KAC20254 あの夢を見たのは、これで9回目だった
小烏 つむぎ
あの夢を見たのは、これで9回目だった
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
この夢は回を追うごとに展開している。そう気づいたのは3回目くらいだったろうか。そしてこの結末がどうなるのかも、オレは知っていた。
頼む! この夢を最後までオレに見させないでくれ! あれはオレの人生初の赤っ恥なんだ。
◇ ◇ ◇
夢 1回目。
3才くらいだろうか。小さなオレは大きな平たい箱を運んでいた。それは立派な木目がついていたが木ではなく、軽くてフタがついていた。その箱をオレは青いチェックの布の上に置いた。
夢 2回目。
夢の中のオレは「
夢 3回目。
オレは母親にショウガとゴマ塩をくれとねだっていた。母親はゴマ塩はいいがショウガはまだ早いと答えた。
夢 4回目。
オレは「
夢 5回目。
さてつぎは「サクランボ」だ。これは聞違いなくと言いたいところだが、当時「サクランボ」を食べた事のなかったオレはこれを「サクラン」という名前の「坊さん」だと思っていた。
かくして「
夢 6回目。
次はシイタケだ。さすがに「シイタケ」はオレでもわかる。わかるが、舌っ足らずだった当時「ちいたけ」としか発音出来ず、坊さんの向かいに「地井武男」氏がはいってしまったのだ。
夢 7回目。
この日オレは「後藤さん」を弁当箱に詰めようとしていた。犬の散歩の途中に3歳児に拉致られたお向かいの「後藤さん」は迷惑そうな顔をしていた。
夢 8回目。
オレは「穴の泣いたレンコン」を「後藤さん」の隣に押し込んだ。「穴の泣いたレンコン」は「後藤さんに」ハンカチを借りていた。思うにあのレンコンはたぶん「カラシレンコン」なんだと思う。
夢 9回目。
「寿司の通ったフキ」が何なのかオレにはわからなかった。しかし想像力のたくましかった3歳児は回る寿司屋のレールの事じゃないかと思い、想像の弁当箱の隅にあのレールを強引に押し込んだのだった。
そして今夜はついに10回目。
これから3歳のオレは祖父さんの法事に集まった親族の前で自慢げかつ高らかにオレの「お弁当箱の歌」を歌うのだ。おにぎりやニンジン、サクランボ、シイタケ、ゴボウ、レンコン、フキの代わりに、あらぬものを詰め込んだオレオリジナルの弁当箱ソングを。
そしてそれを聞いた一同は、しんみりとしていたそれまでとは打って変わって腹を抱えて笑うのだ。
この時オヤジが撮った映像にはその場に居合わせた(オレが頭の中でピンクの袈裟を着せた)坊主が写っていて、「いい供養になりましたな」と笑いを堪えて言うんだぜ。
なぁ、その祖父さんの十三回忌がよ、明日なんだ。気が重いよなぁ。
KAC20254 あの夢を見たのは、これで9回目だった 小烏 つむぎ @9875hh564
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