【あの夢】ついフルネームで呼びたくなる名前ってあるよね!
奇蹟あい
あの子ね……いつか……やると思ってました……
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
今朝はめっちゃ運が良いっ!
今日の服装もかわいい♡
あー、もう何回見ても興奮するっ!
待って待って! やっぱり天使じゃん!
わたしが芸能スカウトの人だったら絶対スカウトするのにー!
おや? あれはカレン?
親友のカレンが、わたしのほうに向かって歩いてくるのが見えた。
こ、これは! いち早くこの感動を伝えなければ!
待ちきれずにカレンのほうに走り寄る。
「ねぇねぇねぇねぇ、カレン! 見て見て見て見て見て! あそこだよあそこ! あの夢がいるよー!」
「おはよう、チサ。あ~、たしかにいるね~。じゃあ学校行こうか」
カレンは一瞥しただけで、再びわたしのほうに視線を戻してくる。
「えっ、ちょっ、なんでそんなに反応薄いの⁉ アノユメだよ、あ・の・ゆ・め!」
朝見られたことに感謝して、もっと喜ぼうよ!
崇め奉ろうよ!
あっのっゆっめっ!
「いや、別に……。まあ、たしかに、けっこうかわいいなとは思うけど……知らない子だし……」
「ウソでしょ……。アノユメ天使じゃん! わたしの妹にしたいよぉ♡」
「チサって……やっぱりロリコン……?」
眉をひそめてマジ引きすんな。
「そうじゃない! わたしの天使を性的な目で見るな! もっと純粋な目で見て! ていうか、やっぱりって何だ、やっぱりって!」
失礼しちゃうわ。
アノユメは天界から舞い降りた穢れなき天使なの♡
「そっくりそのまま返すわ……。ずっと気になっていたんだけど、なんでフルネーム呼びなの? 普通に『夢ちゃん』で良くない?」
「んー、なんとなく呼びやすくない? アノユメ。ほら、響きもかわいいし?」
「響きって……。無理やりじゃない? もはや名前がかわいいのか、本人がかわいいのか……」
「どっちもー♡」
「はいはい……わかりました……」
カレンが「やれやれ」と小さく首を振る。
「アノユメ……アノユメ……アノユメね。ところで『あのゆめ』ちゃんの名前って漢字でどう書くの?」
「え……と……ドリームの『夢』かな……」
「それは知ってる。名字の『あの』の部分は?」
「いや……その……ひらがな、かな。もしかしたらカタカナだった……カモ……」
カレンさんったら、急に難しいことを言いなさる。
漢字なんて必要ある?
「芸能人の『あの』ちゃんじゃないんだから、ひらがなってことはないでしょ。もしかして……それだけ好きなのに、名字の漢字を知らないの?」
「そんなことは……最初にナンパ……じゃなくて、つい声を掛けちゃった時に訊いたんだけど……なんか知らない漢字だった……から……」
「推しの名前の漢字くらい覚えろ! それでよく好き好き言えるな~」
わたしの親友が辛辣過ぎる……。
泣いちゃうぞコラー。
「先週のわたしの漢字テストの結果を知っていてそんなひどいことを……?」
「あれか~。50問の小テストの。平均74点のところを、チサは何点だったっけ? 102点くらいだったっけ?」
「2点だよ! わざと言ってるでしょ! あれだけ大笑いしたんだから覚えてるでしょ! 100点のカレンさんよー!」
「ごめんごめん、あれはめちゃくちゃ笑ったわー。もうさ、チサには自分の名前を漢字で書けただけで50点くらいあげてほしいね」
「くっそー、舐めやがってー! 保健体育の点数はわたしの圧勝なのに!」
「……モギチサのエッチ」
「なんで急にフルネーム呼び⁉ 保健体育はエッチなんかじゃないんだからねっ!」
ひどい! 偏見だ!
全国の保健体育協会の人に謝れ!
「ごめんごめん。モギチサ、アノユメ……。たしかに、フルネームで呼びたくなる名前の人っているよね。あれってなんでだろう?」
「どっちも4文字だから? あーん、わたしとアノユメは名前でも繋がって……これって運命♡」
「ロリコンキモッ! ロリコンも4文字だし、チサがロリコンなのは運命ってことかな」
「それは全国の4文字の名前の人に謝れー!」
全国の4文字の人、アノユメとわたしに続けー! カレンの家の前でデモ行進するぞー!
