夢かと思ったらアメコミ転移だった

ムネミツ

夢かと思ったらアメコミ転移だった

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 「いや、何だよ! あのトンチキな夢は!」


 ガバッと起き上がり、六畳一間の自室を見回す。

 オーケー、ここは日本の俺の部屋だ。

 布団に入って寝ていたはずが、九回ほどアメコミチックな世界でトンチキな仲間達と事件に挑まされる夢に悩んでいる。

 まだ春休みだ、四月からは高校二年生とはいえ高二病にはまだ早い。


 「十回目も同じ夢を見るか、寝たふりをして確かめてみよう」


 俺、普通に日本人の高校生のトモキはそんな事を思った。


 その夜、布団の中で寝たふりをしていたらとんでもない物が現れた。


 「ふ~~~! 異次元からの使者、デッドジャッジ!」

 「いや、誰だお前は!」


 突如部屋の中に、緑色のマスクと全身タイツスーツの男が現れた。


 「あ、起きてた? 丁度良かった♪ じゃ、出かけようか♪」

 「いや、夢の中にいたトンチキ男!」

 「あ~、夢じゃないからリアル! ほら、とにかく大いなる力には責任があるから!」


 デッドジャッジを名乗る、アメコミっぽい男に起こされた俺は時空に空いた穴にⒽ傷り込まれた。


 「ちょ、ここどこ? 俺いつの間にか変身してる!」


 気が付くと青空の下、アメリカっぽい街のビルの上。

 服もパジャマから、全身がバイクのプロテクターに変わっていた。

 そして、手とか頭部全体が金色に光る炎になっていた。


 「はい、これで全員集合♪ トモキ君は、次元を越えるとスーパーヒーローのホープライトに変身します! ここは異世界です、以上!」


 デッドジャッジがザックリと叫ぶ。


 「ハ~~~イ、パンプキンウィッチお姉さんよ♪」

 「いや、何かセクシーなお姉さんが来た!」


 空から現れた第二の人物。

 紫のタイツの上に、オレンジのハロウィンカボチャの形をした胸鎧とカボチャブルマーみたいな装甲を付けたスーツを着て美人な顔の上にはオレンジの仮面。

 トンチキだがまだ理解の範囲にいる、おっぱいの大きいお姉さんが降りて来た。

 

 そう、衣装はトンチキだが俺の好みのタイプである金髪ロングな美人で胸の大きいアメリカンなお姉さんだ!


 「はい、ウィッチの胸ばっかり見てない! お楽しみは後にしなさい!」

 「いや、三人で何すんだよ?」


 デッドジャッジにツッコむが無視される。


 「三人じゃないぞ、パワーーーーッ!」

 「ヘ、変態だ~~~っ!」


 四人目の人物が空から降ってしゅたっとビルの屋上に着地する。

 スーパーヒーロー着地だ、膝を痛める。


 新たな人物はこいつもトンチキだった。

 ブロッコリーの被り物をして、筋肉モリモリマッチョで迷彩柄のビキニパンツ一丁の変態男だった。

 顔は俳優にいそうだが、他の部分で台無しだ。


 「ライトホープ、しっかりしてくれ? ミスターブロッコリーだ、わかるか?」


 変態マッチョ、ミスターブロッコリーが両腕を上げて背筋を見せびらかすポージングをしながら俺に語りかける。


 「いや、わかりたくない。 何だよこのトンチキな悪夢は?」


 光に包まれた両手で顔を覆う俺、特に違和感はない。

 ていうか俺、何で外見がミュータント?


