第三話
「最初いきなり死んでしまった……」
と告白を始めた浩太。
「僕も夢だと思ったけど……記憶が残ったまま卒業式前だった。夢かと思って2回目……わかった。君が落ちてきて僕が死んだということを」
「えっ! てっきり岩に当たって自分死んだと!!」
岩でなくて浩太の岩頭だったのだ。
「ごめん! でもなんであそこに?」
「僕も1回目は君とはわからず……あの……」
浩太は口籠った。
「君を追いかけて坂に向かったんだ」
で、探してる時に私が坂から落ちて浩太とぶつかって二人とも死んでタイムループ?!
なんともひどい巻き込みようだ。
「……でもなんで私を追いかけたの?」
浩太は顔が真っ赤になっていた。
「だって……僕は君が好きだから」
そう言って、制服の第二ボタンを外し、私の手に乗せる。
え?
そう思った瞬間、なぜか胸が熱くなった。
「先輩好きなの知ってたよ。でも……好きなんだよ。お前のことが。好きだから追いかけた。なのに……僕の気持ちが強すぎて何度もタイムループしたのかなぁ」
と、浩太は笑った。
私もつられて笑った。
確かにお調子者だけどさ、この数回のタイムループでいつもとは違った面が見られて……よかった。
ついつい惚れてしまった。
てか……2回目で違う女の子にボタンを先輩があげてたからきっともう叶わない。
代わりにと言ったらなんだけど……浩太でもいいのかな。
なんちゃって。
ボタンを受け取る。その瞬間——。
「おめでとう、お似合いだよ」
背後から、聞き慣れた声。
振り向くと、そこには先輩がいた。
「せ、先輩……?」
驚いて言葉を詰まらせる。
先輩は優しく微笑んでいた。でも、ほんの少し、切なそうで。
「よかったな」
それだけ言って、踵を返す。
私は咄嗟に「ありがとうございます」と頭を下げた。
その背中が遠ざかっていく。
遠ざかる背中を見つめながら、ふと思う。
——どうして、先輩はあんな顔をしていたんだろう?
笑っていたのに、ほんの一瞬だけ、寂しそうだった。
もしかして——。
……。
とりあえず心の中で区切りをつけよう。
先輩、二年間好きでした……でも先輩は傷つけまいと……。私の気持ちを知ってたけど……。
ありがとうございます。
二年間いい青春でした。ありがとう、さよなら。
「……どうした?」
隣の浩太が私の顔を覗き込む。
「ううん、なんでもない……て、あんたこれから卒業式あるじゃん。それにまだ一年制服着るんでしょ!」
「あ、じゃあ返してくれ……てかもう退屈だなぁ。卒業式サボるか?」
そう提案してくれた浩太。やはりお調子者……でどことなくワル。そこが先輩にないところ……。
私は頷いた。
その後、私たちは死ななかった。
でも生徒指導の先生に卒業式サボったことバレて反省文を書かされたのはいうまでもなかった。
すこしワルな浩太との恋愛。だが受験スタート。
色々ありそうだけど……新しい青春の1ページ、また始まった。
終
【kac20254】告白したくて、春 麻木香豆(カクヨムコン不参加) @hacchi3dayo
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