シャッタースピード1/15
タカハシアユム
プロローグ
夜が明ける。カーテンの隙間から漏れてきた薄ら明かりが部屋を照らす。また寝ることができなかった私は、ベッドで仰向けになりながら掛け布団をぼんやりと見つめていた。それはまるでいつか見た山の尾根のようなシルエットであった。
平日であるが特にどこかへ行かなければいけないということはなく、強いてあるとすれば冷蔵庫が空になったのでスーパーへ買い物に行かなければならない。しかし今日は天気が良いようで、とても日が出ているうちに外に出ようという気にはならないだろう。
買い物でないにしろ外へ出たってアヒルボートを横目に見ながら公園を右往左往するだけだし、友達と飲みに行くだとか恋人とデートするだとかそういったことができる人間ではない。一時期写真を撮ってなにかを成した気でいた頃もあったが、所詮現実を切り取っている作業をしてるだけに過ぎない。本を読んでも文字は私を通り過ぎていくし、ピアノを弾いても旋律が私を追い越していく。
何をしても私の手元に残るのは手には収まりきらない不安と孤独で、今にもそれらの呪詛に呪い殺されてしまいそうになる。
もうしばらく日の光を浴びていない。
今日も私は自重に押しつぶされたまま1日が過ぎるのを待つんだ。
現在の時刻が気になりスマートフォンの画面を見ると、ホーム画面は部屋に溜まってしまったゴミ袋のようにラインの通知で埋め尽くされている。皆私のことを心配しているようであったが、返信するために親指を上下左右に動かす気力すらない。
東京といえど朝晩は冷えるようで、手を布団から出していたものだから手先が冷える。「ああ、この冷たさがだんだん広がっていって、体の中心にきたときに私は死ぬんだ。」
そうだといいなと思いながら私はいつの間にか眠っていた。
シャッタースピード1/15 タカハシアユム @ayumu_exe
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