第五話 神様の薬屋の看板娘

 山頂までは岩戸様のおかげであっという間に到着した。

 けれど肝心の茎が金色に光るヤマトトウキが見つからない。

 事前に薬園に行ってヤマトトウキの形は見てきたけど、それらしきものが見当たらない。


「嬢ちゃん、そっちはどうだ?」

「全然ダメです……見当たりません……」


 必死に探すけど、見つからない。

 やばい、ここに私がいられるのも下山を含めて考えると残り五分少々しかない。


 あれ、あそこなんか光るものがある……。

 私は木の根元のほうへと歩みを進めた。



 近づくと確かにそれはヤマトトウキだった。しかも茎が金色に光っている。


「あ! あった!!」


 しかし、木の根元の奥のほうにあり、私の手の長さと細さでは取れない。

 うーんと手を伸ばしてみるもやっぱり届かない。


「あと少しなのに……残り三分しかない……」


 すると、どこからともなく声が聞こえた。


「あれ、芽衣さんではありませんか?」


 声の主を探すも見当たらない。

 あれ……この経験どこかで……。

 と思いながら、下をむくとそこにはネズミの小太郎様がいた。


「小太郎様!!」

「やはり、芽衣さんでしたか。このような浄化山で何をされているのですか?」


 私は早口で事情を説明する。


「なるほど、ヤマトトウキが取れないと。お任せくださいませ、私がとってきますので」


 そういうと小太郎様は木の根の間をいとも簡単に潜り抜け、ヤマトトウキの場所まで到達した。

 少々小さな身体ゆえに手こずっているが、見事ヤマトトウキを抜き、口に加えると来た木の根の間を戻ってきた。


「芽衣さん、こちらで大丈夫ですか?」

「ありがとうございます、小太郎様!! 助かりました!!」


 私は地面すれすれのほぼ土下座スタイルでお礼をいうと、小太郎様に別れを告げて下山した。

 帰り道は確かに息が苦しくなり、時間がぎりぎりだったことがわかった。



「も、もどりました……」

「芽衣さん!!」


 翡翠さんと雫様、いまりが出迎えてくれた。


「岩戸様、ありがとうございました」

「いや、嬢ちゃんのためならいつでも力を貸すよ、いつでも呼んでくれ」


 そういって、岩戸様は去って行かれた。


「翡翠さん、これで間違いないでしょうか」


 私は茎が金色に光るヤマトトウキを渡した。

 制服に泥がついていて、たぶん帰ったらお母さんに叱られるだろうなとちょっと思った。


「はい、間違いありません。こちらがそのヤマトトウキです。薬を調合してまいりますので、少々お待ちください」


 そういって奥の土間へと向かう翡翠さん。

 すると、私の頬に何か布が充てられた。


「こんなに泥だらけになって……ありがとう。感謝しますよ」


 ハンカチで頬を拭いてくれる雫様。

 お姉さんは自分にはいないけれど、いたらこんな感じなのかなってちょっと思ったりした。



 やがて、翡翠さんが薬を持って戻ってきた。


「雫様、こちらが心を癒す薬です」


 雫様は丁寧に両手で受け取ると、会釈をしてお礼をいう。

 

「ありがとうございます。これで友人もよくなるといいのですが……」

「またもし何かお困りごとがあればいつでもいらしてください」

「ええ、そうさせてもらうわ。芽衣さん、本当にありがとう」

「いいえ、友人の方、よくなるといいですね」

「ええ、ありがとう。その気持ちも含めて友人に渡すわ」


 こうして、雫様は帰っていかれた。

 すると、翡翠さんが口を開く。


「芽衣さん、よく頑張りましたね」


 目線を合わせるように少し屈むと、にこりと微笑んだ。


「ありがとうございます!」




 このアルバイトは大変なことも多い。

 神様は多種多様だし、不思議な薬も出てくる。

 でも楽しい。たくさんの人と巡り合えて、役に立って、ありがとうって言われて……。

 嬉しい。私はこの仕事を手伝えることを誇りに思う。



 如月芽衣、十六歳。

 今日も元気に薬屋の看板娘やっております。



「いらっしゃいませ!!」

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薬屋の翡翠~町で有名な薬屋の裏稼業は神様の薬屋でそこの看板娘をすることになりました~ 八重 @yae_sakurairo

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