森羅万象
鳥丸 飛鳥
第1話『開口一番』
「______景」
「おきて景!」
「んがっ!?」
同居人に叩き起こされる。
最近はいつもこうだ。
なぜか夜眠れなくて…、気づいたら朝だ。
ああ、俺は
街の隅っこで中古屋を営んでいる。
中古屋は死んだ父の跡継ぎだ。
父の死因は怪死だった。詳細は聞いてないが原因が不明らしい。
そして、同居人は幼馴染の
ウルフカットの青髪と黒い瞳のキレ目が特徴的な幼馴染だ。どうもぶっきらぼうですぐ怒るが、世話を見てくれる良いやつだ。あと胸がない。
「…綾香。あと5分寝かせて……」
「あんたねー!!!今何時だと思ってるの?開店は10:30でしょ??今11時なんだけど??」
「…へ?」
「へ?じゃない!!準備してきなさい!!!」
「わっかりました綾香様ァ!!」
ドタドタと走り、洗面台につく。
蛇口をひねろうとした瞬間、とあることに気づいた。
「なんだ…?これ…」
左手が、黒く染っている。
なんだ?汚れか?すぐさま蛇口を捻り石鹸を手に出して擦ったが落ちない。何度、何度洗っても落ちない。
諦めて歯磨きのコップを持った途端…、コップが黒く変色して溶け落ちた。
「…は?おい、おいなんだこれ!!」
どう考えても左手がおかしい。まるで呪われたみたいだ。
夢か?夢を見ているのか?
俺はそう思い、思いっきり右手で頬を抓った。
が、めっちゃ痛い。夢じゃなさそうだ。これが現実?嘘だろ?
「景、はやくして!」
扉の奥から綾香が俺を呼ぶ声が聞こえる。
は、はやくしろと言われても…左手が…。
「なにしてるの?」
俺の左手を見たのか、綾香は固まってため息をついた。
「…なに、その手?」
「こ、このコップみてくれよ!!」
俺は変色し、溶け落ちたコップを綾香に突きつける。
「俺の左手おかしいんだよ!!」
「…景、あなたおかしくなって…」
「ちげえ!!なんで信じてくんねーの!?」
「いや…あなただよ?まともな話するわけ…」
「俺のことなんだとおもってるの!!!????」
ダメだ!綾香は俺の事を信用してない!これも俺の日頃の行いのせいだ!チクショー!!!
「マッキーならすぐ落ちるよ。さっさとして。そのドッキリ専用カップも今すぐしまいなさい。どこからうちにそっくりなやつ見つけてきたの?」
「綾香!ちげーよ!!信じてくれ!」
そう言って俺は左手で綾香の服を掴んだ。
掴んだ途端、綾香の服が焦げたみたいに、俺が掴んだところが崩れ落ちた。
「…景?」
「あ…、えっと…ごめん綾香…その…これで信じてもらえるか?って…へへ…へ…」
「…気持ち悪い笑い方しないで。というか、今の何?」
「だから、左手が」
俺がそう声を荒らげようとした途端、インターホンがなる。
俺らが住んでるのは2階で、1階に中古屋があるわけだが…。1階の裏口のインターホンだろう。
誰か来たのか?そうか、開業時間にまだ店開けてないから客が怒ってるのか!?
「ほら、お客さん来ちゃったじゃん…。私行ってくるね。景はさっさと支度して!」
「はぃ………」
俺は説明を諦めて素直に歯を磨くことにした。
俺は歯を磨きながら左手を眺める。
なんか見覚えがあるような、ないような。
匂いはしない。感触は…触っちゃダメだと身体が言っている。
左手の感覚はある。痛くもないし痒くもない。
本当に触ったらものが腐り落ちるだけ…か。
「なんなんだ…?」
「兄貴!」
「ギャァッ!!テメッ!!!」
「えぇ…っと…ごめん…。まだ店開いてなかったしなにしてんだろって…見に来た…だけ。」
声の正体は
本当は学ランも着崩してたみたいだが…なんか、学校の怖い先輩に圧かけられてそれがもう怖くてしかなくなってちゃんと着るようになったらしい。金髪は親が金がもったいないっていうからそのままだってよ。ダッセーな…。
で…ちなみにこいつと血縁関係はない。じゃあ何で兄貴って呼ばれてるかって…?知らない。なんか俺知らぬ間に恩人になってたらしい。だから兄貴だってよ。もっとあるだろ…なんか…こう………ほら…景様とかさ…。いやそのほうがいやだな。
「颯馬、お前今日学校は?」
「あると思って行ったらなかったんだ。そういえば今日高三の模試かなんかで…へへ…忘れてた…。」
「もう11時回ってるけど…?ここら辺ずっとフラフラしてたってことか??」
「なんか…帰るの恥ずかしくて…」
「この根性無しが…」
こいつは…、ビビりで根性無しでヘタレ野郎だ。
中学生のころはクソ陰キャだったが高校生デビューをして失敗した。
本当に馬鹿なヤツだ。
「…兄貴?手どうしたんですか?」
「え?ああ…おいお前は信じてくれるよな!?朝起きたらこうなってたんだ!!ほらあ!!!」
「わかった!わかりましたからそんな突きつけないでくださいぃ!!」
俺のセリフを聞いた途端、綾香はため息をついて
「颯馬くん、あんま気にしなくていいよ。景ちょっとおかしくなっちゃって。」
