ブタクサ具だくさんスープ

3.14

ブタクサ具だくさんスープ

そう突然俺の前に出された謎のスープ。

見るからに俺のだけ異色を放っている。周りを見渡すとみな普通のスープが配られているじゃないか。


遡ること二日前。

チャイムが鳴る四時間目。始まった給食時間。

よだれを垂らしおいしそうと喚くガキども。俺はこいつらと同じじゃない。

そう俺は叫んだ。いや叫んでしまったのだ。先生もびっくり。

俺はまた席についた。そしてその日の給食は完食した。


「〇〇君、〇〇君…」

はっ、目の前にはまだブタクサ具だくさんスープがある。

昨日はこんな異変なかった。二日前のは結局ただ先生に少し叱られただけだった。なのに二日目にして今日、突然意味の分からない料理を出された。


「〇〇君、二日前この時間のときなんか叫んでたでしょ?だから先生がコレ…創ってきたの」


御椀の中には緑色のどろどろとした液体にそこら辺にありそうな雑草が刺さっている。


「うぇ…不味そう…」



「ほら…食べなさい」



先生がスプーンでそれをすくい目の前に、口の前に向けてきた。


「あーーーーんー………???」


「アガッ…ゔ…ぁ…あ…」


無理やり口の中へ押し込まれる。

謎の粘液状のジェルのようなものが喉に張り付きながら通っていく。


「ほら、おいしいでしょ、? 二日前〇〇君がクラスメイトに向かって俺はこいつらと同じじゃない、て言ったでしょ…??」



「あ…はぁ…はぁ…」

体の中が熱い。頭もチカチカしてくる、でも…それよりも変だ。体の芯や節、指先までも…。



「だから先生、〇〇君を他のみんなとは違うようにしてあげたの」


苦しむ俺をよそに先生はペラペラと話しやがる。



「うっあっ…!!」



「成功したわね!」


「…」





この日から俺の身長は伸びなんだか知力も上がった。

俺はもともと小学生3年生だった。

だが今では小学生6年生と同じ中身、見た目をしている。

そう、もうみんなと俺とは違うんだ。

俺はその日から落ち着くようになった。小学6年生だからね。

勿論6年生の教室に行くわけない、そこに行くとみんなと同じになってしまう。だから今も3年生としてここですごしている。みんなには頼られるようになり、幸せだ。




あのときは本当にありがとうございました…。


先生…。



「そう、この手紙を渡そうと…久しぶりに来たのに…!!」

先生に会うのは数十年ぶり。俺はもう大人になっていた。

けれど俺の目の前にはベッドに横たわる先生が。チューブが体中を這い回り医者じゃない俺にだって分かる。もう余命がないということを。

目をつぶってどこか夢を見てるような先生。


「あぁ…、先生、俺はあのとき小6なのに小3として過ごし、最初は違和感もありました。だけど途中からそれは自信に変わったんです。いつだって頼られる、だからこそさらに勉強をしたんです。効果は抜群だった。簡単に言ったら周りより3年進んでることになる。中1では中3の範囲を勉強していたし、高校では高3の勉強をしていた。

俺も…頑張ったんです…。

…になりたくて…、なりたくて…、

先生みたいな立派な教師になりたくて…!!」


彼の右手には花束と、そして教員免許が握られていた。


「俺も先生みたいに…なれますかね…。そ、それと…!あのときに作ってもらったブタクサ具だくさんスープ、自分も海外に行ったりいろんな旅をしてきました…!そして創ることができました…!!ブタクサヤム族の村長や、カラシニコフターミナルのおっちゃん、色々な人に助けてもらいやっと完成させることが出来ました…!これがブタクサ具だくさんスープです…!」


そのとき、さっきまで眠っていた先生の手が少し震えた。


「せ、先生…!!俺ですよ俺…!!」


するとまた先生の指が震えこちらを指さした。


「も、もしかしてスープ飲みたいんですか…?!」


俺は持ってきてあったスープを急いで取り出した。

そしてスプーンですくい上げ先生の口の前へ向けた。


「行きますよ…」


どろどろと喉の奥へと流れていった。



先生「…」



「だ、駄目なのか…」


先生「〇〇君…君の考えは少し違うね…」


「先生?!!」



先生「ブタクサ具だくさんスープは3年成長を伸ばすだけじゃない…」


「えっ…!!」


先生「3年…そう3年寿命を伸ばすんだよ…」









そこからまた先生とたくさんの色々なことを話した。泣いたり笑ったり、なんども繰り返し…。

まるであの頃の教室に戻ったような気がした。


「〇〇君…本当に…ありがとう…」




その1週間後…先生は旅立ってしまった。

具だくさんブタクサスープに3年寿命を伸ばすなんて、そんな効果はなかった。俺のために、安心させるために俺に嘘をついたのだ。



でももう大丈夫。俺にはまた新しい夢が出来たんだ。


数年後…俺はまた働いていた。

先生としてたくさんの人を相手に。

いやいや同じ先生と呼ばれるけどもう教師じゃないんだ。


先生がきっかけをくれたんだ。


俺は今日もまた、人の命を救うためにメスを握っている。


「完」

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