お内裏様とお雛様
敷知遠江守
童謡の有名な間違い
毎年の事ながら、なんで俺が一人で人形を飾らねばならんのだ。
「よろしくね」と猫なで声を出して妻は去っていくし、娘は安定の見てるだけ。
この雛人形を買った時の事は未だに覚えている。
娘が生まれてすぐに、お互いの両親が雛人形を買いに行こうと声をかけて来た。
俺はいらないと言ったのだ。そんな物を収納するスペースも飾っておくスペースも無いからと言って。
俺の両親は渋々だが諦めてくれた。だが妻の両親から娘が可愛くないのかと頭ごなしに怒られた。金はこっちが出すのだから良いじゃないかと言って。
予想はしていたが妻と両親で揉めに揉め、結局飾り棚に全て収納できるこの三段飾りを購入してもらう事になった。
「ねえ父さん、これなあに?」
娘が上段に置かれたカラフルな物を指差す。
始まったよ、これ何口撃。
俺に聞いて雛人形の事なんか解るわけないだろうが。俺が知ってるのは童謡の内容だけ。お内裏様とお雛様。
「なんだろうな。机かなんかじゃないのかな?」
机にしてはずいぶんと派手な色だが、座ってる前に置かれてるんだから、そんなところだろう。
「ふうん。段々になってて、なんだか使いにくそうな机だね」
くそっ、四歳児のくせに鋭いツッコミしやがるじゃねえか。
「ちょっとぉ。いい加減な事教えないでよね。それは菱餅。そんな派手なのが机なわけないでしょ」
どうやらうちの監督様、もとい妻が進捗確認に来たらしい。さっそくのダメ出しだ。
あれは三色の色が付いたお餅なんだよと妻は娘に説明。
「ええ! あんなに大きなお餅をお人形さんは食べるの? そんなにお腹空いてるの?」
娘の軽快なツッコミに妻は爆笑している。これはお人形だから大きいだけと説明はしたものの、ツボに入ってしまったらしく笑い続けている。
そんな妻にお内裏様とお雛様の位置はこれで合っているかとたずねた。
「私前も言ったと思うんだけど、上の二人で内裏雛ね。お内裏様とお雛様は間違いだから。左は男雛、右が女雛。この娘が間違えて覚えちゃうから止めてよね」
急に真顔になって怒りだす妻。
そんな妻を見て、また父さんが怒られていると娘がツッコミを入れる。
父さんがあなたに嘘を教えたから怒ったと妻は説明。
いや、だって世間では……
お内裏様とお雛様 敷知遠江守 @Fuchi_Ensyu
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