妖精さんの恋心

桔梗 浬

僕は幸せ者さ

 やぁ、初めまして。

 僕の名前はモフモフ!

 モフモフって名前だけど毛深くはない。

 

 人は僕の事を『睡魔』と呼ぶ。

 

 『睡魔』って小人か何かと思っている人も多いいと思うけど、れっきとした妖精の一種なんだ(と僕は思ってる)。


 僕らはふわぁっと風に乗って移動するんだ。そしてちょこんと肩に飛び乗る。

 そして……。


『ほら、寝ちゃいなよ。大丈夫、寝ちゃいな』


 って囁くんだ。小さい声で耳元でね、ふぅ〜って息を吐く様に。そうすると、たいていの人間はウトウトしはじめる。

 僕らの言葉には逆らえないのさ。僕ってすごいでしょ?


 さぁ、今日もあの子に会いに行かなくちゃ。



 えっ? 誰に会いに行くのかって?

 それは決まってるじゃない。愛しき『眠り姫』だよ。僕は彼女のために生きている、と言っても過言ではないのだ。


 僕たちの出会いはそう、一年前の桜が散るこの季節。

 彼女は白い大きな建物の中で退屈そうに外を眺めてた。そこには僕の仲間が既に沢山いて、多くの人間がウトウトしていたんだ。



 僕の女神が!

 僕は彼女の肩にちょこんと座った。

 すごーーーーくいい香りがしてビックリしたのを覚えてる。長いまつ毛に少し垂れた目元。鼻筋もきゅっとしてて、ぽちゃんとした赤い唇がツヤツヤしてた。

 あぁ〜そのお口に飲み込まれたい。ふかふかのベットより気持ちが良さそうだ。


 その時僕は彼女に一目惚れしたんだ。

 だって彼女の姿を見るだけで心臓がバクバクするし、いつも探してる僕がいるんだ。

 この前は、僕じゃない子が彼女の肩に座っていて……すごく嫌な気持ちになったんだ。


 彼女は僕の事なんて知らない。でも、それでもいいんだ。そばにいて見守っていれたら。

 そう……思っていたけど。


「ねぇねぇ、佐藤の授業ヤバくない? ほとんどの男子は眠ってるし、あの生徒会長まで居眠りしてる」


 おぉー、彼女は生徒会長っていう名前なのか。覚えたぞ。


「てか、この部屋に入ると眠くなるんだけど」


 そりゃそうだ。


「生徒会長、もはや『眠り姫』ね」

「そうね」


 女子たちがクスクス笑ってる。なんかやな感じだ。僕が守ってあげなくちゃ!

 だから僕は彼女、おっと生徒会長ちゃんのそばで眠そうな彼女を見守る。そして「寝ちゃいなよ。僕がずっとそばにいてあげる」って囁くんだ。


 あー、僕は幸せだ! 睡魔に生まれて本当によかった。

 

 えっ?「それで彼女は幸せなのかい?」って?


 うーん。

 そうなんだよ。本当はわかってるんだ。

 このままじゃダメだって。


 僕がそばにいると、彼女は眠ってしまう。彼女の笑顔も、彼女がやりたい事も、未来も……僕が時を止めている様なものだって。


 そんな事、知ってるよ。

 でも……好きなんだ。しょうがないじゃない。



 えへへ、今日の彼女も可愛いな。

 僕の眠り姫の生徒会長ちゃん。大好きだよ。


 でも……。

 やっぱりそれじゃダメだよね。



 僕は決めたよ。

 彼女が彼女でいるために、僕は!


 ……。



 うわぁーん。

 彼女に会わない勇気が僕に持てるか!?


 やっぱりダメだ!

 だって、だって、こんなに好きなんだもの。


 もう少しだけ、もう少しそばにいさせて。

 大好きだよ。



 END

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妖精さんの恋心 桔梗 浬 @hareruya0126

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