七章 2

「お母様……!?」

「……ふう、そうだな」

 私とお父様が話している最中に後ろからお母様が部屋に入ってきた。私も意識していなかった人の訪れに驚愕するも、お父様は何事もなかったかのようにお母様の横槍を受けた。

「彼が来てから、ルミエルの姿がとても楽しそうだったのよ?」

「ああ……」

「今も彼のために見せたことのない熱心さを出している」

 なんとなく、言いたいことはわかるけど、本人を前にしているということを知らないのかな? 過去の自分のことを出されて赤面するしかないんだけど?

「それに今は一皮剥けたんです。認めてあげましょう、今のこの娘なら何も問題ありません」

「……そうだな」

 結局、お母様が会話に入ってから全部お母様が持っていってしまった。でも、これは私の言葉で伝えなくちゃいけないこと。だから、もう一度、何度でも、私は言い続けないといけないんだ。

「お父様、私最後の我儘を言います……彼を助ける手伝いをしてください!」

「……お前の覚悟は受け取った。もう私からは何も言うまい」

 お父様が許可を出してくれた。そのことにお母様と顔を向かい合わせて、お互いに笑みを浮かべる。

「だが! 絶対に連れ戻してこい。それが条件だ」

「はい!」

 こうして、私は彼の捜索をできるようになった。

「それにしてもどうすんだよ」

 お父様との話し合いを終えて、私は部屋に戻ってきた。そして、ルーナに頼んで彼と直接の関わり合いと恩があるメイに来てもらった。

「まずは似顔絵を用意しましょう、それから彼がやったと思われる殺しの整理です」

「似顔絵はこちらやっておきます。死神の暗殺に関しては……直近からそうだと思われるものを手あたりになりますね」

「そうだね、整理は私がやっておく」

 ひとまず、彼が居なくなってからの足取りをなんとなくでもいいから掴んでおきたい。彼がどんな情報源を持っているかは知らないけど、今回の戦いはこちらが圧倒的に不利だ。私たちだけで追い詰めることなんて到底できはしない。

「なあ、俺は何すればいいんだ?」

「ん〜これと言っては……ないかな?」

「はあ、ならなんで呼んだんだ?」

 少しむすっとした顔のメイに少し申し訳なさが残る顔を向けた。 

「今、彼のことはあんまり……でしょ?」

「まあ、そうだな。この家の連中からしたら逃げ出した奴って思ってるんだろうけどな」

「だから、彼について話せる人はそう多くはないの」

 今、彼に良い感情を持っている人はほとんどいない。付き合いが長い人は私を泣かせたことに怒っているし、騎士たちは逃亡を一切止めることができなかったことを恥じている。

「彼に対して恩もあるあなたなら味方になってくれると思ったから」

「まあ、ここで働いてお金ももらえるようになったし、恩はあるけどさ」

 腕を組んで頭を捻らせているメイ。大きくため息をついて、こちらを見てきた。

「分かったよ、手伝いくらいしかできないけど、頑張ってみる」

「ありがとう、メイ」

 これである程度の準備ができた。待ってて、必ず見つけ出してみせるから。

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「破壊系令嬢は罠も仕掛けも心も壊す!? 死神少年は令嬢にめちゃくちゃにされました」 ろうこう @mayaten2

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