イカロス古代宇宙飛行士説

@2321umoyukaku_2319

第1話

 伝説に登場する最初の発明家は古代ギリシアのダイダロスだと言い切って良いだろう。彼は航海に必要な船の帆柱と帆を考案したとされる。帆柱と帆は地中海沿岸を船で交易するギリシア人にとって必要不可欠な発明品であり、民族的な英雄の一人として名前を挙げても構わないだろう。

 だが、この天才的な人物はトラブルメーカーでもあった。最初のマッドサイエンティストなのだ。クレタ島の王妃パシパエが抱く邪な欲望を満たすため、ごく自然に牡牛と交尾できるよう牝牛になりきれる模型の箱を作ったのが一例である。それで生まれた息子ミノタウロスの扱いに困ったのが、パシパエの夫ミノス王だ。王はダイダロスに不義の息子を閉じ込める迷宮を造るよう命令した。これで出来たのがクレタ島の迷宮ラビリンスである。

 ダイダロスは他にも、空を飛ぶ羽を作製した。それを使い、息子のイカロスと初飛行に出る。

 父のダイダロスは無事に初飛行を終えたが、息子のイカロスは墜落死した。太陽に近づき過ぎて、翼を固めていた蜜蝋が溶けてしまったのが事故の原因とされている。

 しかし、この説には反論を唱えたい。上空の大気温度は地表より低い。宇宙空間に出て太陽に接近したならいざ知らず、成層圏内で蜜蝋が溶けることはありえるのだろうか?

 もしもイカロスが宇宙に到達し、太陽にまで近づいたのなら、彼は人類史上初の宇宙飛行士となる。マッドサイエンティストの息子に相応しい肩書だ。

 イカロスにも発明の才能があったという伝承が残っている。父のダイダロスは左右一対で合計2枚の羽しか作らなかったが、イカロスは五対で合計10枚の羽を用意した。飛翔能力は親父の羽より高い。それを使い、彼は太陽への接近を試みて、そして死んだのだった。

 この親子の生涯を見ていると、科学の進歩と犠牲が隣り合わせであることを痛感する。

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