして感じ取るように意識すると、さらっとした布地をなでるような感触が返ってくる。
ここでどこかに引っかかるような手応えがあればより詳細にその輪郭を際立たせて、何であるかを確かめていく。大抵がデバウサギみたいな脅威度の低い食糧……もとい小動物だから、届く範囲ならさっくりとどめを刺しちゃって引き寄せる。宙を浮いてぐったり動かないそれが向かってくるのは見慣れたとはいえ現実味のない光景だよ。
ぱぱっと異常な部分がないかを視て問題なければ血抜きをして、皮を剥いで下処理して~をほぼ無意識にやる。今は監視がお仕事だからね。こんなものはもう一切触らず遠隔の流れ作業で終わらせられるようになりましたよ。
大体が内臓とかのない丸ごと状態で、そのまま焼くもよし煮てもよし。当然くせはあるけどそこは味付けで工夫する。こんな場所に補給なんてろくに来ない。だから自分達で現地調達してどうにかやりくりしている。
もうこっちに来て何年だっけか。人畜無害だった私でも、こういう血生臭い日常が普通にある世界に順応している。この先どうなるかなんて分からないけれど、それでも無事に今日という日を過ごせたらラッキー。そんなもんなのです。
できることならオフトゥンで寝ていたい。 新佐名ハローズ @Niisana_Hellos
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