箱庭
夢月七海
このブログを書くきっかけについて
今日はすごい大雪。
こういう日に元気なヒトもいるけれど、私は普通の人間だから、流石にお出かけはしない。
その代わり、私が目には見えない存在を追いかけて、記録していくきっかけになった話をしようかな。
小学三年生の下校中、いつもの線路沿いに知らない露店が出ているのを見つけたの。
屋台の中には、見たこともないようなものがたくさんあって、わくわくしながら観察していたら、ふと、長方形のオルゴールのような木の箱が気になって、手に持ってみた。
すると、露天商のおじさんが、「それは妖精の箱庭です」と教えてくれた。言われるまま、箱を開けてみると、どこかの森の一角を空から眺めているような景色が、箱の中に入っていた。
しかも、その森の木の枝や草花の間では、小さな妖精たちが自由に飛び回っている。私は驚いて、おじさんを見た。
この箱を開くと、人間のいない、自然だけの世界が覗ける。そこには妖精や精霊が当たり前のように暮らしているとか。
私はすぐに、持っていたお小遣いを全部使って、この箱庭を買った。おじさんから、仮にこの箱庭を落としても内側の世界は大丈夫だが、側面よりも下には物を入れることが出来るから、気を付けてほしいと言われた。
それから、私はこの箱庭を覗くのが日課になった。箱庭の妖精たちは、みんな中性的な見た目をしていて、周りの葉っぱや花びらを纏い、背中には虫や鳥の羽が生えていた。ふわふわと羽で飛び回り、私には聞こえない声でおしゃべりしたり、すやすや寝たりと、いつも平和そうだった。
人間がいない世界だから、環境破壊とかとは無縁なんだろう。私が中学生になっても同じ箱庭の中身を見て、この先、私がおばあちゃんになっても、ここは変わらないだろうと思っていた。
ある日、森の中で洪水が起きたらしい。大量の泥水で草花は埋もれて、立派な木もすべて薙ぎ払われてしまった。
私がそれを知ったのは、全てが終わってしまった後だった。妖精たちの姿はどこにも見えない。逃げたのか、死んでしまったのか……そう心配していたら、横倒しになった木の中から、一人の妖精が現れた。
妖精は、半透明になっていて、風が吹いただけでも点滅する。ふらふらと病人のように歩くその姿を見て、何とかしてあげたいけれど、どうしようと思った。
すると、その妖精が空を見上げて、私と目が合った。何回もこの箱庭を眺めていたけれど、こんなことは始めてだった。
ただの偶然かも、と思っていたら、妖精が、後ろ手からクチナシのような花を取り出し、私に差し出した。一生懸命、花を私の方に伸ばしてくる。
私はまた驚いたけれど、自然に、右手の人差し指を妖精の花の方へと向けていた。この人差し指が、妖精の花に触れた……感触はなかったけれど、そう見えた瞬間、妖精がにこっと笑って、花と一緒に消えた。
でも、私の心の中が、急に温かくなった。なんだか、暖炉に火が灯ったかのようだ。
その日から、私には普通の人には見えないもの、幽霊とか妖怪とか、精霊とか神様とかが見えるようになった。今まで知らなかったけれど、そういう存在は、この世界にもたくさんいる。
だけど、このヒトたちも、箱庭の妖精たちのように、ある日突然いなくなってしまうかもしれない。永遠に留まっていられないのならば、せめて、どこかに残してあげたい。
成長するにつれて、そういうことを考えるようになった私は、高校生の時から、自分が出会った幻想的な存在を、ブログに書き綴ることにした。これが、この「私の幻想散歩」を始めたきっかけ。
ちなみに、箱庭自体はまだ残っている。全国を巡る時も、必ずバッグの中には入れていて、時々覗いてもいる。
洪水に見舞われた森は、また新しい木や草花が生えてきた。でも、妖精は長く息づいた自然の化身だから、次に現れるのは百年後とかもしれない。そんな日を思い描きながら、私は今も箱庭を大切にしている。
……というのが、私のルーツかなぁ。子供の頃のことをかいたら、なんだか気恥ずかしくなっちゃった。
明日、雪が止んだら、雪の日に元気なヒトたちにあって、紹介したいと思います! またね!
箱庭 夢月七海 @yumetuki-773
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