「え?ああ…中二病って…やつ?」
「颯馬ァ!!??」
「あんたまず口をゆすぎなさい!!!歯磨きを完了させて!!!あと顔も洗ってね!!」
「この左手じゃ顔洗えねえよ!」
「洗ってあげたほうがいいっすか…?」
「やっぱ俺一人で洗うよなんか介抱されてるみたいでやだ…」
「ええ……」
俺は口をゆすいで、次にどうにかして右手だけで顔を洗った。
結果服がびっしゃびしゃになってしまった。
「…洗面台に頭から突っ込んだの?」
「頑張って右手だけで洗った結果ですぅー!!」
「そう…そんなに左手がおかしいっての?」
「さっき服が変色して落ちるの見ただろ!?」
「…そうだったね…」
「えっ?えっ?服が、落ちる?えっ?」
颯馬は俺と綾香の顔を交互に見ながら混乱しているようだ。
綾香はそんな颯馬を察して、自身の少し焦げ落ちた所を彼の前に引っ張って、
「ほら、これ。ここだけ焦げ落ちたみたいになってるでしょう?」
「…これ、兄貴が?」
「そう。一体なんなの?なにか思い当たる節はないわけ?」
「…し、信じてくれるのか!?綾香!?」
「いいえ?信じてないけど。でも、一旦話を飲み込んだ方が良さそうだ思って。」
綾香はいつも俺を疑ってかかる。
たまに納得したかと思えばあとあと文句を言ってきて、あれは納得していたふりだと判明する。
本当に可愛げのない女だ。胸もないし。
「わ、わかった。じゃあ信じてくれた体で俺は話すぞ?いいか?俺の左手を治す解決策を考えてくれ!!」
数秒の沈黙が流れる。
俺、なんかしたか?
もしかして「そんなん分かるわけねーだろなんだこいつバーカバーカ」とか思われてるか…!?
「誰かから恨まれてるんじゃない?」
「俺知り合い少ないのに??」
「自分で言って悲しくないの?」
悲しい!悲しいよ当然!!しょうがねえだろ義務教育もまともに受けてねえんだから!!!
泣きそうになっているとずっと考え込んでいた颯馬が口を開く。
「…原因がきっとどこかにある訳ですよね?」
そう一言言うと颯馬は目を輝かせて
「俺、本で読みましたよ!たとえば…物…とか?呪われててその呪いにかかったとか…、よく聞きますよ!」
「いいぞ颯馬!!そういうのだ!!」
なんか売れないライトノベル臭いけどそういうのだ!!
俺に考えられる原因はそれしかない!!恨みなんか買うわけなかろう!!!はっはっはっ!!
「じゃあ倉庫いく?昔からものが沢山あるとしたらそこくらい…」
「でも…今日発症したんだぞ?最近のものとか…じゃないか?」
「兄貴!一概にそうとは言いきれないっすよ!もしかしたらずっと昔からいすぎて気に入られたとかあるっすよ!」
「…じゃあどっちも回ればいいじゃない…」
俺らは中古屋を一旦休業にし、俺の左手の謎を解明すべく、本店の方で、何かおかしいものはないかとくまなく探した。
「颯馬!綾香!なんかあったか?」
「いいえ、なにも。」
「やっぱ倉庫っすよ!!!倉庫!!」
「颯馬…お前、この状況楽しんでるよな?」
「いいえ!全く!」
「本当かよ…」
なっぜか颯馬は楽しそうにしてたが…まぁ、そんなことは置いておいて、俺らは倉庫を探すことにした。
倉庫の前に着いて、倉庫の扉を開けると禍々しい空気が俺らを襲った。
「か、確実にここだな…。ここに俺の左手がとんでもない事になった秘密が眠ってる…」
「早く進むっすよ兄貴ー!!」
「声のボリューム落として」
「ご、ごめんなさい…」
倉庫の奥まで進むと、この禍々しい空気の原因となるだろうものを見つけた。
俺は手に取って、まじまじとそれを観察する。
ただの…箱?
中に何かあると思い、開けてみると…、継ぎ接ぎにぬわれた人形。
箱も古いし、倉庫の奥深くに眠っていたからおそらく相当昔の物だろうな。
父がこれは出せない、としまっていたのだろう。俺ですら見たことなかったんだ。
「…これが原因だって?」
「ああ、俺の感がそう言ってる。」
「ふーん…、じゃあ、そういうことでいいんじゃない?」
「じゃあそういうこと!?」
「いやだって…貴方、左手で物に触ると物が溶けるって言ったじゃない?でも貴方…今ガッツリ触ってるよね?左手でその箱…。」
「えっ」
た、たしかに…俺…気が付かなかった………。
え、じゃあなんなんだ!?なんなん………
いやまて、逆じゃないか?
こいつが原因だから俺、左手で触れてるんじゃないか?
こいつが何かを引き起こしてる…のでは?
「いや、違う…、逆だ。逆だよ綾香!甘い、甘い!天津甘栗くらい甘い!!」
「殴ってもいいかな」
「こいつが原因だから俺が左手で触れてるんだぞ!!あと殴らないでくれ!痛いから!」
「兄貴…!!」
「なんなのあんた達…」
森羅万象 鳥丸 飛鳥 @Tori0416
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