高校生活再履修って本当ですか!?

黒瀬

第1話 卒業

チャリで片道25分、都会でも田舎でもなく。

程よく部活も勉強もできる若干自称進学校。

3月1日、俺はそこを卒業した。いや、今からする。


何だって今は卒業式真っ最中なのだ。


今いる体育館に初めて入った約三年前。思い返せばついこの間な気も、もう随分と昔なような気もする。高揚感と緊張の入り混じった独特な雰囲気、あの空間はとてもいいものだったと思う。そもそも入学式で新たに始まるであろうキラキラ生活に心躍らない奴なんて、行きたかった所に行けなかった学歴厨予備軍か、転生はたまたタイムスリップなんかで人生n回目の奴ぐらいだろう。


こんな風に入学式なんかを思い出せるほど余裕があるのは、そこそこ充実した高校生活を過ごせたからである。自分で言うのもあれだけど。

引退試合で県大会までいったものの最後は散々で仲間と悔し涙を流したサッカー部。

死ぬんじゃないか?って気温で全力出した体育大会。

女装させられたけど総合2位取った文化祭。

その他考えても結構沢山充実してたゴロゴロ思い出がある。

あー満足満足。楽しかったな、高校生活。


こんなこと言ってると、今日にでも死にそうだけど。未来の予定だってしっかりある。

進学先も、この卒業式後の友達とのメシも、卒業旅行だって。

いや、楽しみなことしか無いぞ、ぶっちゃけ。

えぐい、えぐいぞ、えぐすぎる。


そんな事考えてたら、卒業式も終わっていた。


✕✕✕


「やっべ、荷物カバンに入り切らねーんだけど!」

「だから計画的に持って帰れって言ったのに…」

最後のホームルームも終わって、女子がひっとしきり泣いて。

写真取って、同窓会で絶対に集まろうなっとか言って。

気づいたときには解散の号令がかかっていた。


そして今ここで自身の計画性のなさに大ダメージを受けているのが高坂。

こいつは高校入学当初からの俺の友達。

1年同クラ、2年は隣のクラスだったけど、3年ではまた一緒だった。

まあ要するに高校生活をほぼ一緒に過ごしてきた奴だった。

「なあ陽太〜この資料集と教科書ココ置いといたら無くなったりしねぇかなー??」

「もうこんだけは俺のカバンに入れていいから。ってかお前荷物入れるようって言ってた手提げは??」

「あ…」

見ての通りこいつはアホだ。

テストは毎回勉強合宿やってたのに赤点ギリギリ。

まぁほんとよく卒業できたもんだ。


ぐちゃぐちゃになってかろうじで紙の形を保っている今年度の初めにもらったプリントとか、2つ隣のクラスの奴から半年以上仮パクしてたという教科書を返しにいったり。(これに関しては持ち主はいったいどうやって無いまま過ごしていたのだろうか。はたまた、何で帰ってこないのに催促しなかったのか)まぁなんだかんだで荷物がまとまって俺達は校舎を出た。


