第3話~解決編~
寝室を開けた岡部は、血を流している夫を見つけた。
岡部はそのまま死んでいる夫に近づき、まるで鑑識かのように周りを確認し始めた。
すると、近くのテーブルに拳銃が置いてあるのを見つけて、岡部は手袋をはめて、持ち始めた。
私はどうすることも出来なかった。
本当は変に泣きじゃくり、私も一人の被害者を演じることもできたが、そんな余裕はなかった。
何故なら、先ほどの岡部の質問で疲れ切っているからだ。
寝室に入った時点で、もう私の負けは確定なのだ。
悔しいが、仕方ないと思っていると岡部が
「恐らく、組員がこのお宅に来なかったのも、意味がないからでしょう。既に拳銃を貰っている時点で、あなたは覚せい剤などに興味はないとはっきりと伝えたのでしょう。しかし、暴力団側も拳銃を使うとは思ってないでしょう。弾は一発しか込められていなかったのでしょう。見る限り弾は0ですね」
「・・・」
この刑事はかなりのやり手なのは分かった。
全ての推理が当たっており、拳銃の弾も全く初耳だが、合理性がなっている。
「実は、財布を拾ってもらった際、相談を受けていました」
「相談?」
「はい。奥さんが拳銃を隠し持っているのだが、どう警察に相談していいか分からないと」
「え?」
「そのため、私は時間とタイミングを見て、家宅捜索に入る予定でした。その直後銃声が聞こえたため、とりあえず私一人で来たわけです」
「じゃあ、もしかして」
「はい。表には警察官たちがいます」
「・・・」
つまり、夫を殺しても殺さなくても私は逮捕されていたのだ。
罪が軽くなるか、重たくなるかの違いであり、私は大きな過ちを選択してしまったのだ。
私は腰を抜かしながらも
「耐えられなかったの」
「はい?」
「あなたが見た夫は、本当の夫じゃない。ずっと世間で言うとモラハラみたいな扱いばかりされて、私はまるで奴隷みたいだった」
岡部はただ私のことをじっと見ている。
私は続けて
「だから、殺したの」
「ですが、あなたがもし冷静な判断が出来ていたら、きっとこんな悲劇は生まれなかったでしょう」
「でも、あなたなら分かるでしょ。私の気持ち」
「確かにモラハラは私もいかがなものかと思います。しかし、それで殺してしまったら、あなたはモラハラより、悪い立場になってしまう。そういうことなのです」
私はつい涙が出てしまった。
もう少し早く岡部が来てくれたら、私も彼に対して怒りを抑えれたのに。
銃刀法違反だけで捕まれば良かったなと自分を悔い、とんだ神様の悪戯だなと感じながらも、涙を拭いてから岡部に
「手錠かけてください」
「いえ、ここではしません」
「え?」
すると岡部は微笑みながらも
「私は手錠を持っていないので」
~終~
疑惑の主婦~岡部警部シリーズ~ 柿崎零華 @kakizakireika
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