まず、この世界は、ハードという言葉でも表せないほど人類にとって絶望的な状況です。
ほんの数秒前まで確かにあった命は、儚く、いや、無惨に散っていきます。
しかも、痛みを感じないまま死ねたらいいものの、時に魔物の手によって、命は弄ばれ。
とても楽に逝けたとは言えない名前も分からない人物が、沢山出てくるという始末。
そんな世界で、盗人で前科持ちの主人公は、なんと聖剣を抜いてしまいました。
けれど、だからといって主人公に無敵の力が備わるわけではないのです。
勿論主人公は剣なんて振ったこともなく、いくら聖剣が動きをサポートしてくれると言っても、世界を救えるほど力はありません。
今まで沢山のものから逃げてきた彼は、今回も逃げようとします。
しかし、ある人物と約束をしてしまい、今回ばかりは逃げるわけにもいかなくなってしました。
主人公は、はっきり言って雑魚です。
聖剣のサポートがあるとはいえ、まだ強敵相手には持っている力が足りません。
でも、彼には仲間がいます。
彼よりも強くて、頼れる、仲間がいます。
確かに、主人公は雑魚かもしれません。
それでも、盗人として生きてきたことで、仲間達にはない彼なりの闘い方があるのです。
決して、ストレスフリーではないけれど、何だかんだいって憎めないこの主人公とその仲間達の旅がどうなるのかは、とても楽しみです。
ぜひ、読んでみてください。
青き大陸アスールに位置するアンドレイア王国。
その端っこも端っこ、どぶ底生まれのどぶ育ち。
路傍の片隅でたったひとり、自分のためだけに、明日の糧を求めて娑婆を生き抜いてきた少年は、スリの技術に長けた、ちんけなぬすっとになる。
一攫千金を夢みて、聖剣を引っこ抜こうとしたところ、なぜか当の剣に見込まれてしまった彼は、脳内会話ができるその不思議な聖剣を携え、旅に出る。
ぬすっとソロとおしゃべり聖剣トロの名コンビ。ボケとツッコミをテンポよく入れ替え、軽口をたたきあいながら、ひとりとひと振りの愉快な珍道中――たしかに、そういう楽しさも充分ちりばめられている。でも、それはこの作品の魅力のほんの一面。
ゆめゆめ、この軽妙なタイトルに惑わされることなかれ!
これは、世界を飲み込むような巨大で暴力的な邪に対して、
人間だけが持つ、ひとひらの善意、かそけき愛、ひたむきな信念で、
無謀にも、抗っていこうとする物語。
「お、俺に任せとけ! 俺は、聖剣に選ばれた勇者様だからな!」
そんな嘘から始まる物語は、ひとりぼっちのはぐれ者が、仲間と出会い、パーティを組んで、勇敢な姫や、腕っぷしの強い騎士団長、腐れ縁のシスター、吟遊詩人に扮した天使に叛逆の悪魔・・・様々な出会いと別れを繰り返しながら、唯一無二の勇者になっていく超胸アツの道程。
絶望と、哀しみと、無力感の先にさす、一筋の光を信じて。
一途に貫く想いは、きっと、嘘すら真に変えるから――
五臓六腑にしみわたる、超弩級の王道ドラマをぜひご堪能ください!