妖精が見える人間の手記

霖しのぐ

***

酔った勢いでうっかり『妖精が見える』と言ったら、変人というか奇人扱いされた。それで笑われるだけなら慣れっこだったが、今回は結構マジなトーンで病院に行くことを勧められた。悩みがあるなら聞くから。とか、お前、顔色悪いぞ、とか。それは二日酔いを押して無理やり出勤したせいだと思う。


俺は心身ともにいたって健康である。妖精が見えて、話せるだけで普通の人間だ……妖精なんているわけないって?いるんだなあ、これが。今まで他人に詳しく語ったことはなかったが、気が向いたのでちょっと文章にまとめてみようかと思う。書くことに不慣れなので、読みにくさは許して欲しい。


風の妖精シルフとは小さい時から仲が良かった。おかげで今も気がおけない友達みたいな感じだ。少年時代、好きな子を見ながら要らんことを考えてたら、都合のいい突風が吹いた。シルフが気を利かせたのだ。下着を見たのがバレて好きな子にはぶん殴られたけど、ひたすら平謝りしてたらお近づきになれてしまった。そんで今は俺の彼女だ。人生どう転ぶかわからない。「私に感謝しなさいよ」って今も耳元でくすくす笑ってる。ああ、彼女じゃなくてシルフがな。ちなみにシルフは女の子の姿をしてる。彼女より可愛い。いや、人間で一番可愛いのはもちろん彼女だぞ。妖精は別枠とさせていだきたい。


ちなみにおっかない見た目のやつもいる。火の妖精とか。こいつはもはや人の姿してない。例えるならトカゲだ。真っ赤な。サラマンダーなんていかつい名前なのも納得。見た目はヤバいけど、意外と友好的みたいで何かと世話を焼いてくれようとする。火だけに。ただ、近頃は火おこしをする機会なんてめったににないから退屈だという。俺はタバコを吸わないし、キッチンはIHコンロ。アウトドアにも興味ないので、サラマンダーの出る幕はない。こいつが昔の武勇伝を語り始めるとめちゃくちゃ長くなる。ぶっちゃけ煙たい。火だけにな。


火の話をしたら次は水だな。ああ、水の妖精もいるぞ。彼女もあんまり名前を気にしてないらしいけど、ここではウンディーネと呼んでおこう。しっかりものの彼女もシルフと同様、おもわず振り返ってしまうほどの美女だ。いやだから、妖精は別枠だから。付き合ってる彼女が一番だから。ちなみにトイレが壊れて水が止まらなくなった時と、上の階から水漏れしてきたときに大変お世話になった。しかし、妖精を頼れない人はこういう時どうするんだろうか。流れに身を任せるしかないのだろうか。


あれ、なんか忘れてるな?ああ、そうだ。彼を忘れてはいけない。ノーム。地の妖精だ。見た目は完全におじいちゃん。単なる偶然だとは思うが、俺の死んだじいちゃんに激似。ものづくりが好きなのもじいちゃんと同じで、姿を見ると時々懐かしくて泣きそうになる。最初はじいちゃんの幽霊だと信じて話しかけてたくらいだ。そのせいか俺のことを孫みたいに思ってるらしく、いろいろなことを教えてくれる。そうだ、埋蔵金ってマジであるらしい。地中をうろうろしているときに見つけたんだと教えてくれたが、怖くて掘りには行けてない。


今日は四大妖精?精霊?について話させてもらった。こいつら以外にも妖精は色々いて、それぞれの妖精との間に色々あったので、エピソードは尽きない。しかしなんせ数が多すぎるし、良い話ばかりでもないのでまた次の機会に語ることにする。


それでは。

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