胸キュン戦隊イケメンジャー2025 ~時間の経過をのり越えろ!~

無月弟(無月蒼)

第1話

 皆さんはご存じだろうか。

 悪と戦う、5人のヒーローの存在を。


 ここはある学校の校舎裏。

 一人の女子を、悪者達が囲うようにして立っていた。


「おーほっほっほ! わたくしは悪役令嬢ですわよー! ヒロインをいじめますわよー!」

「えーん、やめてー!」


 悪役令嬢の魔の手が、ヒロインにのびる。

 しかしそんな中、 色とりどりのヒーロー達が現れた!



 ドンッ!


「お前、コイツに手を出してんじゃねーよ」


 壁ドンをする彼の名は、俺様レッド!



 クイッ。

「やれやれ、あんまり手間を掛けさせるな」

 顎クイをしながら冷たげな眼をするのは、クールブルー!


 ぽんっ。

「そういう所も可愛いけど、ちょっとやり過ぎかな」


 頭ポンをしながら爽やかな笑顔を浮かべるは、王子様イエロー!


「覚悟してよね、おねーさん♡」


 身を屈めた状態で上目遣い。幼く愛くるしくい、ショタグリーン!


「さあ、悪い子にはお仕置きをしないとね」

 凛々しい顔をしながら悪役令嬢をひょいとお姫様抱っこしたのは、女性メンバーの宝塚ホワイト!


「「「「「天下御免の胸キュン戦隊、イケメンジャー!」」」」」


 5人はいずれも、目を見開くほどのイケメン揃い。

 彼らは悪役令嬢からヒロインを守るために戦う、乙女ゲームの攻略対象キャラをモチーフにしたふざけた戦隊ヒーロー。

『胸キュン戦隊イケメンジャー』なのである。


 ひとたび変身すれば黄色い声が上がり、胸キュン技を食らおうものならキュン死にしてしまう、みんなのあこがれの存在。

 このイケメンジャー。2019年の第一回KACで登場したと思ったら、なぜか毎年KACのたびに新作が作られている。

 2025年の今年でなんと7作目。

 初登場時から、6年の歳月が流れていることになるのだが……。



 ◇◆◇◆



「覚悟してよね、おねーさん♡」


 身を屈めた状態で上目遣いをしているのは、ショタグリーン。

 かわいい顔や仕草でメロメロにするのが、彼の得意戦術なんだけど……。


「はうっ! なんて凛々しいお兄様なの……ガクッ!」


 ショタグリーンの上目遣いを食らった悪役令嬢はキュン死にし、今日も世界の平和は守られた。

 守られたんだけど……。


「マズイ……マズイですよこれは!」


 一部始終を見ていた私は、声を上げる。


 あ、自己紹介がまだだったね。

 私の名前は、披露院桃子。 イケメンジャーのサポートをしている、このお話のヒロインだよ。

 って、今は私のことはどうだっていいの! 今大事なのは……。


「イケメンジャーの皆さん、集合してくださーい!」

「なんだなんだ?」

「どうしたどうした?」


 集まってくるイケメンジャー達。イケメンが勢揃いしてる様子は眼福です。

 けどそのイケメンジャーに今、大きな問題が起きているの。

 私はその問題の張本人、ショタグリーンに目を向ける。


「ショタグリーンくん。君はいったいいつの間に、そんなに大きくなったの!?」

「え、ボク?」


 首をかしげるショタグリーンくんの身長は、170cmを越えている。

 更に声も低くなっている。


 最初に会ったときは小柄で可愛い声をしていて、まさにショタって感じだったんだけど、今の彼は……。


「無理もねーか。イケメンジャーシリーズが始まってから、もう6年も経つからなあ」

「当初の年齢が中1だったと考えても、もう成人してておかしくない。もう少ししたら、酒だって飲める年齢だ」

「いつまでもショタキャラじゃいられないってわけか」


 俺様レッドにクールブルー、王子様イエローがそろってため息をつく。


「えー、ボクそんなにダメかなあ?」

「だ、ダメってわけじゃないけど……ショタグリーンって名前なのに、ショタキャラじゃないのはどうなのかなーって」

「そんなこと言われても、6年も経てばそりゃあ変わるよ」


 そ、そうなんだけど……。

 すると、宝塚ホワイトお姉様が言う。


「確かに色んなことが変わってるね。シリーズ開始当初は俺様系男子が人気あったけど、今は強引なヒーローはコンプラ的にどうかって言われているし」

「おい、俺がダメだって言いたいのか!? 確かに全盛期に比べたら落ち着いたけど、今でもちょっと強引なヒーローにあこがれてるやつはいるぞ! ハ○ーレモンソーダの三浦○をなめるな!」

「落ち着いて、そうとは言ってないよ。問題なのは、時代は変化しているってこと。なら私達イケメンジャーも、それに合わせてアップデートするのもアリなのかもって思ってね」


