あたしのおひなさま

ちかえ

あたしの見たいおひなさまは

「お雛様見ないの?」

「いっぱい見たもん」


 パパがおひなさまを見るように言ってくるけど、もうこないだから毎日見てるから、そんなに見なくていいと思う。

 ひさしぶりに見た時は面白かったけど、ずっとあるんだもん。


 おじいちゃんたちが買ってきてくれたって言うけど、それ前のひなまつりにも、その前のひなまつりにも聞いた。きっと、あたしが忘れてるんだと思ってる。覚えてるのに。


 それより別のおへやに行きたい。そわそわしてるけど、すぐにパパにおひなさまを見るように言われる。


 あたしはママのところに行きたいのに、行かせてくれない。パパひどい。


 つまらないので、五人ばやしのたいこを指でちょんちょんとつついてみる。音はならない。たいこなのに。やっぱりつまんない。

 ふくれてると、パパがたいこのおもちゃを出してきてくれた。これはきちんと音が鳴る。さっきの五人ばやしのたいこより楽しい。


 でも、こんなことするより、ママのところに行きたいのに。

 立ち上がると、パパに止められる。さっきからそんなことをずっとしてる。


 いつも見てるおひなさまより、ママの作ってるおひなさまが見たい。ママのおひなさまのがいい。


 なっとくいかないのでほおをふくらませながらたいこのおもちゃをたたく。パパがそれを見て小さくわらった。おもしろくないのに。


「ごはんだよー!」


 ママの声が聞こえてきた。もうママの所に行ってもいいよね。


 パパを見るとうなずいて立ち上がってくれた。よかったー。

 パパときょうそうしながらダイニングに行く。


「わぁ!」


 テーブルの上を見て、しぜんとうれしい声が出た。


 わぁい。今年もかわいい!


 ひなまつりの夕食はいつもおすしのケーキだ。その上にはおさしみや玉子で作ったお花とかいろんなものがきれいにかざってある。その真ん中にはいつもみたいにおいしい「おだいりさま」と「おひなさま」が乗ってる。


 これは毎年同じものじゃない。前はごはんで作ってたけど、今日はゆで玉子かな。

 かわいい! うれしい!


「パパ、明音あかねを引き止めておいてくれてありがとね」

「まったく。すぐキッチンへ飛んでいきそうになるから大変だったよ」


 ママとパパが何か言ってるけど、あたし知らない。ママが作ってるところも見たかったのに。パパのケチ。


「ママのおひなさま見たかったんだもん!」


 そう言ったらママがぎゅっとあたしをだきしめてくれた。


「さ、食べよっか」

「パパせっかち!」


 パパも楽しみだったんじゃないの?


 パパとママが顔を見合わせて笑った。今度はあたしも楽しい。


 だからあたしもいっしょになって笑った。

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あたしのおひなさま ちかえ @ChikaeK

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