からくて、つらくて、あまずっぱい。

これは、幻想的で、でもどこか、目の前にあって触れられそう。等身大の少女と人魚の少年との、ひと夏の恋の物語。

本作は『淡い』という形容詞の具現化です。
全てにおいて透き通っている。
夜の海辺の不思議な魅力が、かたちをもって手を引いてくれているような気分になりました。

海音の葛藤や燈の優しさが織り成すエモ。
最後の花火が鳴るシーンは、脳内での映像化があまりにも容易で驚きました。展開作りと文章表現の“匠”です。間違いなく。

きっと次に海に赴いた日には、私は本作を思い返すことでしょう。
塩っぱいだけの小波は甘酸っぱさを覚えるものに変わっています。けれどもその辛さに、海音が深く抱いた感傷に似たものが、高波のように押し寄せてくるのでしょうね。

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