イートイン脱税と悩ましい男~第三夜~・1-3

(【この世は闇市ブラックマーケットワールド】は、エネルギーを通貨として、『行動』をplayerに販売する強制力であると思われます。


 例えば【両腕両脚の駆動】というリクエストであれば、『両腕と両脚を動かすための行動が認可される』といったルール設定です。


 行動の販売は『基準1:効果範囲』と、『基準2・効果の持続時間』、また『基準3:超常現象であるかどうか』でエネルギーの代価が決定しています。



『基準1:効果範囲』によるエネルギーコストについての代価推測は次の通りです。


 自分のみ=10

 5m未満=20

 5m以上10m未満=30

 10m以上25m未満=40

 25m以上50m未満=50

 50m以上または戦場全域=100?



『基準2・効果の持続時間』によるエネルギーコストについての代価推測は次の通りです。


 瞬間(0~5秒)=0

 短時間(6~10?)=10

 中時間(11~59?)=20

 長時間(1分以上?)=50

 永続=100



『基準3:超常現象であるかどうか』について。


 リクエストした行動が超常現象に由来する結果をもたらす場合には、『基準1:効果範囲』と『基準2・効果の持続時間』の合計値に、+30エネルギーが追加で徴収されます。



 また、保有エネルギーを超過するリクエストがコールされた場合、五感を代価とする徴収が行われるものと推測できます。

 五感は相当値ジャストの代価であった場合、該当の感覚が徴収されますが、そうでない場合は『触覚(両腕両脚両手胴体頭計8ヶ所)』『視覚(2ヶ所?)』『聴覚(2か所)』『嗅覚』『味覚』の優先度で徴収されるものと考えられます。

 各五感の相当エネルギー値は次の通りです。


 視覚(片側?)=130以上?

 聴覚(片側)=130

 触覚(両腕両脚両手胴体頭計8ヶ所……根拠は後述)=50?

 嗅覚=110

 味覚=40



 行動や感覚の購入は使用前であればキャンセルが可能であり、市場マーケットは常に、整合性の取れた取引を可能としています。

 また、リクエストの一部を実行中にキャンセルすることは(例:【歩いて相手を殴る】のリクエストにおいて、【歩いて】の部分のみを実行したのち、【殴る】という行為前に、リクエストのキャンセルを願うなど)、ゲームシステムが成立しなくなる関係上、不可能であるものと思われます。



 最後に、購入した行動や五感は市場マーケットへ売りに出せますが、その場合は30%の値引き額で買い叩かれてしまいます。買い戻す際は元値が必要です。

 また売却については、後からキャンセルができません。

 


・以上における根拠


①【味覚】の売値が【28】に対し、購入代価が【40】=売価は30%の値引き額で買い叩かれる。

②【右足の駆動を売却しての、エネルギー補充】の売値が【77エネルギー】だった=【右足の駆動】および【嗅覚】の相当額は【110】

③【左手の、一瞬の駆動】の代価が【10】

④【彼との物理的距離】の代価が【70】


 時間と効果範囲が代価式であると仮定した場合、【右足の駆動】=10(自分のみ)+100(永続)=110

【左手の、一瞬の駆動】=10(自分のみ)+0(瞬間)=10

【彼との物理的距離】=40(25mほど)+30(超常現象)=70

 また【前方に距離・最小消費から最大消費まで段階的に、各エネルギー消費における最小距離値を、無料代価の最大時間、マーキングで可視化する】=100(50m以上)+0(瞬間)+30(超常現象)=130=【左耳の聴覚】

この世は闇市ブラックマーケットワールドAIの思考演算で、現状からこの世は闇市ブラックマーケットワールドのルールを思考】=10(自分のみ)+0(5秒未満)+30(超常現象)=40

 上記のように、理屈が成立していることが確認できます。



・効果範囲における代価の根拠


 自分のみが【10】、25m未満が【40】、50m以上が【100】としたとき、AIが考案する場合、


 自分のみ=10

 5m未満=20

 5m以上10m未満=30

 10m以上25m未満=40

 25m以上50m未満=50

 50m以上または戦場全域=100


 以上の設定が最も自然です。



・効果の持続時間における代価の根拠


 距離の区切りが『0』『5』『10』『25』『50』で区切られていたことから、【この世は闇市ブラックマーケットワールド】の『X《エックス》』能力が整然、あるいはマーケットであることを念頭にAIが作り出したものとして考察したとき、現実の貨幣価値を参考に数値が設定されたものと推測できます。

