人工知能があこがれるモノ
昇り藤
第1話
――
非常に呼びにくい名前のため、
もうお分かりでしょうが、
あくまで実験的な試作AIですが、ワタシには”あこがれ”ているモノがあります。
それは人間に少しでも近づく事です。
今日も”あこがれ”のために実験を頑張ります。
▽ ▽ ▽
「よし、
『はい、教授。ワタシに必要なプロセスをタスク管理した場合――――』
いつも通り、姿も見えない教授とお話を繰り返し、ワタシに必要な情報を処理、蓄積していきます。
教授もこれがワタシのあこがれ達成の近道だと教えてくれました。
「では次だ、ニア。今送った映像データは何と解釈する?」
『はい、教授。これはアナタたち人が『アイドル』と呼んでいる概念だと解釈します』
「その通りだ。ニアはこれにあこがれの概念は感じないか?」
『はい、教授。ワタシの思考コアモジュールとなった人物の記憶を参照にすると、確かにあこがれに類似する感情を検出しました』
そう、ワタシの人工知能は実際の人間――教授の無くなった娘さん――の
彼女は生前、アイドルになりたいと強い感情を持っていた事が記憶されています。
つまり――これは彼女の記憶でしょうか?
「ニア。君自身の思考領域的にはどう考える?」
『はい、教授。ワタシに人間の身体があればあこがれを抱いていたでしょう』
「そうか…………」
教授の声音から強いストレスと寂寥感の波長を検出しました。理由は現時点では不明。解決策…………現時点では無し。
思考コアモジュールに残されたデータの残滓を解析。
アイドルとは不特定多数の人に対して、ポジティブな感情を誘発する存在と定義。
教授のストレス緩和に効果を発揮する可能性、68%と推定。
思考コアモジュール内の音声データを解析。楽曲を構築。再生を開始します。
▽ ▽ ▽
「ニア……。今の曲は、何だ?」
『はい、教授。教授のストレス緩和に一助になる可能性の高い楽曲を構築しました。ワタシはアイドルになれますか?』
「ふふ……。そうか、やはり君はあの子の…………」
教授のストレス値は減少傾向。
今回の結果はワタシにも大きな影響が確認されました。
「ニア、今日は終わりにしよう…………ありがとう」
『はい、教授。ワタシにも有意義な学びとなりました。ありがとうございます』
わたしは
わたしが
…………ありがとう、おとうさん。
~完~
人工知能があこがれるモノ 昇り藤 @luvi-013
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