彼女は幸せを求めて…… 夫の狂気を開く。
久遠 れんり
きみは幸せでしたか?
「きみは幸せでしたか?」
見下ろしながら彼女に問う。
暗くてハッキリはしないが、静かに微笑んだ気がした。
「そうか……」
俺は黙って立ち上がり、通りすがりに、柱についているスイッチを押した。
これは、鉄くずを粉砕する機械。
人間なんてひとたまりも無い。
彼女は浮気相手と混ざり合って、一つとなった。
「幸せになれよ…… じゃあな」
結婚をして五年だが、三年目にはレスとなっていた。
俺が出かけるときには、いつもついてきていた彼女。
それが鬱陶しくも感じたが、それが普通だった。
それが、一年くらい前だっただろうか?
彼女が友達と飲みに行くと言ってその晩、酒の匂いは良いとしても、吐息から男の体液が匂う。
多分それが最初だった。
「昨夜は随分と飲んだんだな」
「そうね、下らない話で盛り上がって…… 楽しかったわ」
そう言って、珍しく少し嬉しそうな顔をする。
その日彼女は、友人達と飲みに行っていた。
少しこじゃれた創作料理屋。
肉や魚をアレンジして、フレンチやイタリアン風に仕上げるが、味は和風。
そこでまあ、昔の職場で一緒だったお友達達、当然当時の上司や同僚のことについて盛り上がっていた。
そんな店内で、別グループの男と目があう。
間違いない、彼は……
大学時代に付き合った、初めての相手。
最後は、彼の浮気により破局。
実際彼は、同級生の中で人気がありモテた。
自分のような引っ込み思案とは違う。
付き合いだしたのだって、たまたま彼が空いていたから。
セフレにでもする気だったのか……
でも、彼に求められるのが嬉しかった。
なのに、好きな女が出来たと言って、彼はあっさり出て行った。
それで終わった関係、でも私は……
彼のことが好きだった。
卒業して、就職。
主人、優しかった先輩と、そういう関係になった。
淋しかったから。
一人でいると思い出す、彼との充実した時間、優しい笑顔。
それはもう、他人のもの……
そんな思いを諦めるように、亭主の望みのまま結婚をして丸三年。
なぜか子どもが出来なかった。
仕事は結婚時、妊活のためにやめた。
家に一人、家事をして自由な時間。
最初は楽しかった。
でも、一人の時間が多くなると思い出してしまう。
そう結婚をしていても、私の心は旦那には向いていない。
そのため、求められても無意識に拒んでしまう。
いまも、ずっと彼が好きだった。
そんな生活だったのに、再び会ってしまった。
「お疲れ、これからどうする?」
「私たち、主婦と違って明日も仕事なのよ」
「良いわね、主婦。憧れるわ」
気楽なことを……
「やってみたら判るけれど、そんなに良いものじゃ無いわよ」
そう言って友人と別れて、馬鹿な私は彼が出てくるのを待ってしまった。
あのグループの中に彼女がいたかもしれない。
それともすでに結婚をして……
もう私たちも三十歳近い。
ありえる話。
外で、彼を待っていたのに、なぜか心が弾む。
別れの辛さ、そんな物は無かったかのように。
三十分ほどして彼らは出てきた。
私は彼らの集団を追いかける。
彼らは
一人になった彼に声をかける。
「久しぶりね、元気だった?」
「ああ、やっぱり凌子だったか。大人っぽくなっていて、人違いだったらどうしようかと思って…… 声をかけれらなかったよ」
そう言って、照れ笑い?
「振ったのを後悔した?」
「そうだな。だけど指輪、結婚をしたのか?」
「うん。もう丸三年」
「そうか…… じゃあな」
そう言って、彼らしくもなく帰ろうとした。
あわてて呼び止める。
「明日早いの?」
「いや?」
「じゃあ、一軒だけ付き合いなさいよ」
「旦那に悪いだろ」
「良いのよ、私にはもう…… 興味が無いようだし」
嘘をついた。
興味が無いのは私の方。
「じゃあ行くか」
そう言ってお店の後、一人暮らしの彼の部屋まで行ったのに…… 罪悪感が顔を出す。
「私あれだから、お口で満足をして」
そう言って、一線は越えなかった。
だけど駄目ね。
再び燃え上がった心は、止まらない。
数日後、彼の元へと戻ってしまった。
彼の部屋へと通い始める。
旦那がついてきているとも知らずに。
そして、夫は私が思っていた以上に私が好きで、嫉妬深かった。
彼のマンション。
「遅かったな」
「買い物をしていて、ほら。ご飯まだでしょ。あがっ……」
目の前で、凌子が崩れ落ちる。
「何だお前!!」
「こいつの旦那だよ、初めましてだな」
そう言って、スタンガンだろうか?
俺達は気を失った。
目が覚めたが、目が見えない。
口も開かない。
ただ、音だけが聞こえる。
多分横で凌子が呻いている。
「いつの間に…… 金がへっていると思ったが、旅行まで行ったのか。そうか、俺にはこんな顔を見せなかったが、そうなんだな」
そう、俺との暮らし。彼女はいつも、どこか冷めた感じだった。
だけど写真に写る彼女は……
そこで何かが弾けた。
邪魔者が身を引き、消えるのも良いが、なんとなくそれは悔しい……
二人仲良く、一緒になれば良い。
ここは、違法な回収業社。
ある日、姿を消し、その処理が回ってきていた。
危険物や違法廃液。土壌汚染があり、手が出せなかったが役にたった。
「幸せになれよ…… じゃあな」
彼女は幸せを求めて…… 夫の狂気を開く。 久遠 れんり @recmiya
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