妖精さんの裏の顔

桜田実里

妖精さんの裏の顔

「今日もかわいいな~」

「美しすぎて目が……っ!」


 ふわりとなびくのは、さらさらのロングヘア。

 優しい花の香りが、廊下を通る。


 短すぎないスカート、校則通りの身なりなのに、スタイルの良さが隠しきれていない。逆にその恰好が、清楚さを倍増させてるのだ。


 さらに、計算されつくしたような圧倒的黄金比の顔。


 容姿だけにとどまらず、成績も常に学年トップであり運動神経も抜群。

 しかしそれでいて謙虚、まとう柔らかい雰囲気とふわふわとした話し方から、「妖精さん」と呼ばれている。


 学校中の男子の視線を集めて離さない、そんな彼女の名前は古屋ふるやりあ。



「あー、なんかの間違えで付き合えたりしねーのかなー」

「それな~」


 と男子たちが口々に呟く。


 これだけのハイスペック女子高生、彼氏の一人や二人いてもおかしくはない……はずだが、りあの人生で彼氏がいたことは一度もない。




 ……実は、マドンナとしてのりあには裏の顔があった。

 それが、彼氏がいたことがない理由になるのだが……。



――――――――――


 放課後のグラウンド。

 様々な部活が活動をする中、ひときわ多く人が集まっている場所があった。


「次よ、次っ!!」

「きたああっ!!」


 歓声が飛び交うココは、女子陸上部。

 ギャラリーは男子生徒だけでなく、女子生徒もいる。


「「「トリの降臨っっっっっ!!!!!」」」


 生徒たちが声をそろえて叫ぶ。

 瞬間、あるポニーテールの女子生徒が驚異的なスピードで50メートルを走り出した。


 まるで、飛べるトリが走っているようだ。

 周りにいた生徒たちは、走る女子生徒のファンクラブ部の部員。

 そして女子生徒が走ることを、「トリの降臨」と呼ぶ。



 会長にも知らせないと―――――っ。


 ファンクラブの一人がスマホを取り出してなにか文字を打つ。




「……あ」


 そのとき、グラウンドの端にいたりあのスマホが通知音を鳴らした。


【会長、見てますか? 今―――】


 あの陸上部女子生徒のファンクラブ会長の名前は、古屋りあ。

 だけど、ファンクラブの人たちだけでなく学校全体にも、その正体は明かしていない。



 ――――――だって、彼女に本気の恋をしているなんて知られたら、恥ずかしいもの。




 これが、妖精さんの裏の顔。


 秘密にして……くれるよね?

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妖精さんの裏の顔 桜田実里 @sakuradaminori0223

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