第88話 新たな装備
ヴェールさんとの修業を開始して、1週間が経った。僕の流力は以前よりも遥かに多くなった。ヴェールさんの攻撃や動きにも対応できるようになった。以前よりももっと強くなれたと実感している。
光二と猿太郎もタマオさんと修業して強くなったらしい。タマオさんが『今の彼等なら大抵の相手なら太刀打ちできる。それくらいには強くしたよ』と言っていた。
ヴェール
「想夜、光二、猿太郎……。お前等はこの修業を得て、以前よりも遥かに強くなった……。俺やタマオくんが教えられる事は叩き込んだ……。あとはやれる事をやるだけだ。……これが最終確認だ……」
ヴェールさんは僕等を見ながら質問する。
ヴェール
「お前等が挑むのはこの国と言っても過言ではない組織だ……。美雪って奴を助け出せようが、助け出せなかろうが、挑んだ以上……これから先、お前等は狙われ続ける事になるだろう……。平和な日々は送れないだろう……。それでも行くか?」
想夜
「うんっ!!」
光二
「想夜と共にいると決めた時から覚悟はできているぜっ!!」
猿太郎
「想夜が行くのならっ!! 例え地獄の業火の道だろうがっ!! 俺は共に歩んでいくと決めとるんやっ!! 想夜を幸せにするのは俺の役目やからなっ!!」
ヴェール
「……ふっ……。そうか……。お前等……いい目になったな……」
ヴェールさんはそう言うと棚から鬼のお面を3つ取り出す。僕には赤鬼のお面、光二には白鬼のお面、猿太郎には黄鬼のお面をそれぞれ渡した。
ヴェール
「お前等の無事を祈って新しい変身お面を作った。受け取れ」
想夜
「うわぁっ!! ありがとうございますっ!! さっそくつけてみていい?」
ヴェール
「おう。いいぞ」
想夜
「じゃ、さっそく。変身」
光二
「俺もやるかー。変身っと」
猿太郎
「
僕等はほぼ同時に鬼のお面をつける。すると僕等の服装が一瞬で変わる。
僕の服装は上には黒いコート。中は赤いスーツの姿に変わる。手には革製の黒の手袋、靴は黒いローファーだ。
光二の服装は黒いコートに白いスーツ姿に変わる。手には薄い布地の白い手袋、靴は革製の白い靴だ。
猿太郎は黒いロングコートに黄色の
ヴェール
「なかなか似合っているぞ」
猿太郎
「ちょっと待てやぁっ!! ヴェールさんよぉっ!!」
ヴェール
「ん? 猿太郎、どうかしたか?」
猿太郎
「なんで俺の変身衣装だけロングコートに褌だけなんやぁっ!? 絶対におかしいやろうっ!? 俺ももっとカッコいい感じにしてほしいんやけどぉっ!!」
ヴェール
「あぁ……その事か……。俺も猿太郎の変身衣装は最初はスーツにするつもりだったんだがな……。タマオくんの強い希望で褌になったんだ……」
猿太郎
「なんでやねんっ!! これやとまるで変態やないかぁっ!! 俺は露出する趣味はないでぇっ!!」
タマオ
「猿太郎くんは顔は好みの顔じゃないけど……なかなかいい身体しているからね。いっぱい見てもらった方がいいと思ったんだ」
猿太郎
「嫌やわぁっ!!」
タマオ
「それに……猿太郎くんの『真名解放』の事を考えたら……露出している方がいいんじゃないかと思ってね。裸に近い方が出しやすいでしょ?」
猿太郎
「そ、それは……そうなんやけども……。せやけど褌姿じゃカッコがつかへんよぉっ!!」
想夜
「そういえば、僕、光二と猿太郎の『真名解放』は見た事ないけど、どんな感じなの?」
光二
「まー、戦う時に
想夜
「あ、本当だ。まるで新郎の格好だね」
ヴェール
「俺も最初はただの白いスーツにするつもりだったんだ。けど、タマオくんの強い希望があって薔薇の装飾も追加したんだ」
タマオ
「光二くんは声も顔も体も僕の好みだから……きっといい旦那さんになるだろうなぁって思ってね……。きゃっ」
光二
「おー?」
ヴェール
「ま、まぁ、いいか。お前等の変身衣装は以前の試作品のスーツよりも防御力を上げてある。黒いコートには耐熱、耐冷、防水、防弾、防刃、防塵などの効果がある。どんな環境にあっても大丈夫なようにしてある。あと新たにお前等に合ったそれぞれの武装を装備させてある」
