ひなバイヤーまつり

@aqualord

第1話

「あれ?この雛人形、何か変じゃないか?」


フリマサイトを覗いていたタカユキは、違和感を感じた。


タカユキがフリマサイトで雛人形を眺めていたのは、転売する商品を物色するためだった。

転売先は海外を考えている。

純和風で、きらびやかで、大小各サイズが豊富にある雛人形はなかなか有望な商品に思えた。

しかも、雛人形は、ご家庭で年中出しているわけでは無く、せいぜい1年のうち1か月程度しか飾られない。それに、子供がそれほど大きくなるまで出しているご家庭は少ないはずだ。

そのうえ、海外に売れば、そんな限られた飾られ方では無く、年中飾って貰えて雛人形にとっても幸せだろう。


そう考えると、雛人形は格好の商品に思える。


そして、この時期、年賀状じまいや墓じまいみたいに、雛じまいを考えてるご家庭も多いだろう。だったら、一番商品が豊富で、価格が下がるのは今のはずだ。

いまそれなりの数を仕入れても、海外に転売するなら、季節商品扱いにはならないはずなので、じっくり在庫を捌けば良い。


タカユキはこう考えて、フリマサイトで海外で売れそうな雛人形を物色していたのだった。


そのタカユキの、バイヤーとしての目に止まったのが一対の雛人形だった。

シンプルに男雛と女雛と数点の付属品がついているだけのもので、ありふれていると言えばありふれている。

しかし、何かが引っかかる。


「なんだろう。」


よく見てみる。


人形自体の顔つきは、2体とも柔和ではあるが、崩れているわけでは無い。

体のバランスもおかしくない。

着物も柄も煌びやかではあるが、派手派手しさは無く上品だ。

商品としてみた場合、普通に合格点をつけられるだろう。


付属品はどうか。

菱餅はまあ、こんなものだろう。可も無く不可も無く、あえて言えば原色系だが、飾り物の菱餅ならこんなものなのだろう。

背景がわりの屏風もありふれた金地のものだが、桃の花らしい花の柄が入っている。

ぼんぼりが破れているわけでも無い。


「どこなんだ?」


商材の物色なのだから、違和感のあるものには手を出さず、次に移れば良いようなものだが、気になったからには仕方がない。


丁寧に見直していく。

転売の際に、傷みがあったり、備品が揃っていなかったりすると厄介なアフターケアが必要になることもあるので、慣れた作業と言えば慣れた作業だったりする。


「女雛は・・・多分大丈夫。」


他に出品されている商品と見比べたりもしながら、チェックする。


「男雛も・・・大丈夫。あれ?」


視線を外しかけたとき、人形の手のあたりに気になるところがあった。


「うーん?」


別の商品と見比べてみる。


「あ、板を持つ手が逆だ。」


タカユキは、男雛が杓を左手で持っていることにやっと気付いた。

一応、どちらの手で持つのか決まっているのか、ネットで確認してみる。

結果は、タカユキの勝ち。


杓は右手で持つもののようだ。


「だから、程度が良さそうで安いのに、買い手がついてなかったのか。」


おそらく製造過程のミスか何かであろう。

タカユキはようやく正解にたどり着けた喜びと共に、迷わず商品を購入した。

既に売り文句は完成している。


「トラディショナルなジャパニーズスタイルヒナドール。レフティタイプは極めて希少!」


まだまだ、タカユキのヒナバイヤー祭りは続く。

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