「あれ、チャリキー教室かも。」

いつも入れている胸ポケットが何となく心もとないと思っていたら、案の定鍵を忘れてきていた。

「俺、取り入って追うから先にいつもの店行っといて。」

「おっけー早く来いよ!」


自転車置き場で高坂と別れて、俺は元来た道を帰った。


✕✕✕


さっき別れを告げたと思っていた教室に戻ると、至って簡単に鍵は見つけ出せた。

今まであんなに賑やかだった教室に、一人静かにぽつんといると少し変な感覚だ。

胸が何となくざわざわする。

不快なざわざわ。

まるで、何かを忘れているような。忘れてきたような。

いやいや、何言ってんだ。

卒業式中にあんなに充実していたと確信してたんだ。

今更思い残すことも、心残りだって一つもない。

そんなことを考えてたらポケットのスマホが震える。

「やっべ、高坂待ってんじゃん。」

急いでチャリキーを持って教室を飛び出た。


✕✕✕


「まったく、おっせーよ!もういつもの奴注文しちゃったからな!!」

「すまんって、ありがとう。」

学校の前の坂をまっすぐ下って、信号を右に曲がって細い道を入って突き当り。

俺らが高校入学二ヶ月目で見つけた、隠れ家的家系ラーメン屋。

ちょっと奥まってるせいもあってさほど客量は多くないが、味は絶品だ。

「はい、いつもの豚骨と担々麺な!ねぎ多め、ごま少なめ、辛味多め!!」

「おッ!店長ありがとう!!」

「ありがとうございます!!」

「いいってことよ〜てかお前ら今日卒業式だろ?その後食ってんのがこんなんでいいのかよ!」

「まあ!わざとここってか!!食べに来たってか!!」

ここの店にはほぼ毎週来ていた。

だから店長ともそれなりの親交。

俺達の”いつものメニュー”も完璧に覚えてくれてて、高坂に至っては何度もバイトに誘われている。


「でももうこんな頻繁に来れなくなっちゃうな…」

さっきまであんなに楽しそうに店長と話していた高坂がやけにしょんぼりしている。

「確かに、お前地元離れちゃうしな。」

こいつは勉強こそほとんどダメダメだけど、持ち前の愛嬌と人当たりの良さで地方国公立の指定校をなんとか手に入れた。何でこいつがっ!って気持ちが無かったわけではないが、こいつの人の良さは俺が一番理解している。悔しいが認めざる負えない。

「こうやって俺らが気軽に会うことも、少なくなっちゃうんだな…」

高坂の顔が段々と曇っていく。

「まあそれが、大人になるってことなんじゃない?」

「深いなw」

しみじみとしてた癖に急に高坂の表情が晴れる。

よかった、よかった。何となくこいつにしょんぼりは似合わないからな。


「店長!ごちそうさま!!こっち帰ってきたら絶対食べに来るから!!」

「お前が来ないと寂しいからなーずっと待ってるよ!そんで小林くんもこいつのお世話係おつかれさん!!」

そうして店長から差し出されたいかにも職人って感じの手には、飴が2つ転がっていた。

「あ、ありg「ありがとううううううう!!」

俺の感謝の言葉はとうとう涙腺の結界が切れてしまった高坂にかき消された。

おい、お前鼻水やばいぞ!?まて、まてまて近づくな!!おい!俺の制服!!おいいいいいいい!!


✕✕✕


なんとか高坂を泣き止ませて、曲がり角でお別れして。

家まで何となく感傷に浸りながらチャリを走らせていた。


「ただいま〜」

「あ、おかえり。」

まだシワも汚れも少ししかついていない同じ高校の女制服を着た奴に迎えられる。

こいつは2つ下のFJK。妹の春奈だ。

「今からお風呂はいるから、その後入って。」

冷たい視線をこっちに浴びせながら命令された。

卒業を祝う言葉はなかった。別に言ってほしかった訳ではないけど。

仲は悪くはない、と思っているけど。

そんなに話したりもお互いに日常生活で深く関わっている訳でもない。

高校こそあっちがついてきて一緒だが、学校であっても目線の挨拶ぐらいだった。

よくあるフィクションにあるキラキラ兄妹ものみたいな展開はまったくない。

まあでも実際兄妹ってこんなもんだろう。


言われたとおり、妹が出たであろう時間の念の為30分ほど開けて風呂場へ向かう。

「って、だらしねぇな…」

脱衣所にある洗濯機にテキトーに入れたがゆえ、若干こっちに顔を出しているパで始まる三文字のヤツと目が会う。まあ別になんとも思わないが、こういう所はもうそろそろ治したほうが良いんじゃないかと、兄として、いや人として思う。

自分の服と一緒にヤツもしっかり洗濯機に入れて。シャワールームに入る。

今日はもう湯船は辞めだ。疲れた。

本当は疲れたときほど湯船に浸かって方が良いなんてよく言うけど、実践するのは難しいものだ。


風呂を出て、明日は特に用事もないから適当に髪を乾かして、歯磨きして。

部屋に行ってベットに入る。

なんだかんだいつもとそんなに変わんないなぁ、と少しがっかり(?)しながら目を閉じた。


✕✕✕


「お兄ちゃん起きて!!入学式遅刻するよっ!」

聞き馴染みのある声、さっきも聞いた声。

でもまて、なんて言った??

「にゅっ、入学式…!?」















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