日常の崩壊

テマキズシ

私の日常


「ようやく…給料日だ。」


バイトを終えた私は、夜中の暗い道を歩いていた。明日は給料日。日ごろの苦労が報われる日だ。


「今日も…行くか。」


私は給料日前に、毎回必ず戦友の所へ向かう。


戦友はボロボロの体にムチを打ち、仕事に励んでいる。常に野ざらしの状態で、24時間働き詰め。俺よりよほど苦労をしている。


「あいつはまだ…元気にしてるだろうか?」


あいつの下に行くのは丁度一ヶ月ぶり。もしかしたらもう仕事場がなくなっているかもしれない。


そんな事を思いながら駅へと向かう。駅は夜らしく電気による光に満ちている。


昔は綺麗だと思ったものだが、今は社畜達の怨念のように見えて余り好きではない。


少し憂鬱な気持ちになりながら先へと進む。周りにはスーツを着た人達が増えてきた。後3年で俺もこうなるのか。


今をきちんと楽しもう。改めてそう感じる。給料入ったらいろんなゲームや本を買って、モデルとなった場所に旅行するんだ。


美味しいものも食べたいなあ…。横浜中華街にでも行こうかな。それともまた静岡にいってハンバーグを食べようか。


楽しい事を考えると、憂鬱になった俺の心が温かくなる。


そうだな。今から戦友に会いに行くんだ。こんな憂鬱な思考で会いに行っては、戦友も嫌な気分になるだろう。


駅裏の余り人の居ない道を進んでいく。


「前よりボロボロになってないか?この通路。」


もうまともに人が来ていないのだろう。今月も戦友の店の売り上げは少なそうだな。


俺は戦友とあった一年前を思い出す。


確かあの時は、バイトでずっと失敗し続けた俺が疲れで思わず道に迷ってしまった時に、慰めのために温かい飲み物を買ったら、夜中だと言うのにバカでかい声で「ありがとうございました!」と言われて驚いたっけ。


ボロボロだと言うのに頑張るその姿に俺は思わず感動してしまった。その時から、給料日の前の日になると互いの労いのために飲み物を一つ買うようにしている。


「おっ!あったあった。良かった。まだあったか。」


余り人が訪れないと分かる程ボロボロの広場。そこに戦友はいつも通り立っていた。


街灯が少ししか無いこの広場に、戦友は常に光り輝いている。おかげですぐにその姿が見える。


「う〜ん。今日はココアの気分だな。」


財布から小銭を取り出した俺は、戦友の体に小銭を入れる。


少しすると、軽快な音と共にガタンと大きな音が聞こえた。戦友の身体から商品を取り出す。缶のココアってそれしかない旨味がある気がするよね。


そんな感じで変な事を考えていると、戦友はいつも通り「ありがとうございました!」と大きな声を出す。


戦友はこんな夜遅くでも力強く挨拶をしている。これは俺も何か返さないとな。


「ふっ。良いってことよ。」


戦友を軽く叩き。華麗に後ろを振り向く。この瞬間。俺と戦友。人間と自販機の間には、種族間の壁すら越えた奇妙な友情があった。
























カッコつけて後ろを振り返ると、後ろには円形ハゲのおじさんがこっちをじっと見ていた。


その日を境に、私は戦友のもとに訪れなくなった。



























実話です



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