三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」

シンシア

義眼のトリ

 トリの降臨。丸々としたボーリング球ぐらいの大きさの鳥が、俺の引きっぱなしの布団の上に突然現れた。閉じられた窓は自身が侵入経路ではないことを主張しているようなので、まさしく降臨したと表すほかなかった。


 ゲームで遊ぶのもほどほどにして、そろそろ眠ろうかと思った矢先のできごとだ。


 RPGゲームのやり過ぎか。目を何度か擦った後、目の前の光景を確認するも状況は変わらない。トリは布団の踏み心地を確かめるように足を動かすと首を傾げた。ぺたんこで悪かったな。


 どうしてトリが降臨したのかを考えてみる。パッと思い当たる節は二つ。


 一つ目はゲームで沢山の鳥類系の魔物を討伐していること。鳥というかエミューによく似たモンスターを毎日討伐して経験値にしている。様々な地方のエミューを6回の連続攻撃で切り刻んでいることに対する祟りか。


 二つ目は今晩に焼き鳥を食べたこと。両手に串を持ちながら交互に貪り食らった。それはもう信じられないぐらいに腹が膨れるぐらい食べた。流石に2本食いは行儀が悪かったのか、単に一回の食事で鳥を食べすぎたことによる幻覚を見ているのか。


 どちらにせよ。トリには早く布団から立ち去ってほしいので追い払うことにした。窓を全開に開け放ちトリの逃走経路を確保する。それから、そっとトリに近づく。よく見ると片目を閉じていた。開いた方の目はポロッと取れそうなほどに大きく、テカッとしている玩具のような質感に思えた。


 体は橙色。信じられないほどに綺麗な色。その羽毛の下にはどんなに美味なお肉が隠されているのだろうか。あんなに焼き鳥を食べた後だというのに涎が垂れてくるようだ。俺は気がつくとテーブルからテレビのリモコンとレコーダーのリモコンを手に取り、トリへ襲い掛かっていた。アリクイの威嚇のように腕を広げ、リモコンを交互にトリヘ振りかざす。


 トリに攻撃を与えるはずのリモコンはただの布団叩きと化すばかり。パンパンパンとリズミカルな6回こうげきを踊るようにトリは躱す。


 リモコンを振りかざす度に段々と片眼の瞼が落ちていく。もう片方は痛いほどに開いていく。そして、口に広がる焼き鳥の記憶。


「こりゃあ、うっめえな!」


 俺はそう叫んでいた。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」 シンシア @syndy_ataru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