たった2歳の分かれ道
ゆずリンゴ
第1話
兄弟がいる人ならきっと一度は思った事があると思う。
兄に対して早く生まれたことを「ずるい」って。
少なくとも俺、
たとえば―――使う物があれば下の子は上のお下がりをそのまま使うことがほとんどだ。
本来なら新しく自分用に買ってもらえる物も兄弟がいるからと、自分だけ少しボロっちいのを使っていた事は記憶に残っている。服なんかも小さい頃のはほとんどが兄が昔に使っていたやつだ。『自分の為』に買ってもらえる 物が減るって損した気分になる。
いや、そんなことは良くてだ。
とりあえず俺には2歳上の兄がいる。そして俺は自分が弟でいることで、その立場の違いに嫉妬しているんだ。
でも別に兄が嫌いだから嫉妬してるとかじゃなくて……そう、むしろ仲はいい方で、なんなら少し尊敬しているくらいなんだ。
だって俺という人間は兄に
兄はモテる。顔も悪く無い……むしろいい方で、陽気で運動神経も抜群なんだ。
そりゃあ、モテるよ。少し悪ふざけが多い所も含めてモテるところなんだ。
そんな兄だから、嫉妬した。
『若のお兄ちゃんって凄い!』
『お前のお兄ちゃん面白いよな!』
『二道君のお兄さんってかっこいいよね』
―――なんて同級生の言葉は結構多かった。
小学校において2つ上の先輩は大人びていて、かっこよく目に映るものだ。きっと当時の同級生視点での兄は俺がいつも見ていた兄とは違って見えたと思う。
実際俺も2つ上のとある人に同い年の女の子とは違う魅力を感じていたから。
大人っぽくて、そばに居ると安心出来たりっていうのは同い年相手には中々抱かないだろう?
そんな―――兄の小学校からの幼なじみで、俺が小学校に上がる前から仲良くしていた2つ上の彼女、
キッカケなんて覚えていない。ただ、兄が連れてきた茜ちゃんと一緒に遊び、2年遅れて小学校に入ってからは立ち入りにくい3年の教室に立ち入ったりして、時にはイキリを覚え偉そうに俺に物を言う兄を
けれど……学年が違えば交流は少ないし、クラブ、委員会で一緒に居られるのもたった1年で距離が近づくような展開は無い。
修学旅行とか、体育でのペアとか、教室で隣に席になるとか……それは兄はできて、俺には絶対に不可能な事だ。
そうしていつからか……劣等感は次第に大きくなる。中学ともなると3年生の兄はサッカー部のメインキーパーを張り、学校でもある程度有名人だ。サッカー部のクラスメイトから『頼れる兄』を羨まれた。家に帰っては汚い格好のままに直ぐにぐったりとする兄は少し嫌だったけど、学校での兄は凄い人。
弟の俺が顔も知らないような2年の先輩からも「お、―――さんの弟じゃね!?やっほ!」なんて突然声かけられるくらい。
俺は中学において『弟』 だった。そう、多くが認識していた。俺自身すらも。決して、自分が劣って訳でも無いのに。
兄と俺は、双子では無いが顔もなんだか似ていた。性格だってそう。漫画のようにまではいかなくとも、人目見れば兄弟だと分かるくらい。
それと背だけは勝てなかったけど、テストの点数は圧倒的に、運動神経だって、当時の兄の年齢になる頃には劣らずとも勝る部分が多かった。それでも、『2歳の差』が埋まる頃に追い越したって意味がなかった。
唯一、1年だけの差で初めたサッカー。
それも中学に上がる頃には辞めた。
誰かに言われた。「弟もやっぱサッカーやるの?」
出来ない。追いかけられない。
「あの兄の弟」として期待されても、答えられない。1年の最低限以上の何かを求められていそうだから。
思い出すと、胸が痛い。中学の頃のことは。社会の上下関係体験として先輩と後輩の関係が出来ている中学は、
「茜ちゃん」は「茜先輩」で。兄には感じない大人っぽさを3年生の彼女を見て、顕著に感じた。それは、容姿だけで口を開けば知っている「茜ちゃん」だけど、妙に距離を覚えしまった。
感じた。これが2年の差なのだ。2年も違うだけでこんなにも離れている。
それから俺がまだ中学の途中。兄と茜先輩が付き合ったこと、それを兄から聞いた。
悔しい。ずっと一緒にいて、高校だってわざわざ同じ所行って、きっと俺の知らないところで、色々なドラマがあったであろうこと。
2人が付き合えたのは、あの二人だったからなのか、兄が兄だったからなのか。
もし、立場が違えば―――なんて馬鹿みたいなこと考えてる。
でもきっと、俺が考えているようにならない。だって好きな人が同じだったりして似ている俺らだけど違う所だってまたあるから。
しかし分かれ道が出来てしまった今、違う道を行こう。
ありがとうございました先輩。
終
たった2歳の分かれ道 ゆずリンゴ @katuhimemisawa
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