#2


◇あらすじ

 A国の支配をうけるB国には、憂国の士が集い結成したレジスタンス組織があった。彼らは武力を持って抵抗運動を行い、その勢力を日増しに拡大させていた。

ある日、とある戦場にて、A国に潜入していた「山田」を救出した「神山」だったが、「山田」は銃撃によりすでに瀕死であった。「山田」の命を賭した願いを「神山」は受け入れる。しかし、そんな「神山」に疑惑の目を向ける「山本」がいた。



◇登場人物

神山:B国のレジスタンス

山田:レジスタンス(故人)

山本:レジスタンス

西原:レジスタンス(女性)

山城:レジスタンスの科学者

男1:レジスタンス(声のみ 兼役可)



◇「桐山、レジスタンス辞めるってよ」#2


(ME 暗転中に流れる不穏な雰囲気の音楽 点灯とともにFO)

(SE 鞭打ちや打撃音)


<SEに合わせて、神山のうめきと山本の声>


(照明 徐々に点灯)


・舞台はレジスタンス本部の拷問部屋。薄暗い部屋に月明かりが差し込んでいる。神山は椅子に縛られぐったりとしている。その前には嗜虐的な笑みを浮かべた山本、それと椅子に座り机の上の機材を調整する科学者田山。


山本 「いい加減にしたらどうだ。山田からA国の情報を聞いたんだろう?」


神山 「……ハア、ハア……だから、何も聞いてないって言ってるだろ」


<山本、顎で山城に合図する>

<山城、少し嫌そうな表情で機材をいじる>


(SE 電気が流れる音)


神山 「うあぁぁぁ!!」


山本 「ほら、どうした? そのままでは死んでしまうぞ」


<山本、嬉しそうに神山の肩を叩く>


神山・山本 『うあぁぁぁ』


<山本、山城に止めろと合図。山城、ボリュームを上げる>


神山・山本 『うあ、うあぁぁぁ!!』


<慌てて電気を止める山城>


山本 「死ぬかと思ったー。おばあちゃんがそこまで来てたー……アホかっ!!」


山城 「すみません。操作間違っちゃいました。すみません」


神山 「山本……勘弁してくれ。俺は何も知らないんだ」


山本 「神山ぁ……今、お前には上層部からスパイの疑いがかけられているんだ。我々の作戦がA国に漏れている……漏らしたのはお前だ。そして山田を殺したのもお前だ。そうだろう?」


神山 「何言ってるんだ? 俺がスパイなわけないだろ。誰が上層部にそんなことを?」


山本 「俺だ」


神山 「はあ? 何で?」


山本 「お前、山田が死ぬ前に何かコソコソしてただろう。俺をのけ者にしてさ。絶対、重要なこと話してただろ。俺をのけ者にしてさ」


神山 「いや、してねーよ。あれは……」


心の山田 「神山、信じてるぜ」


<神山にだけ見える心の山田と目が合う>


神山 「あ……れは……」


山本 「ほら怪しい。はい怪しい。これは何か隠してる。重要情報隠してる。山城ーっ!! 電気ぃ!!」


山城 「いや、家電量販店やないんだから」


山本 「電気ぃ!!」


山城 「はい、スイッチ、オン」


(SE 電気が流れる音)


神山 「うあぁぁぁ」


<心の山田、神山の周囲を励ましながら歩く>


心の山田 「大丈夫だよぉ神山くん。君なら耐えれる、頑張れ神山」


神山 「ひぃ、いやあぁぁぁ」


山本 「早く、楽になっちまいなぁ」


心の山田 「あれ? 神山くん? 神山くんっ!!」


神山 「エロ本!! エロ本!! エーローほーん!!」


心の山田 「神山ー!! 貴様ー!! 貴様ー!! <エコーを利かせ消えていく>」


<電気を止める山城>


山城 「なにこれ怖い」


山本 「壊れちまったか……神山。情報を聞き出せなかったのは残念だ」


神山 「ちっげーよ、壊れてねーよ。エロ本なんだよ。山田に頼まれたのはベッドの下のエロ本の処分なんだよ。いってーな馬鹿野郎」


山城 「なにそれ怖い」


山本 「ははは……ふざけるな。お前もなかなか強情なスパイだぜ」


<通信機を取り出しにいく山本>


山城 「神山さん、大丈夫ですか? あ、そういえば桐山さん、レジスタンス辞めるそうですね」


神山 「そうみたいだね。だがその話、いま必要か?」


山城 「あ、それもそうですね」


<戻ってくる山本>


山本 「あー、あー、こちら山本。男1、応答願う」


男1 (声のみ)≪こちら男1、山本さんどうぞ≫


山本 「山田の部屋の捜索はどうだった?」


男1 ≪はぁ、ベッドの下にエロ本があったくらいですね。しかもどえらい量の≫


山本 「どえらい量だと?」


男1 ≪はい、ベッドが少し浮いてました。変態ですよこいつ≫


山本 「それで、中を調べたのか?」


男1 ≪へ? ははは、山本さんも好きですねぇ≫


山本 「ち、違うわ。ええい、もういい。そちらに向かう」


男1 ≪了解っす……好きっすねー(ブツッ)≫


山本 「くっ」 <神山を睨みながら立ち去る>


<山城と神山、二人になる>


山城 「……なんか、大変なことになってますね」


神山 「あ?」


山城 「いや、山本さんも山田さんの機密が必要なら、僕が開発した“ゾンビーム”を使えば簡単なのに」


神山 「え? なにそれ」


山城 「ゾンビームですか? 僕が作った兵器です。ゾンビームに打たれた人はゾンビになります」


神山 「え、普通に言ってるけど、なにそれ怖い」


山城 「で、それを山田さんに使ってゾンビにして、機密を聞けばいいんですよ」


神山 「え? ゾンビって話せるの?」


山城 「あー……無理、かな」


神山 「なんで、そんなもの作ったの」


山城 「いやぁ、自分、自主制作でゾンビ映画を作ろうと思いまして」


神山 「イカれてんなお前。映画で本物のゾンビ作るなよ。怖いわ」


山城 「えへへ」


<グワーッとかウッなどのやられ声が響いた後、西原登場>


西原 「神山くん、助けに来たわよ」


<西原、神山の拘束を解く>


神山 「西原さん、どうして」


西原 「言ってなかったわね。私たち、A国のスパイなの」


神山 「えー? ……って私たち?」


山城 「あ、はいスパイです」


神山 「えー!!」


(MEが流れ暗転する)


#2 (了)

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桐山、レジスタンス辞めるってよ 粒安堂菜津 @TsubuAndonatsu

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