想夜
「僕等にあった武装?」
ヴェール
「まずは想夜の装備だが、黒いコートの内側を見てくれ」
黒いコートの内側を確認すると左右の胸付近にナイフが2本ずつ装備されている。刃の部分にはカバーがつけられてあり、安全面にも気を遣われている。
ヴェール
「想夜のメインウェポンはクマさんだから使わないかもしれないが……何かの理由でクマさんと別行動になった時の事を考え、隠し武器としてナイフを4本装備してある」
想夜
「おぉ、すごく切れ味が良さそう……」
ヴェール
「他にも、手袋に流力を流し込めば、そこから流力を放出させ、即席の盾を展開させるシステムが
想夜
「おぉ」
ヴェール
「次に光二の装備だが、まずコートの内側に三節棍を搭載している」
光二がコートの内ポケットに手を突っ込むと三節棍が出てきた。
光二
「おーっ!! マジで入ってたわーっ!!」
想夜
「それ、どうやって入っていたの?」
ヴェール
「光二の能力なら盾とかいらないんじゃないかと思ったが、手袋に想夜の手袋と同じように流力を流し込めば、その流力を放出させて盾の役割をする機能をつけてある」
光二
「マジかー」
ヴェール
「他にもその白い薔薇を取り出してみろ」
光二はスーツの胸ポケットに装飾されている白い薔薇を取り出す。するとその薔薇はスコープがついた白いスナイパーライフルに変化したっ!?
ヴェール
「超遠距離狙撃専用武装『
光二
「ヴェールさんの……そんな大切なモンを……」
ヴェール
「気にするな。さっきも言ったが、俺のお古だから気にせず使え」
光二
「けどよ……」
ヴェール
「そうだな……代わりと言ったらなんだが……想夜の事を頼むぞ」
光二
「おう」
猿太郎
「ヴェールさん、ヴェールさん。俺の装備は?」
ヴェール
「ん? 猿太郎の武装か? 猿太郎の武装だが、グローブつけているよな?」
ヴェールさんは懐から割り箸を取り出すとそれを猿太郎の前に差し出す。
ヴェール
「ほら、持ってみろ」
猿太郎はボクシンググローブをつけたその手で割り箸を受け取る。
ヴェール
「その割り箸を食事するように動かしてみろ」
猿太郎は渡された割り箸を握るとボクシンググローブをつけているにも関わらず器用にカチカチと動かす。
猿太郎
「なっ!? なんやとぉっ!? ボクシンググローブをつけとるのにめっちゃ動かしやすいやとっ!?」
ヴェールさんは懐から大豆がいっぱい入ったビニール袋と皿を2枚取り出す。皿を2枚ともテーブルに乗せる。片方の皿に大豆を全て入れると猿太郎を見る。
ヴェール
「大豆を箸で摘んで
光二
「いやいや、いくらなんでもそれは無理じゃねーかー? 猿太郎は俺達の中で最も手先が不器用なんだぜー」
ヴェール
「いいからやってみろ」
猿太郎
「いやいや、いくらなんでもそれはできへんって……」
そう言いながらも箸を大豆に近づける。そして大豆を1粒掴んでみせたっ!?
猿太郎
「なっ!? 大豆を箸で掴めたやとぉっ!? 馬鹿なっ!?」
猿太郎は大豆を掴んでぴょいぴょいと空の皿に移し替えていくっ!?
ヴェール
「そのグローブをつけている間、精密な動作ができるようになる機能が備わった特殊なグローブだ」
光二
「っ!? す、すごいっ!! あの不器用な猿太郎がっ!?」
想夜
「納豆を食べる事さえ苦戦している猿太郎がっ!?」
猿太郎
「ほんでっ!? 他にはどんな装備があるんやっ!?」
ヴェール
「それだけだ」
猿太郎
「え?」
ヴェール
「それだけだ」
猿太郎
「な、なんで俺だけ装備あらへんのぉっ!?」
ヴェール
「猿太郎。お前は下手に装備を増やしたところでお前の場合は邪魔になるだろう」
猿太郎
「そうかもしれへんけどもぉっ!!」
ヴェール
「それにお前の場合は真っ直ぐ行ってぶん殴った方が強い」
猿太郎
「そ、そういうもんかぁ……」
青空の流星 ー緋々色金の想い達はここにー 水神乙女 @232325252ww
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