第5話

「……ん、」


朝、目が覚める。

実に数年ぶりに快眠した朝だった。

常に復讐を誓っていたキッド。

眠りが覚めても体の中には常に怒りと恨みばかり溜まっていた。

寝覚めは悪く気分が悪い日はしょっちゅうだ。

けれど今日は違った。

ワインを飲んだ為だろうか、何時もよりも摂取量が多かった。

それが原因であるのかとそう思った。


「いや……違うな」


昨日はあれほどまでに上機嫌だったのは酒をかわしてくれた人物がいてくれたからだ。

言葉こそ通じないもののともに同じ時間を過ごしたのだ。

少なからず絆のようなものを感じただろう。

何よりも彼女は美しかった。

心が弾んでしまったのだ。

そのことをキッドはまだ理解していなかったが無意識にそう感じているのは確かだ。

寝返りを打とうとするキッド。

だが腕が固定されていてなかなか動かない。

腕を拘束されているようだった。

ゆっくりと目を開く。

自分を抑えている原因を探るべく視線を右腕に向ける。



「っ?!」


そこでキッドは驚愕の表情を浮かべてみせた。

右腕はがっしりと掴まれている。

夜中に出会ったエルフが寝ぼけているのかキッドの腕を抱き枕として思いっきりしがみついていた。

キッドは呆然としながらも驚いていた。

彼女の拘束はキッドの右腕を密着させている。

それはすなわち彼女の発展途上の胸の谷間に押し付けられている状態なのだ。

キッドの二の腕に感じる柔らかな肉の感触。

これが女性の肉体であるなど生まれて初めて知った。

思わず顔を赤くするキッド。

彼女の体は胎児の様に身を包めていて、キッドの掌が、エルフの太股の間に挟まっていた。

朝っぱらから性欲が暴走しそうな状態。

キッドは右腕を引っ張り抜こうとした。

けれどエルフの拘束はかなり強かった。


「おい、起きろッ!」


声を上擦らせながらキッドは言った。

キッドの父親は保安官だった。

秩序と法律を守り正義に殉ずるような男であった。

彼の正義感を汚すような真似はしたくはなかった。

だから必死になって彼女を起こそうとしている。

腕を動かすとエルフは甘い声を発した。

敏感なところに触れられたような声色だった。

その声とともに拘束が緩む。

その一瞬の隙を見逃さずキッドは腕を引っこ抜いた。

その衝撃でエルフはゆっくりと目を覚ます。

体を起こして紫色の瞳を手のひらでこすっていた。


「くッ……俺が先に、ベッドを使ったのは悪かった、だが、だからと言って同じベッドで寝るか、普通は……」


そのような小言を口にするキッド。

しかしエルフは首を傾げていた。

キッドの言葉などわかるはずもなかった。

それどころかまだ寝ぼけているのだろう。

思いっきり両手を開き満面の笑顔を浮かべた状態でキッドを抱きしめた。

そのまま柔らかな唇がキッドの耳を優しく噛む。


「い、ぐあ!?」


一種の愛情表現だろうか。

その行為は性欲をため込んだキッドにとっては刺激の強いものであった。

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異世界侵略者によって領土を奪われ虐げられる主人公は、最強の魔銃を継承し成り上がる。エロいエルフとガンマン女とグレイ星人が仲間です。 三流木青二斎無一門 @itisyou

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