 うーん、それはあるかも。

 ショタグリーンがショタじゃなくなっちゃったし。

 あこがれのヒーローだって、どう変化していくかもわからない。


「もしかしたらショタグリーンをお兄さんグリーンに変えたり、俺様系レッドを紳士レッドに変えたりした方がいいのかなあ?」

「ずいぶんなキャラ変だな。途中でそんな路線変更したら、見てる人が混乱しないか? 過去の戦隊シリーズでも、例がないぞ」

「仕方ないでしょ。普通戦隊ものは1年で終了するから、流行りが変わったからキャラ変なんてことになる前に終わるんだ。けど私達は、6年も続けてるからねえ」

「じゃあ、このまま続けていったらどうなるんだよ?」


 みんなで想像してみる。

 例えば本家戦隊シリーズは、今年で50周年を迎える。

 もしも私達が、50周年を迎えたら……。


「か、還暦むかえちゃう」

「落ち着け。俺達イケメンジャーは、KACのたびに新作が出る戦隊。その頃にはさすがに、KACは続いてねーんじゃねーか? カクヨムが存亡しているかも怪しいだろ」

「そんな縁起でもないこと、言わないでください! ……けど作者が早死にしてる可能性はあるかも?」

「そっちも縁起でもねーな。つーかその頃は、本家戦隊シリーズはまだ続いてるのか?」


 先のことを考えると、だんだん不安になってくる。

 こ、このままじゃいけない。

 キラキラしてるのがイケメンジャーなのに、ネガティブな雰囲気になっちゃダメだよ!


「と、とにかく今は、ショタグリーンと俺様レッドのキャラ変を考えないと!」

「待て待て待て! 俺は俺様を変える気はねーからな! 俺様キャラのまま、ナンバーワンになる!」


 どうやら意地でも、キャラ変するつもりはないみたい。

 なら仕方ない。けど、ショタグリーンはどうしよう?


「あのさ、ちょっといいかな?」

「グリーンくん、なにかキャラ変案あるの?」

「いや、キャラ変じゃないんだけど……考えてみて。確かにボクは背が伸びたし声変わりもしたし、髭も生えてきたけど……」

「やめて! ショタグリーンなのに、髭が生えたなんて言わないで!」

「うん、そうだね。けど、よく考えてみて。ボク達イケメンジャーは、本家戦隊ヒーローと違って、小説の作品だよ。しかもカクヨムのシステム上、挿絵は投稿できないよね」

「え? うん、そうだけど」

「だったら、ボクはいつまで経ってもショタキャラのままってことで話進めたらよくない? どうせ読んでる側には、わからないんだしさ」

「えっ? それはそうだけど……」


 いや、待って待って待って! それって反則じゃないの!?


「無理だよ! 例えば地の文で、容姿を説明するときはどうするの!? 『背が低く可愛い姿』なんて言ったら、ウソになっちゃうよ!」

「大丈夫。このお話は桃子お姉ちゃんの一人称小説だから、桃子お姉ちゃんの感覚で背が低いって判断してたら、ウソにはならないよ」

「それっていいの!? いや、ダメだよね。だって現に今、ショタグリーンくんは私より背高く見えてるもん!」

「それなら……ホワイト姉さん、たしか催眠術使えたよね」

「よし、任せて」


 ホワイトお姉様の目が、キラリと光る。

 いや、催眠術使えるなんて設定、初耳なんですけど。

 そんな呆気にとられる私をよそに、ホワイトお姉様は糸のついた五円玉を、目の前でゆらしはじめた。


「桃子ちゃんはだんだん眠くなる。桃子ちゃんはだんだん眠くなる……私が添い寝してあげるから、安心してお休み」

「お、お姉様……」


 なんかもうツッコミどころ満載の催眠術をかけられて、私の意識は薄れていった……。


 ◇◆◇◆


 はっ!

 あ、あれ? いつの間にか寝ちゃってたみたい。

 たしかみんなで、イケメンジャーの今後について話していたような……。


「おはよう、桃子お姉ちゃん」


 横に目をやると、ショタグリーンが覗き込むように私を見てる。


「おはよう、ショタグリーン。ごめん、私寝ちゃってた」

「気にしないで。ねえお姉ちゃん、ボクの顔、どう思う?」

「どうって、いつも通り。すっごくかわいいよ」


 どうしてそんなこと聞くんだろう?

 他のみんなも、「うまくいった」って言って頷いてるけど。


「いったいどうしたの?」

「なんでもないよ。それより、イケメンジャーがこれからどうしていくか、決まったよ」

「ほんと? やっぱり、レッドが俺様キャラをやめるの?」

「んなわけねーだろ! 途中でキャラ変なんて、ダセーことできるか。俺達は、今のままでいいんだ。このままでいくぞ!」


 え、結局なにも変えないんだ。

 けどたしかに、余計なことをしてキャラがブレるより、その方がいいのかもね。


「俺達はイケメンジャー。皆のあこがれのヒーローであり続けるんだ! キャラ変なんてせずに何年も何十年も続けて、本家にも負けない、ナンバーワン戦隊になってやろうじゃないか!」

「大きく出たな。まあ、賛成だ」

「レッドは一度言ったら聞かないからね。いおよ、こうなったらとことん付き合うから」


 クールブルーと王子様イエローが頷いて、隣の青年……じゃないや、ショタグリーンも「ボクも賛成」ってかわいく笑う。

 一瞬ショタグリーンが別人に見えた気がするけど、きっと気のせいだよね。


「どうしたんだい、目なんかこすって。まだ眠いなら、私のキスで目を覚まさせてあげてもいいよ」

「い、いえ! ホワイトお姉様にキスなんてされたら、目が覚めるどころか昇天しちゃいますよ!」


 そんなわけで、イケメンジャーは今日も明日も。

 おそらく来年のKACも、続いていくのです!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

胸キュン戦隊イケメンジャー2025 ~時間の経過をのり越えろ!~ 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