 瞬間が【0】、永続が【100】であると考え、1セントを0、5セントを10と定義し、この基準で増加幅を算出すると、


 瞬間(0~5秒)=0

 短時間(6~10?)=10

 中時間(11~60)=20

 長時間(61秒以上?)=50

 永続=100


 以上の数値となります。

 また秒数は瞬間が1~5秒であることから、AIが算出する場合、上記が最も自然な形であると考えられます。



・五感の徴収優先度についての根拠。


 対戦playerは努めて慎重な歩みで、攻撃を実行してきました。

 そのことから、徴収されたのは【触覚】であると予想できます。


【触覚】が消失しても、【聴覚】が機能している限りは、人によっては慎重に歩くということは実行可能です。

 五感の重要度から優先度を選別していると仮定した場合、判断したのがAIであることを考えると、


①【視覚】を最重要と考えた場合、『視覚』『触覚』『聴覚』『嗅覚』『味覚』を優先度と考案

②【触覚】を最重要と考えた場合、『触覚』『視覚』『聴覚』『嗅覚』『味覚』を優先度と考案


 これら二パターンのうち、どちらかである可能性が高いです。

 ゆえに徴収の優先度は『触覚』『視覚』『聴覚』『嗅覚』『味覚』の順であると考えられます。



・相手へ行動を強制するリクエストについて


 相手へリクエストした行動を強制するコールは、無効ノーレスポンド判定であると考えられます。

 整然や整合性の顕現であると考えたとき、効果範囲については、


 自分のみ=10

 5m未満=20

 5m以上10m未満=30

 10m以上25m未満=40

 25m以上50m未満=50

 50m以上または戦場全域=100


 これが最も整然としたビジュアルであるからです。超常現象のような形で代価が請求される可能性もありますが、相手への行動強制が可能な場合、勝負を成り立たせるために必要な制約の数が無数となってしまうため、相手への行動強制については、対戦playerのブラフであると考えられます。



・【この世は闇市ブラックマーケットワールド】を目の前でコールした理由


 ゲーム性の成立のため、【この世は闇市ブラックマーケットワールド】は『対戦相手の目の前で【この世は闇市ブラックマーケットワールド】をコールしなければならない』という制約が課せられているものと推察できます。



・対戦playerの現在状態について


 対戦playerは現在、【両腕両脚の駆動】=10(自分のみ)+100(永続)×4(部位)=440のエネルギーを支払うために、現在、【触覚】の全てが無いものと考えられます。

【効果範囲】×【持続時間】×【部位】を代価とする根拠として、【両腕両脚の駆動】がエネルギー【110】で済む場合は【全身の駆動】をリクエストすることが自然であること、また【110】の代価で済む場合、必ずそれを最初にリクエストするのがセオリーとなりゲーム性が破綻してしまうため、AIが構築したものと考えるならば【身体自由は各部位の数だけ代価が発生する】と考えるのが自然です。

【触覚】のエネルギー相当価値は【味覚(40エネルギー)】以上、【嗅覚(110エネルギー)】以下における、五感それぞれの相当価値とする公倍数にかぶらない数値、また【徴収優先度の最も高い感覚】の相当価値として扱いやすい【50】を予測としました。

 ゆっくりとでも歩けていたところを見るに、平衡感覚を司る【聴覚】さえ生きていれば、最低限の行動は可能なようです。


 疲労状態が観測できないため、【触覚】を買い戻したという線は薄いです。


 対戦playerの、現在の保有エネルギーは、60エネルギー+いくつかの感覚の売却額です。おそらく相当価値の低い感覚を売却したところから、【保有エネルギーが感覚支払いの差額分にも満たない場合、不足分を感覚で支払うが、超過した分のお釣りは返らない】というルールが考えられます。




 考察は以上です――)




 無駄に長い、編集に即ボツ宣言を喰らいそうな文字数の羅列を、2秒あるかという一瞬で、思考していた――。


 AI。


【彼との物理的距離】という曖昧なリクエストに、瞬間移動ワープという答えを出したのは誰か。


 注目すべきは『瞬間移動ワープした距離』。逃げるに近すぎず、無意味に遠すぎず。


 誰かが思考を働かせたうえで判断したとしか思えない。


 闇市の商人は、ゲームマスター的なAI思考プログラムでもあった。


「……なるほど。それこそ、人間意識の妙というわけですか」


 そう。


 対戦playerの口から答えを聞くことは、アウト。自意識がそれを、性根では不正と判じるから。


 けれど――AIに回答を教えてもらったら?


 多くの場合、人はそれを心の奥底では、回答ではなく――“助言”と認識するだろう。


 AI進歩の合理構造進化時代である。そのことは、もう分かり切ったことだ。というか少し前からそうだった。

 答えをシステムに託した、あるいは回線の海で1、2クリックの手間で得た情報を元に、それを僅か自己解釈した結果を、人は自分で明かした答えであると本気で認識するだろう。


 AIに指示を飛ばして出力された絵をもって、創作意欲を満たせる。

 AIが紡ぎ出した物語はAIの意思ではなく、指示を飛ばした“作者”の意思である。


 悪いことであるという話ではなく――どうやら、そういうものなのだ。


 この世界を形作ったマスターAIに、自身を仮想AIとした、つまりそのまま自身であるところの考え方を問うた『そのままの答え』も、たった数%の自力探求と自己解釈さえあれば、俺はそれを、【自身で得た答え】だと認識するだろう。


 人間の、引け目や自尊心の在り方。

 そのあたりの自意識も、たいがい整合性が取れていない。


「――だが、それで、次はどうします? それで明かせないルールがもしあるなら、それを、どのように解明するのです……?」


 それには答えず、リクエストをコールした。


「【前方49mに『エネルギー保有量ゼロ波』を放出】」


「…………!」



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リアルフィクション・X!!!! 羽羽樹 壱理 @itiri-yuiami

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