トンデモ赤壁【歴史小説】

室伏ま@さあき

天下三分の計

👉登場人物


●ライオ=ベイル……西の土地を所有する同姓の恩人から助けてもらった、優しさを重んじる人。


●サノンヴァーン……南の領土の主で、水軍を操る人。


●カオル……北の土地を持っていて、天下統一を目指す非常に強い人。



👉本文


建安十三年(208年)冬、西の土地で、ライオ=ベイルの同姓の恩人が死去した。


その混乱に乗じ、北方の覇者・カオルは大軍を率いて南下し、西の大地の大半を手中に収めた。

西の土地に住んでいたライオ=ベイルは民衆を引き連れて、逃れる道中にあった。



ライオ=ベイルは、長江と漢水が合流する水運の要所(現在の湖北省武漢市あたり)で立ち止まってしまい、顔を南に向けて深く息をついた。

「カオルの軍勢は百万とも言われる。このままでは我が身も危い」


一方、南の領土の若き君主・サノンヴァーンは報告を受け取っていた。

「主公、カオルの百万の大軍が迫っております。ライオ=ベイルも南へ逃れているとの報告です」


サノンヴァーンはすずりを強く叩いた。

「カオルめ、ベイルを倒し、次は我が領土に手をかけるか。……ライオ=ベイルはどうするつもりだ?」


間もなく、ライオ=ベイルからの使者がサノンヴァーンの元に到着した。

「我が主のライオ=ベイルより、サノンヴァーン様へご伝達です。カオルの軍勢は強大で、西だけでは対抗しがたくそうろう。共に手を組み、カオルを撃退しましょう!」


サノンヴァーンは沈黙した後、決断を下した。

「よし!共にカオルと戦おう。二つの国の力を合わせれば、百万の軍でも怖くはない」

サノンヴァーンは士気を上げるために、背水の陣を敷いたと、机の角を剣で切り落とした。



カオルの大軍は大河を南下し、サノンヴァーンの領土である“赤壁”と呼ばれる土地の対岸に、陣を敷いた。

「ベイルもサノンヴァーンも、若輩者。私の前に立ちはだかれば、滅ぼすまでだ。ははは!」



赤壁では、ライオ=ベイルとサノンヴァーンが共に軍議を開いていた。

「カオルの軍は数こそ多いが、北方の兵。南方の水には慣れておらぬ」ライオ=ベイルは静かに語った。

サノンヴァーンは頷いた。

「そうだ。我らの強みを生かさねば。水軍と火計こそが勝利への道だ」



ある日の夜、東南から吹く風が強くなりはじめた。

「時が来た」ライオ=ベイルとサノンヴァーンは互いを見合わせた。


サノンヴァーンの水軍から数隻の小舟が放たれて、火が点けられた。火は風に乗って舞い、北側に連なるカオルの船団へと燃え広がっていった。


カオルは自らの船から立ち上る炎を見て驚愕した。

「何事だ!」

カオルの陣は炎に包まれ、兵士たちは逃げまどった。

水に落ちる者、炎に焼かれる者、その混乱は夜通し続いた。


夜明け、カオルは残った兵とともに北の領土へと撤退を始めた。

「まさか、このような敗北を喫するとは」カオルの顔には怒りと悔しさが交錯していた。



ライオ=ベイルとサノンヴァーンは勝利の美酒を交わした。

「カオルは倒れなかったが、赤壁の勝利は大きい」ライオ=ベイルは語った。

サノンヴァーンは「うむ。この勝利は、我らの名を天下に知らしめるだろう」と、笑みを浮かべた。


カオルの撤退後、ライオ=ベイルは西の土地の一部を取りもどし、サノンヴァーンは南の安泰を確かなものとした。


赤壁の戦いは、三人の雄の行方を決定づける一戦となった。

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