 「はい、チーム全員集合した所で今日のミッションです♪」

 「いや、何このBどころかZ級コミック映画みたいなチーム?」


 段々、記憶がはっきりして来た。

 夢だと思っていたのは本当の記憶。

 俺は九回ほど、このデッドジャッジと言う男に日本から連れて来られては帰されて来たのだ。


 「大丈夫、私達ならどんなヴィランにも負けないわ♪」

 「そうだとも、俺達スクランブルコマンドーズは無敵だ♪」


 ウィッチとブロッコリーが、真っ白な歯を見せて微笑む。

 ああ、そうだ! この二人もトンチキだったのを思い出して来た。


 「よし、ライトホープも頭が覚めて来た所でブリーフィングは終了だ」

 「いや、会議すら始まってねえよ!」

 「よし、じゃあライトホープから行ってみよう♪」


 俺はデッドジャッジに背中を押され、高層ビルの屋上から落とされる。


 「うお~~っっ! 大丈夫、俺は飛べる! 思い出した、アイキャンフライ!」

 「でも俺さんは飛べないから落ちて行くんだよ、た~~すけて~~~!」

 「馬鹿野郎!」


 俺の横を落下して行くデッドジャッジを空を飛び、拾いに行く俺。


 パンプキンウィッチは、何か両端にハロウィンカボチャが付いた天秤棒に乗って飛んでるし、ミスターブロッコリーはデカいブロッコリーになってビルの壁面をゴロゴロと転がってる。


 いや、俺が言うのもなんだけど何だよこのトンチキな集まりは!


 着地したのは、洋画で見る銀行っぽいビルの前。

 いかにもお金が沢山ありそうで、強盗のやりがいがありそうなビルです。

 大丈夫、セキュリティはきちんとしてるのか?


 デッドジャッジは、そんな銀行の前でスーパーヒーロー着地のポーズをしている。


 「へい、義務を果たす時間だぜベイビー♪」


 デッドジャッジが調子良く俺に問いかける。


 「義務って、あれか! 強盗でも倒せってか?」


 銀行前に揃った俺達のチームは、目の前の大通りの道路から突っ込んで来る巨大トラックを目にした。


 いかにもあれで突撃してからお金を奪いますと言う、大型のトラックだ。

 わかりやすすぎるほどの大味、アメリカっぽい。

 シンプルなのはこっちも助かる、やる事がはっきりしてると楽だ。


 「くそ、こうなりゃ夢の通りにやってやる!」


 俺はやるしかないと肚を決めた。

 取り敢えず、目から金色のビームを発射してトラックを攻撃する。


 「防御は任せろ!」


 俺がビームを撃った後、ミスターブロッコリーが前に出て巨大ブロッコリーに変身して盾となると同時に爆発音が響く。


 「良し、トラックはお陀仏だ♪」


 双眼鏡で様子を見たデッドジャッジが、ガッツポーズを取る。


 「待って、下水道から敵よ!」


 ウィッチが叫べば,道路のマンホールの蓋が弾け飛び下水からガスマスクを付けてライフルで武装した兵士もどきがワラワラと出てきてこちらへと向かって来る。


 「よっし、俺さんの技前を見せてやるぜ♪ デッドジャッジ、行きま~っす♪」


 デッドジャッジが両手にそれぞれ拳銃を持ち突撃。

 飛んだりのけ反ったりと変態的な運動で敵の攻撃を避けながら、相手にヘッドショットで仕留めて行く。


 「いや何なのこの街?」

 「ヴィランとヒーローが毎日戦うエキサイトな街よ♪」


 パンプキンウィッチも、掌から火の玉を発射して戦闘員っぽい敵を倒して行く。


 「いかん、今度は銀行の中が危ない!」


 地面に耳を当てていたミスターブロッコリーが何かを感知したのか、銀行の中へと突っ込む。


 「おい待て変態、止まれ!」


 日本人の常識としては、ブロッコリーの方がヴィラン扱いじゃねと思い後を追う。


 「げげっ! 筋肉モリモリマッチョの変態だ!」

 「頭全体が電球みたいに光ってる奴もいるぞ! 撃て!」


 しかし、銀行内部には目出汁帽の強盗がいてこっちに銃を撃って来る。


 「ふん、その程度の弾丸なんて効かないぞ♪」


 ブロッコリーが大胸筋を揺らせば、彼の胸から振動波が放たれて銃弾が落ちる。


 「うん、変態だ! ビームを喰らえ!」


 ブロッコリーが変態だと同意しつつ俺もビームで強盗達を撃って制圧して行く。


 こうして、俺とトンチキな仲間達は銀行強盗を退治したのであった。


 「よし、もう帰っても良いかな?」


 俺はデッドジャッジに尋ねる、正直もう今日の事も含めて悪夢として終わらせたかった。


 「あ、ごめ~ん♪ 次元転移装置、さっき敵に撃たれて壊しちゃった♪」

 「ふざけんな~~~!」


 俺はデッドジャッジに対してビームを乱射する。

 どうやら俺は暫く、このトンチキナ世界にいないと駄目らしい。


            夢かと思ったらアメコミ転移だった・完

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