第15話 初めての夜と心の揺れ

 祭りの喧騒から離れた公園のベンチで、彩愛の涙を拭きながら抱きしめた。


 指輪を落としたことで落ち込む彼女を慰めてると、ふと視線が横にそれる。


 煌々と光る建物…ラブホだ。


 こんな場所にあったのかよ、と内心突っ込んでると、彩愛が俺の視線に気づいてそっちを見る。


「ば、場所変えるか」って立ち上がろうとした瞬間、浴衣の裾を引っ張られた。


「ん?」って見ると、彩愛が小さなカバンからコンドームを取り出して、顔を真っ赤にして呟く。


「…あ、あげられるもの…あった…。一生に一回だけの…//大事なもの//」って、ラブホを指差す。


 一瞬、頭が真っ白になる。


「え?」って声が漏れて、彩愛を見ると、彼女も目を潤ませて俯いてる。


「…悠翔くんが…幸せなら…私…」って言葉を詰まらせる。


 心臓がバクバクしてきて、祭りの太鼓の音が遠くに聞こえる中、頭の中でいろんな考えがぐるぐるする。


 いやいや、付き合ってまだ3日目だぞ?


 でも、彩愛の真剣な目と震える手を見てると、断るなんてできない気がした。


「…彩愛、本当に大丈夫?」って聞くと、「うん…私、決めたから…//悠翔くんに…全部あげたい…」って小さな声。


 15年の想いが詰まった言葉に、胸が締め付けられる。


「…分かった。一緒に行くよ」って言うと、「ほんと…?」って顔を上げる。


「うん。彩愛がそうしたいなら…俺も」って手を握り返す。


 彩愛が「ありがとう…//」って呟いて、立ち上がる。


 手をつないでラブホの入り口へ向かう。


 2010年の夏らしい、ちょっと古めかしい外観の建物。


 看板に「休憩2時間3000円、宿泊8000円」って書いてあって、カラオケ付きの部屋もあるらしい。


 緊張で手汗がすごいけど、彩愛の手も同じくらい震えてる。


「…入るよ?」って言うと、「うん…//」って頷く。


 フロントでお金を払う時、店員に顔見られるのが恥ずかしくて俯いてる。


 そもそも一応未成年だしな。

心は30だが…。


 彩愛も浴衣の袖で顔隠してて、2人とも無言。部屋に入ると、薄暗い照明とピンクのベッドカバー、壁に古いカラオケの機械。


 少しチープな雰囲気だ。


「…なんか、変な感じだな」と笑うと、「うん…私、初めてだから…//」と彩愛が呟く。


「俺もだよ。緊張するな」

「え、悠翔くんも?…良かった…//」


 ベッドに座って、しばらく無言。祭りの余韻で耳がまだ賑やかだけど、ここは静かすぎて心臓の音が聞こえそう。


「…彩愛、後悔しない?」

「うん、しないよ。悠翔くんと一緒なら…幸せだから」と、目を潤ませる。


「俺もだよ。彩愛がいてくれるなら」って言うと、そっと抱き寄せる。


 浴衣の肩がずれて、彩愛の肌が少し見える。


「…好きだよ」って呟くと、「私も…大好き…//」って返してくる。


 顔近づけてキスすると、「ん…//」って小さく声漏らして目を閉じる。

祭りの花火より熱い何かが胸に広がる。


「しゃ、シャワー浴びてくる!//」と、急いでお風呂のほうに行く彩愛。


 そうして、しばらく経ってから彩愛が出てくる。


「つ、次どうぞ…//」

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818622172149649856


 そうして、俺がシャワーを浴びる。


 色々処理してから、俺もベッドに行く。


「…いい?」って聞くと、「うん…//」って頷く。


 緊張からコンドームのパッケージ開ける手が震えて、彩愛が「私、やる…//」って手伝ってくれる。


 そのまま寝巻きを脱がせて、初めての肌の温かさにドキドキする。


「恥ずかしい…//」って彩愛が顔隠すけど、「綺麗だよ」って言うと、「やめてよ…//」って照れる。


 ゆっくり進める。

痛がる彩愛に「大丈夫?」って何度も聞くと、「うん…悠翔くんが優しいから…平気…//」って笑う。


 ぎこちない動きと緊張の中、2人で何度も「好きだよ」って言い合う。


 終わった後、汗だくでベッドに並んで寝転がる。


 彩愛が「…15年の想い…叶っちゃった…//」って涙ぐむ。


「俺も幸せだよ」って頭撫でると、「うん…ありがとう…//」って俺にしがみついてくる。


 薄暗い部屋で、カラオケの機械がチカチカ光ってて、2010年の夏らしい変な安心感がある。


「…リストの裏ページ、叶ったな」って言うと、「え、知ってたの!?…恥ずかしい…//」って顔隠す。


「でもあれだけじゃないでしょ?もっとすごいこといっぱい書いてた。今度、叶えようね」って笑うと、「もう…悠翔くんのバカ…//」って頬膨らませる。


 ◇


 朝、窓から差し込む光で目が覚める。


 彩愛が隣で寝息立ててて、浴衣が乱れてる姿にドキッとする。


「おはよう」って起こすと、「ん…おはよう…//」って目をこする。


「昨日、大丈夫だった?」って聞くと、「うん…ちょっと痛かったけど…幸せだったよ…//」って顔赤くする。


「ありがとうな」って言うと、「ううん、私がありがとう…//」って笑う。


 気恥ずかしくて、「シャワー浴びるか」って言うと、「うん、一緒に…//」って提案されて、またドキドキする。


 2人でシャワー浴びて、服着て部屋を出る時、彩愛が「…また来たいね」って呟く。


「おお、マジか?…エッチだな…//」って冗談言うと、「え、エッチだよ…//でも、頑張る…//」って笑う。


 外に出ると、朝の空気が涼しくて、祭りの片付けしてる人が遠くに見える。


 手つないで駅まで歩く。


「これからもずっと一緒にいたいな」

「うん、私もだよ。悠翔くんとずっと…//」

「約束な」

「うん、約束!」


 駅で別れる時、「昨日、最高の誕生日だったよ。ありがとう」って言うと、「うん、私も幸せだった!また明日ね!」って彩愛が笑う。


 軽くキスして、「おう、またな」って手を振る。


 家に帰ると、母さんが「遅かったねえ。まさか泊まりとはねー?祭り楽しかった?」ってニヤニヤ。


「うん、デートだよ。最高だった」って答える。


 部屋でベッドに寝転がると、彩愛の涙と笑顔、昨夜の温かさが頭に残る。


 ガラケーにメール来て、『昨日、ほんと幸せだったよ。また明日ね!大好き!』って書いてある。


『俺もだよ。ありがとう。大好きだよ』って返した。

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#15年片思いチャレンジしましたが振られました。その後、事故死したはずの俺は15年前にタイムスリップして、別の人と恋をする。 田中又雄 @tanakamatao01

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