EP⬛︎:偽物と俺



 【何死んだ気になってんだ?】


 と、見た目を声も何もかも同じ…まるでドッペルゲンガーの様なもう1人の自分ステイ・セントに、脈絡もなく問われたらどう思う?

 俺は急にそんな事言われても訳も分からずこう言うと思う。



 

 「……………えっ?」


 【えっ?じゃねーよ。だ・か・ら、何死んだ気になってんだって】


 いやいや、死んだ気っていうか……本当に死んだじゃん俺。


 というか、何だここ?

 どれだけ続いているかわからない程広く、だが動けはしない真っ暗な場所。


 そして………目の前にはもう1つ、ステイ・セントの姿があった。


 「…………」


 【何黙り込んでんだよ】


 「いやっ………マジで状況が意味わかんなくて」


 【まぁ……そりゃそうか……うーん…そっだなー、何から言えばいいか……】


 目の前にいるもう1人の俺はそう悩む様な仕草をすると、いきなり動けない俺に対し馴れ馴れしく肩を組んできた。


 

 「っ…?」


 【………お前、まだ死んでねーよ】


 「は?」


 【だから何回も言わせんなって!死んでねーんだってステイ・セント!】


 「いやいやそれは無い無い、俺はさっきアイルに殺されたし……………あっ、また異世界転生とかする感じ?」


 【いやちっげーよ、何だ異世界転生って?】


 転生の事を知らないのか?

 

 「………じゃ、じゃあ死んで無いって…」


 【あぁ、だから言ってんだろ。ステイ・セントは死んで無いってな!】


 「………………………………………なんで?」


 俺がもう1人の俺から死んでいないと聞き、短絡的な疑問を持つのは当たり前の事だった。

 確かに俺は一度、異世界転生という形ではあるが生き返った。それは奇跡であり運命だと思った。

 だがもう1人の俺は転生うんぬんの事は知らなそうだった。

 つまり………いいのだろうか、この怪しくも馴れ馴れしい得体の知れないもう1人の俺の言うことに希望を持ってしまっても……。


 ステイ・セントは生きているということに……。



 【何でって言われたら…………いや、覚めてからのサプライズだな】


 「?……とっ、兎に角。俺は死んで無いんだな」


 【だからそう言ってんだろ、さっきから】


 「……………ッ」


 【………嬉しくねーのか?】


 「………わかんない」


 【わかんない?…何言ってんだお前、普通死んで生き返るってなったら射精もんだぞ】


 俺もそれに関してはもう1人の俺に同意だ、1回生き返ってるし。

 そして普通はそうなのだろう……が。


 「………俺はこの人生、短かったけど……最後に満足して死ねたから……そんなに嬉しくないんだと思う」


 【ハァ?……好きな女アイルに殺されて満足ってか?………………………ふざけんなよテメェ!!】


 「っ!?」


 今までの態度とは一変、もう1人の俺は額に血管を浮かべるほど激昂した。


 「なっなんだよ、別に…

 【良くねーよ!!良いわけあるかッ!!お前、覚えてねーだろ。昔俺と1回会った事】


 「…………?」


 【まぁだろうと思ったよ。いいかもう1回、最後に1回だけ言ってやる………。

 俺はお前だ!ステイ・セント!】


 「お前が俺?」


 【あぁ】


 「まぁ確かに……見た目そっくりだしな…」


 【そういうコトじゃねーよ!俺はお前だ!ステイ・セントなんだよ!!

 あっ、それと……お前、さっき転生とか何とか言ってたよな……】


 「あっ……あぁ」


 【カハハッ……そうかそうか、そう言う事か……納得したぜ。

 お前が俺の体に転生とやらしたせいで俺はこんな暗い中ずっーと引き込まされてたんだな…】


 「…?」


 【訳わかんねーみてぇな面してんじゃねーよ。良い加減察しろよ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】


