KAC20254 真実は闇の中に。

久遠 れんり

ある男を襲った陰謀。注意…… これはラブコメです。

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」


 とは、買った瞬間に下がる株たち。

 俺は思った。これは陰謀だと……


 これは、あるトレーダーの話。

 無論、何億も稼ぐ者達ではなく、少ない小遣いを駆使してちまちまと買っている、どこにでもいる一人のサラリーマン。


 トレーディングとは、株などの売買をする人達のこと。

 動画サイトやSNSなどで、大ぴらに億り人と呼ばれる成功者の話が、世の中にばら撒かれている。


 ある人は、なんとなく買っていたら、数年経って勝手に十倍になっていたと吹聴し、簡単よ。などという。


 またある人は、安値で買って高値で売るんだよ。それができれば誰でも勝てると豪語する。なのだ。


 そして、ずる賢い者達は、必勝法を売りつけ。あるものは資産を預けてくれれば何倍にもして返すと、獲物を集める。

 過去幾度もニュースになって来た。



 かれは、職場の先輩が飲み会で言っていた、ある一言に飛びついたのが切っ掛けだ。


「聞いてくださいよ先輩。俺、小遣いがまた減らされるんですよ」

「まあ仕方が無いだろう。米も野菜も、物価がすべて上がっているが、俺達みたいな中小企業じゃ給料は上がらんしな。ヤル気を出して、昇級テストを受けて、親会社勤務でも狙うか?」

 そう言って揶揄われる。


 地方の系列採用で、親会社に行けるのは旧帝国大学出身者が原則。希望は出せるが、合格した人間は過去誰もいない。


「そう言うのを、時間の無駄って言うんですよ。パチンコも勝てないし、競馬は当たる気がしないし、ネットカジノは違法だし…… 唯一、競艇で少し勝つくらいですけどね」

「ああ競艇は、六艇だから百二十通りだもんな。多少は当たりやすいのか?」

 先輩は、なるほどと感心をしてくれた。


「先輩も給料が安いのに、よく飲みにでてますよね。やっぱり共稼ぎで、正社員二馬力は良いですよね。家はまだ子どもが小さいから無理だしな。一番金が掛かるのに……」

「馬鹿野郎。学校に行きだしてからの方が、圧倒的に金は掛かる」

「あれ? 無償でしょ」

「それでもだ……」

 そういって叱られる。


 だけど、ふと思う。

「だけど、それならなんで余裕が?」

「あー、まあそうだな。面倒ごとになるから会社では言うな」

「はい」

 そう言うと先輩は、スマホを取り出す。


「これだ」

 見せてくれた画面には銘柄という文字、そして見知った会社名と数字。

「なんすかこれ?」

「個別株だ」

 そう言ってにんまり。


「あー、NISAとか、今流行ってますもんね。お金持ちの道楽でしょ?」

「違う。銘柄によっては庶民の味方だ。かつての電電公社だ。見ろ。一株百四十七円だ」

 それを聞いて驚く。なんか昔の、騒ぎになったニュースを集めた番組で、見た記憶がある。


「えっ? 昔百万とかなんとか言っていませんでした? なんか親父がしみじみ言っていた気がしますけど」

「そうだ、今は希釈もあり、これだけで株主になれる。まあ実際は百株単位で購入だから、一万五千円くらい必要だがな」

「へーそうなんすね。それで?」

 そう言うと、なんか別のアプリが立ち上がる。


「これが、俺の資産管理アプリだ」

 そう言ってにんまり。なんか右肩上がりのグラフ。


「えーと、百五十万円?」

「そう、やっとここまで来た。これで大きく稼げる」

 画面を見ながら、嬉しそうな顔を見せる。


「元は、幾らだったんですか?」

「毎月の小遣いの中から、余った分を捻出した。最初の頃は昼飯を抜いた」

 そう言って、鬱陶しいくらいのどや顔。


「やってみろよ」

「あーまあ。考えておきます」

 そう言った彼だが、NISAのこともあったし、口座を開設。


 ある日競艇で万舟券まんしゅーけんを当てて、それをつ込んだ。


 すると、その金額で買える株券を適当に買ったら、いきなり三倍くらいに上がってしまった。


「おおっ? すげえ」

 そこから彼は、昼飯を抜き、勤務の合間にも、スマホを見る生活へとハマっていった。



 そんな彼だったのだが……

「畜生まただ」

 それは、最近になって、幾度も繰り返される事実。


「どうして俺が買うと株価が下がるんだ」

 それは、珍しい事では無く、株の売買をしていれば、誰しもが経験し、涙する話し。

 小さな会社で真面目に働き、ささやかな家庭を必死で守る彼。損切りと言って、下がったときに被害が大きくならない様にする手法があるが、それも積み上がれば大きな損となる。


「畜生、誰か俺を見張っていて、損をさせようとしているんじゃ無いか?」

 そんな事をつい考えてしまう。


「バカだな、誰でもそう言うときはあるさ」

 そう言って、先輩が笑っていた。

 先輩は信用買とやらを始めて、大きく勝っている様だ。


「畜生」

 夜中、ベッドの中で涙で枕を濡らす日々。



 別の部屋では奥さんが子どもを寝かしつけながら、誰かに電話をしていた。

「ええ、家の馬鹿が買った銘柄は、転送した銘柄です。売りでお願いいたします」

 電話を切った奥さんは、にやりと笑う。


「ふふっ、これで破産でもしてくれれば、あの馬鹿の有責で離婚。あの人と一緒になれるわ。子ども達も元気だし…… 楽しみ」


 誰もが、思った陰謀論。

 小市民相手だからと、本当に組織が動いていないと言い切れる人は居ない……


 あなたの奥さんも、闇の組織に……


 信用をして、一生懸命守ろうとする家族は、本当に大丈夫ですか?

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KAC20254 真実は闇の中に。 久遠 れんり @recmiya

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