妖精が宿る木

砂原泉

妖精が宿る木

 俺は子供の頃から妖精が宿る木を探している。今まで草原や森林を旅してきたが、妖精の宿る木は見つからなかった。


 今回、俺は砂漠にやってきた。周りに木は一切ない。でも砂漠にも植物はある。妖精の宿る木がどこにあるか分からない以上は、どんな所も探すしかない。


 さらさらした砂の海みたいだ。

 暑い。昼間はじりじりと暑くて沸騰してしまいそうだ。

 寒い。夜間は凍えるくらいに寒い。

 そして何より、水がない。


 砂漠を歩いていると、小さな町にたどり着いた。貧しそうな町で、住人はボロ切れを着ている。路上の日陰に座り込んでいる人が何人もいる。


「そろそろ雨が降ってもいい頃なのに」


 町の人々の会話が聞こえてきた。


「もう水がないよ」


「私らが子供の時にはもう少し雨が降っていたのに……」


 どうやらこの町はとてもピンチのようだ。なんとかしてあげたいけど、俺に何ができるだろうか。俺は自分の力が分からない。


 俺の目的は妖精が宿る木を探す事だ。町の人たちは可哀想だけど、先に進まないと。


 町を抜けて一日間歩くと、砂漠の中にいきなり大きな木を見つけた。

 幹が太い。木のだいぶ上から枝がたくさんに分かれていて、不思議な形をしている。

 俺は木に手を当て、こんこん、と叩いた。どうやら中は空洞で、たくさんの水を蓄えているみたいだ。


 木の実がなっている。食べてみるとほんのりと甘酸っぱい。


 これなら、妖精が宿る事ができる。


 俺はその木に登り、てっぺんに腰かけた。


 熱砂に異変が起こる。

 砂漠の底から水がちょろちょろ湧き出て、砂を濡らす。次第に勢いを増して、水が湧き出る。

 轟音を立てて、大量の水が噴き出す。燃え盛る太陽の光を弾き、水がきらめいた。


 何事かと町を飛び出してきた住民達が、歓喜の声をあげる。


 砂漠から吹き上がった水が砂を削って窪みとなり、そこに水が溜まって泉が出来上がった。


 底が見える程に澄んだ泉のほとりに、小さな緑が芽吹く。次から次へと草が生えて、やがて白い花が咲く。


 砂漠の真ん中に緑豊かな泉ができあがった。


 住人達が泉を取り囲み、大喜びする。子供が何人も泉に飛び込んで水遊びをする。


 やっぱり、この木こそが俺が宿る木だったんだ。

 俺は泉の妖精だったのだ。


 町は末永く平和に包まれ、俺は泉の妖精として木と共に暮らした。

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