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「今日はお邪魔しました」


「全然お邪魔じゃないですよ。それにここ、私だけの場所ではないんですから」


「それもそうだね。でも君は最初、自分の方が邪魔だって言っていたよ」


「それは、言葉の綾です」


「ふふ、そうか。言葉の綾か」


「ええ」


「じゃあ、また来てもいいかな?」


「それも貴方の自由ですよ」


「あはは、ありがとう。帰るときは気をつけてね。風邪引かないように」




そう言って彼は帰って行った。


本当に不思議で、見た目とは裏腹に面白い人だった。


怪しんでいたこたとが申し訳なく思う程、最初の印象から今の印象は随分と変わった。



着物を着ている理由はいまいち分からなかったけれど、柔らかい雰囲気で優しい人だと思う。



もし、また会えることが出来たら名前を聞こうかな。



そう考えている自分がいて少し驚いた。




何せ、今まで初対面の人をここまで気になったことがなかったから。




それだけ私の中で、彼は印象深かったのだろう。




彼が帰った後フルートを出して吹こうと思ったが、あまりにも空が綺麗なので今日はやっぱり諦めることにした。




「明日、嫌だなあ」




ぽつり、少し橙がかった空に向かって憂鬱な気持ちを吐き捨てた。

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君に惹かれ、君を恋う【完】 昊野宇美 @sea_of_sky

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