 「ッ!…なっなんで俺の名前!?」


 もう1人の俺が口にしたのは前世の……この世界じゃ誰も知るはずが無い名前だった。


 【あ〜?まだ分かんねーのか?】


 「…………あぁ」


 【お前は!俺の体に転生とかしやがって!ステイ・セントの体を乗っ取ったんだよ!!】


 「は?」


 【お前のせいで本物の俺はこんなクソみてぇな所にずっといたんだぜ……なぁ分かるか……偽もんのステイ・セントさんよぉ!!】


 「…………うっ……嘘なんだろ……」


 と、言葉で言ってみたものの俺は納得してしまっていた。


 異世界転生……地球で死んだ者が異世界に飛ばされて楽しいセカンドライフを送るという……建前。


 本来なら目の前にいるもう1人の自分がシーラン・セントの息子として生活したのだろう、だが俺が異世界転生したせいでこいつの自我が魂が……押し潰されたんだ。


 【ハッ…別に嘘だと思ってもらっても構わねーよ。

 事実は変わらないからな】


 「じゃっ……じゃあ俺はお前の人生を……」


 【奪った……しかもそれだけじゃなく終わらせたんだよ…この人殺し!】


 「ッ…………で、でもさっきお前は言ったよなっ。俺は死んで無いって」


 【あぁ、言ったな】


 「じゃ、じゃあ………結果的には終わって無いん……だろ」


 【……あのなぁ……お前マジで嫌いだわ。大嫌いだわ。

 そんなの結果論だろ、俺を死なせた事には変わりねーんだよ】


 「……………そう……だな。わるい」


 【いーよ、いーよ。だって死んでないもんッ、に………カハハハッ】


 「………………」


 何だこいつ……キモいな。


 【……とまぁ……話は色々ごっちゃになったが、結論こうだ。

 お前は俺からステイ・セントの人生を奪った。

 そして死なせたが、実際のところ死んでいない。

 ……う〜ん……やっぱこうしてみるとお前クソだな〜。俺が損だけしてる。これは不平等だ、実に】


 「……って言われても、俺はどうしようも出来ないぞ」


 【そうそう、そうなんだよ。結局この後ステイ・セントが目覚めてもその体の主導権はお前の物だし、俺は何も出来ないんだよ】


 「…………ハッ。なんだそれ、じゃあお前は何の為に俺の中にいつまでいるんだよ?」


 【あぁ?んなの本当にお前が死ぬまでだよ、当たり前だろ。こっちはなァ…消えたくてもなぁ…消えれねーんだよ。

 この暗闇の中で1人、お前の心の奥でずっと観てた。

 そして、お前が幸せを味わう度…いつも思った。

 『死ね』って】


 「虚しい奴だな。本物のステイ・セントは」


 【あぁそうだよ俺は虚しいんだよ、寂しいんだよ。

 14年間、この真っ暗な空間でただ1人。俺じゃない俺の人生を観続けてきた………お母さんと過ごした幼少期、アイルとの恋、ステゴロ部での青春……どれも観ることしかできなかった……。

 本来なら、俺が味わうはずだったものだったのに……】


 「…………」


 【なぁ……これから俺は何をすればいいんだ?

 またこの先ずぅーーーっとお前の人生を観続けるしかないのか?

 嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……嫌だ!そんな何も無い人生……死んだ方がマシだ!

………………と、思わないか?】


 「そうだな……」


 正直、驚きはしたものの…どうでもいいな……。


 【ハッ…と、俺がこんな事を言っても、お前は内心『どうでもいい』と思ってるだろ】


 「………あぁ」

 

 【やっぱりッー!伊達に14年一緒にいただけあるだろう。カハハッハ!

 …………あっ……そういえばお前、今日から生きる希望あんの?】


 「あぁ?……あるに決まって………」


 【ん?どうした?「あるに決まって」『る』のかい?『ない』のかい?どっちなんだい?】


 「あっ……あるに決まっ…………………無い」


 【うんうん!だよねっ無いよね……だって……

 アイルとはもう一緒に兵隊になれないんだからー!】


 「……ッー!」


 そうだ、普通に考えればごく当たり前の事だ。

 アイルはを殺した……つまりは殺人犯。罪人だ。

 罪人が王国の兵士になれる…なんて事、子供だからってある訳ない。

 日本の様な少年法もこの世界には無いし、死に対する価値観も地球とは全然違う!

 最悪アイルは人殺しとして処刑されるかもしれない。処刑が免れたとしてもあるのは牢獄での暮らし。

 この世界は罪人は家畜以下という認識を持たれている。

 アイルは牢獄に入れられたら否や……正義達に陵辱されるだろう…………死ぬまで。

 ダメだ…それはダメだ……そうなってしまったら俺も死ぬ。


 そして何より……もう既に、そうなる事が確定してしまってるんだ。



 【そーだぁ!このまま起きてもそこには希望も愛も無いんだぜ。

 …………なぁ、⬛︎⬛︎。起きたらすぐ死ねよ。俺の為にもお前の為にも、もう生きてるだけ苦痛だろ。

 だったらもういいだろ、転生して楽しい異世界ハッピーライフ!……何てのは他の誰かがやってくれるよ。

 なっ、一緒に死のーぜ、ステイ・セント。一緒に死んでくれる人がいるだけお前はだよ】


 「…………うっダメだアイルっ……俺は…お前がいないと……幸せを………」


 【カハハッハッハハハー!!

 良いねー良いねーその今にも泣いて喚いてしまいそうなクシャックシャの面!自分の顔だから余計に笑えるぜ!カハハッ】


 「…………ダメだ…」


 【そーだよ、もうとっくにダメなんだよお前は!だからさっさと死ねよ!!!】


 「ダメだ………ダメだダメだ……アイルッ…俺は…」


 【ほらっ死ねッ!!死ねッ!!死ねッ!!死ねッ!!死ねッ!!シネー!!】


 「アイル……俺が……」


 【死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!死ーねッ!!】



 「今度は俺が………………………………助けなきゃ」


 【死ッ……………】


 「今度は俺がっ!アイルを…………幸せにするんだっ!」


 【冷めるなー……………まぁ好きにすれば】


 「あぁ、好きなんだ……アイルが。この世で1番」


 【チッ…あークソクソクソッ!!…大人しく死んどけよそこはッ!】


 「……もう行くよ。ステイ」


 【はいはいどうぞー。早く逝ってくださいな〜】


 「…………」


 【…………あっそうだ。最後に教えといてやるよ。

 俺はさっき「何も出来ない」って言ったけどなー……たった1つだけ出来る事があるんだよ】


 「………………なんだよ」


 【『思う』ことだよ】


 「おもう……?」


 【あぁ、俺はこれからずぅーっとずぅーっとお前が不幸になれば良いと思う。痛い目を見れば嬉しいと思う。寂しい思いをすれば気持ち良いと思う。悲しくなれば楽しいと思う。

 ………他人の不幸は蜜の味!

 お前が不幸になればなるだけ!観てる俺は楽しい!嬉しい!誇らしい!!

 だから俺は!お前が不幸であり続ける事を思う!想いこがれる!!

 その『思い』はいずれ!必ず!重さを持ち形となりお前を苦しめるんだ!

 わかったか!ステイ・セント!!

 わかったらさっさと行け!!

 俺の重い思いを持ってっ!


 これからがお前にとって糞人生バツライフだ!】



 

 「………だったら俺はお前の『おもい』を背負ってでも、俺なりの幸せな人生ハッピーライフをおくってやる」

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バツライフ a.k.a【STAY・セント】 The kid 王 @373919

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