あこがれ

Rotten flower

第1話

私はただ画面の前でペンライトを振っていた。写っている子達は私と違って輝いていてすっとそれに見惚れていた。こうなりたいと思って数年経って、その間の壁が、とても大きな壁が私の前にそびえ立っていた。

容姿は、私に対して「諦めろ」と直接的に言っているようなものだった。眼鏡をかけて猫背、悪く行ってしまえば芋っぽいとでも呼ばれてしまうようなそれは私を夢から覚めさせるようなものだった。

「アイドル、無理だって」「いい加減、現実を見なよ」誰からも言われていないのにそんな風な言葉がどこからか聞こえる。


「どうしたの最近?いつも見ていたDVD、見ていないじゃない」

母がキッチンからリビングに居る私に向かって話しかけてきた。

「どうも、見る気が起きないんだ」


最近、萌夢もあがどこかおかしい。昔からアイドルの映像を観て育っていたというのに、私達が何も口を出していないのに自然と観る頻度が落ちて観ないことのほうが多くなった。

別にテスト期間だって終わって少しは気を緩めていい時期だと思うのだけど。

と気になって聞いてみたところ本人でも原因がわかっていないらしい。

これが思春期というものなのだろうか、十四にもなればこれから先の人生をより鮮明に考え出してしまって大きな壁を感じることも少なくない、かくいう私もそうであった経験があるように。

「……直接的に聞くのも何だけど、アイドル目指してるの?」

私は本人が答えやすいように、本人に真実を言ってもらえるように単刀直入に言った。結果は、萌夢は頷いてくれた。

こういうときに、親はすっと手を差し伸べるべきなのだろうか。私には答えがわからなかった、でも人生で後悔だけはさせたくない。


「お母さん?」

「だめよ、もっと姿勢を整えないと」

何が母の逆鱗か琴線に触れたのかわからないが、熱血指導は夜まで続いた。とにかく身だしなみを重点的に指導されて、その夜には私は精神的な疲れでヘトヘトだった。どうやら、ダンススクールも契約したらしく私の夢を後押ししてくれているのだろう。


次の週くらいから私は本格的に疲れが溜まってきた。彼女らはこれくらい辛い思いを乗り越えてきたのだろうか。いや、きっとそうだろう。自分の陰湿な、逃げの思考をビンタでひっぱたいて、明日に備えるのだった。

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あこがれ Rotten flower @Rotten_flower

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