未来のネットショッピング

大田康湖

未来のネットショッピング

 俺はパソコンのモニターをのぞき込んだ。動画の画面には、スーツ姿の中年男性と女性アシスタント、そして白っぽい横長のタンスが映っている。

「天下無双ネットショッピング、司会の英田えいたと」

「アシスタントのアイコです」

 英田がタンスを指し示す。

「本日ご案内するのはこちらの『布団ダンス』でございます。押し入れがないご家庭でも、お客さま用の布団を用意しておきたい、季節ものの寝具をしまっておきたい、そのようなご希望にお応えしました」

「確かに予備の布団があれば、急な泊まり客の時も安心ですね」

 アイコが笑顔で応じる。英田は観音開きの扉を開けた。

「通気性の良い桐すのこを敷いておりますので、湿気にも強い作りとなっております」

「それは本当に心強いですね。上の段はどうなっているんですか」

 アイコの質問に待ってましたと言わんばかりに、英田は上の扉を開けた。

「なんと上の段は、押し入れ兼ベッドとなっております」

「これには22世紀のネコ型ロボットもびっくりですね。試してもよろしいですか」

「お待ちください」

 英田はアイコを遮ると、タンスの横のボタンを押す。途端に、タンスの扉の一部が飛び出した。

「下の扉がステップに変化するんですよ」

 アイコはステップを上がって中に入ると、敷かれた布団の上に横たわる。アイコの持つ小型カメラを通して、内部が映し出される。

「うわあ、中はタンスとは思えないほど広いですね。この枕の横のボタンは何ですか」

「よくぞ聞いてくれました。このボタンはタンスの内部に立体映像を照らし出し、お客さまのお好みの音楽で目覚めるよう設定できます。アイコさんのお好みは」

「では、ダンスミュージックで」

 アイコがボタンを押すと、天井で立体映像のミラーボールが回り出し、たくさんのトリの降臨が始まった。トリがくちばしを開くと軽快な音楽が流れ出す。

「『ジンギスカン』ですか。レトロミュージックがお好みなんですね」

「天下無双といえばジンギスカンですものね」

 アイコが起き上がると、音楽と映像が止まる。降りてきたアイコを見ながら、英田が話し出した。

「本日はこの『布団ダンス』を定価10万円のところ、8万円でご提供いたします。天下無双ショッピングサイトから契約すると、12回ローンの手数料割引サービスもございます」

「皆様のお申し込み、お待ちしております」

 頭を下げる二人を見ながら、俺は腕組みをしてうなずいた。

「『未来のネットショッピング』というお題でAIシミュレーションさせてみたけど、なんか今ひとつだな。でもレポート締め切りは明日だし、これでいくか」

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