「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」【KAC20254】

郷野すみれ

第1話

あの夢を見たのは、これで9回目だった。


1回目


 私は、あの人に告白する。


 帰り道が一緒の方向でよく一緒に帰る、仲の良い男友達に。


「私、あなたが好きです! 付き合ってください!!」


「えっ⁈」


 びっくりして起きた。私は、そんな意識したことなんてなかったのに。


「今日、まともに顔見られるかなあ……」


2回目


 私は、あの人に告白する。


 最近、距離が縮まってたまに夜とかに通話をするようになった、仲の良い男友達に。


「ねえ、聞いて。私、あなたのことが好きなの」


来夢らいむ〜。早く起きなさい!」


 お母さんの声で目が覚めた。寝る直前まで彼と通話していたことが原因だろう。少し寝不足かも。


「起きたー。今からそっちに行くー」



3回目


 私は、あの人に告白する。


 他の友達とも一緒に行った夏祭り。クライマックスの花火が割れる瞬間。


「あの、私、朝明ともあき君のことが、好き」


 寝汗で目が覚める。


 昨日学校で、普段一緒にいるメンバーと夏祭りに行く約束をしたからだろうか。


「浴衣、買ってもらおう」


4回目


 私は、あの人に告白する。


「バレバレだって〜」


「絶対いけるから!」


 周りの声援を胸に、クラスの面前で。


「ずっと好きでした。付き合ってください!」


 目覚まし時計がけたたましく鳴り、一気に覚醒した。


「心臓に悪いって」


5回目


 私は、あの人に告白する。


 一緒に話しながら、学校の裏庭まで誘き寄せて。


「好きなの。付き合ってください」


 ぼんやり、目が開く。喉が渇いたらしい。


 台所に水を汲みに行くと、十五夜の月がカーテンの隙間から煌々と輝いていた。


6回目


 私は、あの人に告白する。


 向こうの誕生日に、誕生日プレゼントを渡しながら。


「これからもずっと、朝明ともあきの誕生日をお祝いする立場でいたいんだ。付き合ってください」


 屋根に打ち付ける雨の音に起こされる。もうすぐ誕生日らしいから、プレゼント何にしようかな。


7回目


 私は、あの人に告白する。


 街にクリスマスソングが流れる中。二人きりでのデート中に。


「私を彼女にしてくれませんか」


 くしゃみをして起きた。最近の朝晩は冷え込んでいる。


8回目


 私は、あの人に告白する。


 バレンタインデーにチョコを渡しながら。


「これ、本命チョコなの。ホワイトデーまででいいから返事が欲しい」


 鼓動がうるさい。寒いのに暑いような変な感じがして、起きた。

 そういえば、私、熱を出していたんだった。


9回目


 私は、あの人に告白する。


 もう二度と会えないわけではないけれど、進路が違って会うことは少なくなる、卒業式の別れ際に、人気の少ない廊下で。


「ずっと前から好きでした」


 感情が昂って、涙が頬を伝う。その冷たさで目が覚める。


 これで同じ夢を見たのは、9回目。10回目は現実にしてやるんだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」【KAC20254】 郷野すみれ @satono_sumire

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