ケンジ

ケンジは裕福な家庭に生まれ育った。父親は大手企業の経営者で、母親は専業主婦として家庭を守り、ケンジに対して常に高い期待を抱いていた。幼少期から私立の名門校に通い、成績優秀、スポーツも万能で、友人たちからも一目置かれる存在だった。しかし、そんな完璧な環境の中で、ケンジは常に母親の厳しい監視と期待に応えなければならないプレッシャーを感じていた。


母親はケンジが少しでも失敗すると厳しく叱責し、常に完璧を求めた。その結果、ケンジは母親の期待に応えることが最優先となり、自分自身の夢や希望を追い求めることができなかった。大学に進学しても、母親の期待通りの専攻を選び、将来は父親の会社を継ぐことが決まっていた。母親の言うことが絶対で、自分の意見を言うということができなくなっていた。


しかし、心の奥底では、ケンジは自由を渇望していた。大学時代に知り合った友人たちの影響で、芸術や音楽、そして大道芸に興味を持つようになった。ある日、街角で見かけた大道芸人のパフォーマンスに心を奪われ、自分もいつかこんな風に自由に生きたいと強く願うようになった。


卒業後、父親の会社で働き始めたケンジだったが、母親の期待と現実とのギャップに悩み続けた。彩香が母親に反論したのを見た日、思い切って会社を辞め、母親の元を離れる決心をした。彼は自分を見つけるための旅に出ることにし、そこで大道芸に出会った。


ケンジは最初はなかなか上手くいかなかったが、少しずつ技術を磨き、路上でのパフォーマンスを通じて自由と自己表現の喜びを感じるようになった。髪を伸ばし、ヒゲを生やし、古着を身にまとい、これまでとは全く違う生き方を選んだケンジは、新たな自分を見つけたのだった。


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予期せぬ再開 辛巳奈美(かのうみなみ) @cornu

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