第14話 悪夢からの決心
うつら、うつら・・ゆらゆら・・・
身体が揺れているのを感じる。
ああ・・・魔車に乗っているのだった。
魔車の振動が、私を眠りに誘う。
ねむい・・・・起きたいって思っても出来ない。
もうちょっとだけ・・・・。
静まりかえった空間。
ここどこだろう・・・・。
さっきまで父様たちと魔車に乗っていたはずなのに。
私は真っ白な空間にひとりぼっちでぽつんとたたずんでいる。
右をみても、左をみても・・・・誰もいない。
どうしたらいいのかわからなくて・・・心細くて不安になる。
そんな私の足元に黒い煙が絡まるように蠢いている。
そしてどこからともなく声がする。
―――――魔力なしなどいらない。
―――――お前さえ生まれてこなければ。
私は苦しくて、悲しくて、ポタポタと涙を流す。
そんな私に、
――――お前のことなど誰も愛さない。
――――お前のことなど誰も気にかけもしないだろう。
今度は、黒い煙から吐き出すように放たれた言葉。
その言葉は呪詛のように私を身体の奥から締め付ける。
悲しい!!苦しい!!
私を大切にしてくれる人はいる!!
私を愛してくれる人はいる!!
心の中で一生懸命叫ぶ。
それと同時にこの呪詛のような言葉を知っていると確信している私がいる。
確信しているのに・・・そんなはずがないと否定する私。
だから私は必死で叫ぶ!!
叫んでいないと悲しさと苦しさの渦という闇に囚われてしまいそうだから。
そんな私を追い込むように真っ黒の靄が頭上から迫り、私をすっぽりと覆ってしまう。
私はこの靄を吸い込まないように息を止め出来る限り手足を必死に動かし、この靄から這い出ようと試みる。
苦っっしーーーいっっ!!
私だって、
『ここにいていい!』
『一緒にいよう!』
『生まれてきてくれてよかった』
どれかひとつ・・・一度でもいいから・・・・・・言われてみたい!
魔力がなくても『好き』っていってくれる人と一緒にいたい!
魔力のない私を・・・私自身をみて知って欲しい!
私がいてもいい場所・・・・が欲しい!!
ここは嫌!
ここにいる私をみて!
魔力がない私を「好き」だといって!
お願いだから・・・・。
怖くて苦しい!
そして何よりも寂しい・・・・・。
ここから逃れたい一心で、涙で目の前がよく見えていなかったが、
私は必死に両手を伸ばす!!
もう、こんなところにいたくなんてない!!
助けて!!
お願い!!お願い!!
心の底から懇願する。
でも、この願いが叶うことがなかった・・・どこか諦めの気持ちが私の心を蝕む。
苦しくて苦しくて・・・・・。
もがきながら必死で手を伸ばす。
ガッコン、ガッコン・・ガチャッ
魔車の振動で、意識が浮上した。
さっきまでと全然違う。
なんだかすっごく温かい。それに、なんだかとっても安心する。
いつの間にか寝てしまっていた。まあ、魔車の中が温かかったから寝ちゃったのはしかたないか〜。そう思って目をあけたら、服の上からでもわかるほど盛り上がっている筋肉が目の前に!!びっくりした!!びっくりしすぎた衝撃で、目の前の筋肉を力一杯おし退けようとして、両腕を突っ張った・・・瞬間、つっぱるはずだった場所の胸筋が動いた。
「きゃああっっ〜〜〜〜」
その結果、私はバランスを崩して魔車の床に投げ出された・・・はずだったのだが、
「リリーナ、目が覚めたのか?」
「どうした、怖い夢でもみたか?」
心配そうな言葉をどこか呑気な口調で問いながら、私を抱き抱え直し口角を少しあげて微笑む父様。
いつもの大好きな父様の微笑みで、いやされつつ父様の首にしがみつく私。そんな私を父様は、いつものように抱きしめて背中をポンポンしてくれる。
小さな頃から父様や母様がポンポンしてくれると、どんな時でも安心できる。大丈夫だって思える。
「さあ、リリーナ。私たちの家に帰ってきたよ。夕食まで、少し時間がある。母様にもリリーナのお菓子のお披露目をするのだろう」
「はい!!」
父様の言葉にしっかり返事をして、前に座るマナに視線を向ける。
「お嬢様、頑張って、奥様の笑顔をいただきましょう」
はりきった様子のマナの笑顔。
私は考える。
さっきのどうしようもないほどの苦しさと恐怖・・・は、夢だったのだろうかと・・・・。
それにしては、やけにリアルだった・・・・。
リアルだった夢?に思いを馳せる私の頭をポンポンと父様が優しく撫でる。
顔を上げれば父様の優しい瞳が私を見つめている。
そんな父様の優しい瞳が心配そうに私を見ている。
私を大切にしてくれる父様、母様、侍女のマナやマオ・・・私の大好きな人たち。
大好きな人たちを心配させたり不安にさせたり悲しませるなんて・・・絶対にしたくない!出来るなら笑顔でいてほしい!!
だから、私は、このリアルな夢を忘れることにした。
もう、リアルな悪夢をみることがありませんように・・・心の中で祈る。
そして、父様の手に支えられながら魔車を降りる。
我が家(辺境伯邸)の前には、大好きな母様。
私は、走って母様の胸に飛び込んだ!
「母様、大好き!」
母様のあたたかさは、私の不安と恐怖を取り去ってくれる。
大好きな人が笑顔にしたい!
そのために私は頑張っていこう!
そのために、私は努力をしよう!
母様に抱きしめられながら、私は心に誓いを立てた。
孤独な私が狼獣人の「運命の番」 界扉(かいと) @sekai_tobira
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