3,武器を選ぶ
武器庫の扉を開けると、田中はスタスタと奥に入っていき、中央にある棚の前で振り返る。
「ええとぃ、身長は?180……弱かな?ってことは、サイズLで良い?」
「はい」
「オッケ」
田中は引き出しから長袖のTシャツと下履きを数枚引っ張り出して来て、それを姫野に手渡した。
「これねぇ。ミスリルを繊維に編み込んであって、刃物系の攻撃は防げるから、仕事中は常に着用してね?衝撃はくるから、痛いものは痛いけど」
「はい。ありがとうございます。ミスリル?すげぇ」
「でしょー? とりま、服はそれで良くて。さて、姫野君はどんな武器が好きかな?」
田中はこてんと首を傾げた。
「ええと。妖精って、どのくらい危険なんですか?」
姫野は妖精に関しての知識が乏しかった。
彼の持つ妖精のイメージと言ったら、透明な羽を生やした小人、程度のもの。
専門学校で一通りの戦い方を習ったものの、妖精がどのような攻撃を仕掛けて来るのか、全くイメージが湧かない。
「色々だねぇ。種族によって対応も変わるし?でも、一番多くて危ないのは、反抗期の五歳児が武器持ってるみたいな?」
「あー。そういう感じの……」
(なるほど。護身用って感じか。だったら、目の前のやたら存在感のある大剣やマシンガンみたいな武器は、必要なさそうだな)
「姫野君専用の武器を一個選んでね?もちろん、危険度が高いオペの場合は、別途貸し出されるから、心配しなくて良いけど……」
「なら、そこの盾にします」
姫野は倉庫の隅に置かれている、程よいサイズの盾を手にとった。
片手で振り回せる程よい重さで、内側にダガーナイフとバール状の何かセットがされており、適当に選んだ武器の割には、お得感がある。
「おぉっ! 結構良いチョイスだよ? 姫野君。あんま無いけど、話し合いの時はナイフだけ手元に置いても良いし。うんうん。なかなかやるねぇ」
「いえいえ」
美少女に褒められ、姫野のやる気が5上った。
「そしたら、これは姫野君用にカスタマイズするから、今日の午後にでも開発局に行ってね。
そろそろ、戻って来る頃だから、一旦課に戻ろ。みんなに紹介しないと」
「はい。……戻って来る?」
田中の言葉に引っ掛かりを感じて、姫野は考える。
(そう言えば、就業開始時間なのに、課には課長と係長しかいなかったっけ。もしかして任務に行ってたのか?)
「うん。今回は大規模だったから、全員参加。課長と私は、今日君が来るから、早朝抜けて来たのよ。感謝してね?」
「あ、はい!ありがとうございます」
「んー。良い子♡」
田中は姫野に向かって手を伸ばす。
身長差で手が届かないようだが、そのジェスチャーを見て姫野が頭を下げると、おでこのあたりを撫でられた。
(この職場、最高じゃないか?)
やりたかったこととは少し違うが、これはこれで悪くないと、姫野は鼻の下を伸ばした。
特定異世界外来生物対策本部 妖精課 丸山 令 @Raym
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