みんな、リィンカーネーション。

るかじま・いらみ

 みんな、リィンカーネーション。

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 他人に成り変わる夢。

 変わる人は毎回違う。

 1回目は母で2回目は祖父だった。

 3回目は友人で4回目は担任だった。

 だからこれはテレパシーのようなもので、周りの人の心を読み取って夢を見ていると思った。

 ところが5回目は小さな男の子で、それが一年後に生まれた弟だと分かって困惑した。

 6回目は家の中で寝そべる犬だった。

 半年後に父がもらってきた犬を見て、この子かと驚いた。

 予知夢かと思っていたら、7回目は小学生の女子で、昭和の住宅に住んでいた。

 8回目は年とった男性で、夜の空襲で必死に逃げていた。


 周囲に相談し、ネットでも調べまくって、出した仮説は『この夢は全て自分の前世か来世ではないか』ということだ。


 母や弟が自分の生まれ変わりと考えるのはおかしいかもしれないが、人と同じく宇宙も輪廻転生しているらしいから、同じ時間軸に自分の生まれ変わりがいても変ではないと思う。

 転生した宇宙で何度もが生まれ、あるときは私の母に、またあるときは私の弟になる。

 そう考えると父も母も弟も、祖父も今は亡き祖母も、友人も先生も、ペットでさえも、みんな自分の生まれ変わりではないかと思えてきた。


 誰かは何十回目の私の前世で、また誰かは何百回目の私の来世。


 いやひょっとすると、この世の全ての生きとし生けるものが、何回何十何百何千何万何億回目の私かもしれない。


 9回目は車を運転する男性だった。

 私の家の近くまで来たところで、急に犬が飛び出してきた。

 あわててブレーキを踏む。

 が悲鳴をあげる。

 罪悪感で震えながらドアを開けた。


 夢から醒めて飛び起きた。

 これは、これから起きる出来事だ。


 二日後、犬が玄関を勢いよく出た。

 車が走って来る。

 体が勝手に動いて犬をかばった。


 ブレーキ音が響いた。



 ギリギリで車は止まっていた。

 車から顔面蒼白の男性が降りてきた。


 大事に至らなくてホッとしたが、轢かれていたら相手の男性を許せるだろうかと思った。

 もし自分が轢かれていたら、母だった、弟だったら……。

 許せるわけがない。

 それがたとえ、かつていつかの私だとしても。



 10回目、知らない町で知らない女性になっていた。

 凶器を忍ばせ、男をつけ回していた。

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