「だけど4文字の名前って珍しいよね。まず名字の読みが2文字じゃないといけないし。ほかに誰かいるかな……」
「んー、志摩リンちゃんとか!」
「アニメキャラじゃん。ま、でもたしかに、『シマリン』もフルネーム呼びするね。やっぱり4文字の名前だとフルネームで呼びたくなるってことで合っているのかな?」
うーん、と唸って考え込むカレン。
ふっふっふ。
ではここで、わたしが偉大なる一石を投じようと思う。
「フルネームで呼びたくなる名前って、4文字じゃなくてもいると思うよ」
「ほう? たとえばどんな?」
お、天才カレン様が食いつきましたよ、と。
今こそ、わたしが博識なところをアピールするチャンス!
「いるいる! いっぱいいまーす! たとえばー、越前リョーマとか、岸辺露伴とか、御坂美琴とか……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンちゃんとか!」
「アニメキャラばっかり……。でも最後の人はちょっと知らない。イリヤ……なんて?」
「えっ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンちゃんを知らない⁉ きさまモグリか⁉」
全人類が崇めるべき尊き存在だよっ!
「はいはい、モグリモグリ。どうせアニメキャラでしょ。イリヤ……なるほど、この子か」
スマホで検索してイリヤちゃんの画像を見つけたらしい。
「やっぱりロリコン……」
「ちがっ! イリヤスフィール・フォン・アインツベルンちゃんは、体の成長が止められていて決して見た目通りの幼女というわけではなくて!」
「なんか……アノユメちゃんにちょっと似てるかも……」
「でしょでしょでしょ! ウィッグつけて銀髪にしたらマジイリヤちゃん! はぁはぁはぁはぁ」
「キモッ……」
虫を見るような目で……。
それは親友に向ける目ではないよっ⁉ ノー虫!
「いいい今のは誘導尋問だっ! 正式に抗議するっ!」
「完全に自爆でしょ……。あれ? またアノユメちゃんがいる。なんかうろうろしてるけど、下向いて……落とし物かな? あれって困ってるんじゃないの?」
カレンが指さす方向にはわたしの天使が!
「どうしよどうしよどうしよ⁉ 声掛けちゃおうか……」
「いや、その顔……通報されるから、モギチサはここでおとなしくしていて……」
ため息を吐くカレン。
「なんでフルネーム呼び⁉ わたしの天使が困っているんだから、わたしに助けさせてよ!」
「はいはい、落ち着けロリコン。とりあえず私が声をかけるから、モギチサは50mくらい離れていて」
「それストーカーのセッケンキンシのやつ!」
「お~、漢字テスト2点のくせに、接見禁止なんて4文字熟語知ってるんだ? えらいね~。よしよしよし」
「頭をなでるな! 漢字でどう書くかなんて知らんわ!」
漢字テスト2点を舐めるなよ!
「ですよね~。期待した私がバカでした~」
「やーい、バーカバーカ!」
天才もたいしたことないなー。
って!
「痛っ! なんで無言で殴ったのさ⁉ ボーリョク反対!」
「うるせっ。せめて暴力を漢字で書けるようになってから言えっ!」
ぐぬぬ……。
何も言い返せないっ!
ほっぺた痛いよぉ。
「モギチサ、見て。アノユメちゃんがしゃがみ込んで何かを拾って……キーホルダーを落としちゃってたんだね。声を掛ける前に解決したわ。モギチサが逮捕されなくて良かったよ」
「わたし、ストーカーじゃないもん!」
「いや、自覚ないのはヤバいよ? 近所の小学生の女の子を見かけた回数を数えているのって、ほぼほぼストーカーだからね?」
「うっそ……。だってアノユメだよ?」
「だっても何もないから。さすがに私、顔にモザイクを掛けられて『友人A』としてインタビューを受けたくないんだわ……」
「カレン……」
わたしのことをそんなに心配してくれているんだ……。
さすが親友!
「わかった! わたし、アノユメ日記を書くのやめるね!」
「え……日記書いてるの……。もう手遅れだったわ。そこを動かないで。通報するね……」
ちょー!
スマホ取り出さないで!
冗談だから!
アノユメ日記書いてないから!
Xに鍵垢作って、後ろ姿の写真をポストしてるだけだからっ!
「『あの子ね……いつか……やると思ってました……』」
やーめーてー!
声を変えて、テレビ局の取材のインタビューに答える練習やめてー!
(エンドレスループ?)
【あの夢】ついフルネームで呼びたくなる名前ってあるよね! 奇蹟あい @kobo027
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