夏の日の景色
華周夏
◆♢初恋は夏色♢◆
遥かいつかの夏休み
夏期講習の帰り
公園のベンチ
回し飲みした
缶のコーラ
貧乏だったね
購買のパンの残りの小銭
かき集めた
貴重なコーラ
君の汗
こめかみを伝って
顎から落ちた
私の心も 溶けて落ちたの
ベンチの裏にした落書き
重ねた指先
重ねた口唇
私のお気に入りの バニラの香りが
君の口唇を 淡いピンクに染める
「君が好き」
「ずっと好き」
公園中 飽きないくらい
蝉が鳴いていた
暑苦しい アブラゼミ
優等生っぽい ツクツクボウシ
夏の王道 ミンミンゼミ
木のベンチの裏に
マジックが
擦れて削げる
ペン先が
割れたマジック
それでも書いた
拙い願い
「大人になったら結婚しようね」
「教会で式をあげよう」
蝉時雨が時間を切り取る
あの時間は輝いてた
ずっと続くと夢見てた
ドレス姿の私は
何より綺麗でしょう?
他人にあげるブーケなんかより
節操もなく晴れ過ぎた空より
きっと私は綺麗なはず
真っ白い
詰襟のドレス
時間はこぼれ
丁度良く
人は年を取る
言い訳を覚え
狡くなり
嘘もうまくなった
君とは
知らない人になった
鐘は鳴る
鳩は飛ぶ
ブーケを投げる
花が散る
あのひと
隣の優しくて 厳しい人
あなたに
あなたに横顔が少し似ているの
誰も知らない私の秘密
こぼれる歓声
あの日のコーラ
私 本当は
コーラは嫌いだった
それでも美味しかった
君のクラフトを添加して
好きになった
逆光でも
君の笑顔を描けるくらい
今もあの日の君の
居場所はあるの
天を割る蝉時雨
約束は
少しは守るから
心の中に
あなたの居場所も
用意してあるから
蝉がなく度
表れる
初恋の君へ
私の青春
君の影
空の蒼さが憎くなるのよ
霞んで烟る
涙雨
◆◇了♢◆
夏の日の景色 華周夏 @kasyu_natu0802
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